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天魔連盟(オーバーロード)

「敵艦隊、続々と空間跳躍していきます。……三次元レーダーに異常。直前に散布されたのは、どうやらワープ探査妨害用のチャフのようです。――いかがいたしましょう。この程度なら、因果律演算機を使えばすぐに転移先を割り出せますが」

 頭足類のような姿のオペレーターが、無数の触椀で計器を操作しながら報告する。時空撹乱チャフは、文字通り周囲の時空間を撹乱することにより、空間に残る転移航法の跡をかき消し、追跡を困難にするものである。しかし、周囲のあらゆる情報を元に計算を行う因果律演算機にかかれば、その程度の撹乱などあってないようなものだった。

「かまわん。どうせ逃げこむ先など一か所しかない。それよりも、当方の損害はどうか?」

 ブリッジの中央、一際高い位置に据えられた席に座り、報告を受ける者。その姿は、一言でいえばちんこだった。人間の身の丈を超えるほどの、黒光りする立派なイチモツが鎮座していた。

「先の戦闘による、当方の艦艇の損害は皆無です」

「まあ、そうだろうな。あんな前時代的な空間兵器では……」

 超銀河天魔連盟軍の艦艇に採用されている、空間の歪みごと捻り潰す重力子兵器の前では、人類自慢の空間兵器もおもちゃ同然だった。


「さて、まずは要塞の占領だ。陸戦隊を送りこみ、内部の安全を確保せよ。もっとも、何かしかけるような余裕はなかったとは思うがな」

「ただちに」

「安全の確認が済み次第順次入港。各艦、補給とメンテナンスを行い、万全の状態を整えよ」

「すぐにやつらを追わずともよろしいのですか?」

「言っただろう。やつらの行く先などわかっている。慌ただしく追い立てずとも、全て揃ったところで叩き潰してやればよい。……あのような下等生物にも、最後の時間くらい許してやってもよかろう」

「なるほど……。差し出口をきいてしまって申し訳ありません」

「いい。……私はしばらく休む。後は任せた」

「はっ。お疲れ様です、上帝陛下」

 上帝マーラ・パーピーヤス。六つの宇宙を統べることから、第六天魔王とも呼ばれる、政治、軍事の両面において超天連を束ねる存在。

(地球人類。愚かで、弱く、醜い種。そう、なってしまった種よ。あの時、私は確かに光を見たはずだった。あれは、光を求める私の心が見せた、ただの幻想だったのか……?)

 彼は超天連の理念の下、数多の星々、数多の種を蹂躙し、隷属させてきた。見こみのない劣等種、宇宙に有害と判断された種は、一片の慈悲もなくこの世から消し去った。

 かつて、地球と呼ばれた星で、彼は光を見た。それは、超天連の目指す真なる宇宙の片鱗だった。そのはずだったのだ。

 しかし、いつしか光は消えた。人類は信仰という光を捨て、代わりに文明という火を手にした。母なる地球を食い荒らし、焼き尽くし、それでもまだ飽き足らず、宇宙へと広がりながら災厄を撒き散らした。

 そしてついには、宇宙の指導者を標榜する超天連の逆鱗に触れた。地球人類という有害種をこの宇宙から消し去ることが決定され、それはただちに実行に移された。技術力でも数でも大きく劣る人類に勝ち目はなく、彼らはあっという間に追い詰められた。

(どれだけ我らが苦慮しようと、真なる宇宙の光は見えず、ただいたずらに時が過ぎ去るのみ)

 天魔は死すら克服した。優れた生体改造技術により、過酷な宇宙空間でも生存できる強靭な体を得た。仮に死しても、常に記憶や精神のバックアップが保存され、それを新たな肉体へと移植することにより、疑似的な不死を実現した。

 しかし、それは魂の牢獄だった。不死の実現は、終わりのない戦いと終わりのない旅路の始まりだったのだ。

 善き宇宙を造る、それが超天連の理念。しかし、万年経とうと億年経とうと、そんなものはどこにもなかった。ただただ、優秀な種を吸収し、そうでない種を淘汰する、その繰り返し。超天連の文明と技術は果てしなく進化を続け、その勢力はどこまでも強大になり続け、にも関わらず、宇宙は依然、暗黒のままであった。

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