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蓮華化生(ブルーミング・フラワー)

 光が、モニタを白く染め上げる。

 数秒の後、要塞砲からのエネルギーの放出がおさまり、宇宙に再び暗闇が戻ってくる。

「……どうなった!? 敵艦隊は!?」 

「こ、これは……! 敵艦隊、健在……!」

「健在!? 健在だと!?」

 デイブが金切り声を上げる。

「……放出されたヴァジュラ・ボルトのエネルギーは、敵艦隊に到達することなく消失したようです」

「あれだけのエネルギーが消失……? 一体どんな手品を使えばそんなことが……」

 重力子縮退砲アカシック・スター。縮退させた重力子によりマイクロブラックホールを生成、射出する、超天連最強の兵器。最大出力で放てば恒星すら呑み尽くす超重力の塊が、ヴァジュラ・ボルトの全エネルギーを相殺、消滅させたのだ。

「敵艦隊、前進を再開! 間もなく、敵艦隊の射程に捉えられます!」

「くそっ……! これ以上、退いては……!」

 彼らのすぐ背後には、クシナガラ要塞があるのだ。ヴァジュラ・ボルトを使うために敵を引きつけすぎたのが仇となった。ここで要塞を破壊されれば、人類軍はシャーキャ銀河での橋頭保を失うこととなり、たとえ今生き延びたとしてもこの先戦っていくことは不可能になる。

「要塞砲の次弾は!?」

「無理です! 一度発射すれば、砲身の冷却、メンテナンス、エネルギーの再充填に、最低でも一週間はかかります!」

「……万策尽きたか……。こうなっては、覚悟を決めるしかあるまい。全艦隊、砲撃戦用意! 総員、人類の意地を見せてやれ!!」

 もはや策はない。正面からの撃ち合いでは勝ち目がないのはこれまでの戦いで証明されている。だが、退くことはできない。その場所もない。人類軍の将校、士官、兵、みなが死を覚悟しながら、せめて一矢報いてやろうと、恐れを押しこめ自らを奮い立たせた。


「やつらのシールドがどれだけ頑強でも、集中砲火を浴びせれば……! 直近の敵艦に攻撃を集中! 力ずくでぶち抜いてやれ!」

 無数の次元位相波動砲が火を噴いた。宇宙を切り裂く無数の光は、まるで黄金の雨だ。


「……効果、ありません!」

 だが、雨あられと砲撃を浴びせても、やはり敵艦の重力シールドを貫くことはできない。

「くそっ……! くそが……!」

「敵艦隊、なおも接近!」

「やはり、無謀だったのか……」

 諦め、絶望。負の感情がアナンタのブリッジを満たす。


「何をするのかとしばらく見ておったが……お主らも天魔とやらも、なんとも嘆かわしいこと」

 事態の推移を見守っていた少女が、久々に口を開いた。

「しかししょうがあるまい。迷える衆生を導くのが、私の役目。まずは、くだらぬ争いをやめさせねばな」


「砲撃、来ます!」

 紫紺の光。重力子砲の光が、瞬いた。


 彼女が、どこからかひとひらの花弁を取り出した。薄桃色の、小さな蓮の花弁。それを手の平に乗せると、ふっと息を吹きかけ、宙へと舞わせた。

 ふわりと舞った花弁は、ひらひらと宙を泳ぐ。そのまま分厚い戦艦の装甲をするりとすり抜け、宇宙空間へと躍り出た。

 ひらひら、ふわふわ、花弁は宇宙を泳ぐ。くるりと回ると、いくつもの花弁がその軌跡を追うように現れ、一輪の蓮の花へと変わった。

 人類軍の艦隊を守るように宇宙に咲いた花に、紫紺の光が殺到する。空間ごと対象を貫く必殺の重力子砲が、可憐な花を無残に引き裂くかと思われた瞬間、そのことごとくが霞のように消え失せた。

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