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人類同盟(ヒューマンカインド)

 宇宙の闇を切り裂く黄金に輝く光の筋と、闇に溶けるような紫紺色の光の筋が、幾筋も幾筋も飛び交う。金と紫の光の雨、光の乱舞。

 暗黒の空に、いくつもの炎の花が咲いた。

「右翼第一○八艦隊、戦艦ガンディン・ショーニン、及び巡洋艦ウンケー、カイケー、轟沈! 戦線維持できません!」

 レーダー上の光点が、ひとつふたつみっつ、次々と消えていく。

「まったく、どうなっている! こちらの砲はまったく通じず、逆に向こうの砲はこちらのシールドをあっさりと貫通するとは!」

 言ってもどうにもならない、とわかっていても、地球人類同盟宇宙軍総司令官デイブ・ダッタは叫ばずにはいられなかった。艦隊を構成するのはいずれも、人類の誇る最新鋭の技術が盛り込まれた艦艇ばかり。空間をねじ曲げ、引き裂き、いかなる装甲も貫く次元位相波動砲。同じ技術を利用した、空間を歪めてあらゆる攻撃を弾き返す次元位相波動シールド。これが通用しない相手など、いるはずがなかった。

 だが、それらはまったくもって無力だった、彼ら相手では。

「手すきの遊撃隊を右翼に回せ! なんとしても防衛ラインを死守しろ!」

「無理です! いずれのフィールドも既に交戦中で、とても余所に回せるような戦力はありません!」

「その無理を通さねばならん時だろうが!」

 オペレーターに唾を飛ばす。しかし、ない袖を振れるわけもない。

「全艦隊の内、轟沈、及び小破中破大破による戦闘不能な艦を合わせると、既に戦力の二割近くを喪失。もはや、勝ち目は万に一つもないと思われます」

「思われます、などと言っている場合か!」

 こんな時でも冷静さを失わない副官に、デイブは顔を紅潮させながら抗弁する。

「撤退のご決断を、閣下」

「撤退だと……!」

「まだ、クシナガラ防衛ラインがあります」

「……だが、そこまで退いては……」

「ええ、そこまで退いては、今度こそ我々には後がありません。しかし、今ここで我々が全滅の憂き目に遭えば、とてもクシナガラの防衛艦隊だけでは勝算はない。となれば、少しでも多く主力艦隊を生き延びさせ、最終防衛ラインであるクシナガラで決戦を挑む。これしか道はないと愚考します」

「…………くそっ! 全軍に撤退命令!! 遺憾ながら、ヴィシャリ要塞を放棄! クシナガラまで後退する! 時空撹乱チャフ散布後、各艦隊はそれぞれ別方面へ跳躍。敵艦隊の追尾を振り切った後、クシナガラにて合流せよ!」

 命令を受け、オペレーター達が慌ただしく各艦へ伝達する。

「賢明なご判断です」

「ふん」

 あからさまなおべっかに、デイブは鼻を鳴らして答える。彼の視線の先、ブリッジに据え付けられた大きなモニタには、戦場の様子が映し出されている。

「まったく、あんな……あんなふざけた猥褻物共相手に手も足も出んとはな!」

 そう憤るのも無理はない。そこに映った敵艦の姿……それは、ありていに言えば大人のおもちゃのような卑猥な造形のものだった。宇宙に浮かぶ、色とりどりの卑猥な物体群。冗談にしても、余りにも低俗かつ馬鹿げている光景だが、しかし冗談ではない。これこそが、地球人類同盟の敵の姿だ。

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