プロローグ Ⅱ
超お久しぶりです。
待ってくれた方がいるかは分かりませんが、お待たせしました。
流石に年単位はヤバすぎるので、ゆっくりですが更新していけたらと思います。
「全部捨てて、こっちに来ないか?」
最初は何を言われているのか、少し理解できなかった。
でも、謡にぃが私とまた一緒に暮らそうとしてくれてるっていうことはすぐにわかった。
「謡にぃと一緒にいれるなら、どこにでも行くよ」
すぐにそう言った。謡にぃの隣にいる金髪の人はニコッと微笑んでくれた。
「そっか、良かった、夏がまだ俺を覚えていてくれて」
「忘れるわけないよ!だって謡にぃは・・・」
また、涙がこぼれそうになる。
「うん・・・もう大丈夫だからな、夏」
その言葉は、今までの二年間を無かったことにしてくれるような、そんな温かさを感じる言葉だった。
「でも、突然いなくなったらまた誘拐事件みたいな扱いになるんじゃないかしら?」
突然金髪の人がそう言うと、謡にぃもうーんといった感じで下を向く。
「自殺したふうに見せかければいいんじゃないかな、物騒だけど」
「でも、どうするの?」
「例えば、流れの早い川のへりに靴と遺書を置いて姿を消すとか、駅のホームから飛び降りてそのタイミングで俺と紫さんの力を使って身投げを演出するとか・・・かな」
相変わらず謡にぃは頭の回転が早くて、本当に凄いなぁと思う。普通ならそんな事を思いつくはずもない。
「身投げを演出するのは少し難しいかもしれないけれど、川のヘりっていうのは名案ね、死体が見つからない分には様々な理由も考えられる死に方だし、なにより話に聞いた夏目ちゃんの事情ならそれは決して不自然ではないわ」
「うん、俺もどっちかって言えばそっち派だな。後は夏が良ければだけど」
そう言って謡にぃと紫さん?はこっちを見る。
私はすぐさま
「私はそうしたい。すぐに遺書を書いてくるから、謡にぃ達は家の中に入って待ってて!」
そうして私は、全く不自然の無いように遺書を書き上げた。
「こんな感じでどうかな・・・?」
「うん、これなら大丈夫だろう。自殺に至るまでの経緯も書いてあるし、まず疑われないよ」
「そうね、私も間違いないと思うわ」
すぐに私達は、なるべく近くにある流れの早い川へと向かった。
そして、靴と遺書を川のへりに置いて、謡にぃに向き直った。
「これで、大丈夫だよね?」
「うん、大丈夫だろう・・・紫さん、そろそろ行きましょう」
「わかったわ。夏目ちゃん、こっちに戻ってくることはもうほぼないと思うけど、それでもいいのよね?」
紫さんはそう言うと、こちらの真意を確かめるように、ゆっくりと私の目を見つめてくる。
「はい・・・私は謡にぃと一緒に居たいです。だから・・・」
全部言う前に紫さんは
「覚悟は出来てるみたいね。いいわ、夏目ちゃん、貴女を幻想郷に連れて行ってあげるわ」
「幻想・・・郷・・・」
すると、紫さんが何かしたかと思った次の瞬間、突如目の前の何も無いところが裂けたかと思うと、無数のギョロリとした目がある空間が現れた。
「ひっ・・・!」
「さあ、行くわよ、ついてきて」
「夏、行こう」
謡にぃが手を取ってくれなければ、私はやっぱりいいですと言っていたかもしれない。
でも、やっぱり謡にぃは、私の手を引いて、優しくしてくれた。
その空間の中は、見た目こそ恐怖を感じるようなものだけれど、中に入ってしまえばどうということは無かった。
地面が無いから常にふよふよした状態だったけど、それもほんの少しの間だけだった。
今度はその空間が裂けたかと思うと、目の前にはそこそこ立派な神社の本殿があった。
「さて、ついたわよ。まあ、ここが幻想郷の中心とか、そういう場所ではないのだけれどね」
「幻想郷に住むからには、ここにいる人間に挨拶をしておくべきなのよ」
紫さんはそのように語ると、少し待っててといい一人で本殿の方へ歩いていってしまった。
「ねぇ謡にぃ」
「どうした?」
「もしかしてここには、遊佐と結羽もいるの?」
遊佐と結羽というのは、昔の友人である十文字遊佐と明天夜結羽の事だ。
「やっぱり夏は鋭いな。何も無ければ遊佐も結羽もここに住んでるはずだ」
そうなんだ、そう言おうとしたその時に、少し高い、でも聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「ん?あれってもしかして・・・」
「謡真・・・と、もう1人いるわね」
「おーーい!!!謡真ーー!!!」
「ひうっ!?・・・ちょっと、いきなり耳元で叫ばないでよ、遊佐」
「お、噂をすればなんとやら。遊佐と結羽が来たぞ」
「本当に!?・・・少し緊張する」
「なにも緊張する必要は無いよ、二人とも多分変わってないから」
遠目に見える二人の人は少しずつ近づいてきて、どんどんはっきりと見えるようになってきていた。
そしてその二人は近づいてくるにつれ、何かに気づいたように足を早める。
「ももも、もしかして・・・夏目!?!?!?」
「え、嘘・・・どうして・・・?」
「え・・・あの・・・久しぶり・・・」
案の定二人も気づいた様子で、すぐに話しかけてくれた。久しぶりに話したけれども、謡にぃの言う通り、昔とほとんど変わっていなかった。
・・・結羽の胸がとても大きくなっていた事を除けば。
すると、今度は巫女装束を身にまとった、清楚なイメージの美人さんが紫さんと共に歩いてきた。
「二人とも、騒がしいわよ。って、謡真じゃない、久しぶりね」
「久しぶり、霊夢。突然悪いね」
「別にいいのよ、暇だし。・・・その隣の子は?」
「こいつは俺の妹の夏目。紫さんと外の世界を見に行った時にたまたま会って、突然だけどこっちに連れてきたんだ」
「そう、謡真の妹ね・・・可愛いじゃない」
「可愛いだけじゃないんだぜ。自慢の妹だよ」
初対面の人に可愛いと言われたことよりも、謡にぃに自慢の妹と言われたことがとにかく嬉しくて、一気に赤面してしまった。
「あら、こんなに照れて。やっぱり、可愛いじゃない?」
「夏は兄弟とはいえ俺とは正直タイプが違う。これから神社に遊びに来ることもあるだろうから、その時は夏の事をよろしく頼もうと思ってさ」
「なるほどね・・・、遊佐と結羽にとっては外の世界の友達みたいだし、わかったわ、安全は保証する」
「霊夢?最近異変もなくて暇だし、夏目ちゃんの歓迎パーティをしない?」
「紫・・・あんたねぇ、ただここで酒が飲みたいだけでしょ?桜はもう散ってきてるし。ていうか、花見の時に飲んだばっかりでしょ」
「あら、花見の時に飲んだからってすぐ飲んじゃダメって事があるのかしら?それに、咲いてる花を見るだけじゃなく、散る花を見ながらお酒を飲むのもまた一興だとは思わない?」
「はぁ・・・もうどうでもいいわよ」
「苦労してるな、霊夢」
「謡真も止めてくれてもいいのよ?」
「俺は正直どっちでもいいからな」
「裏切り者ね・・・」
「決まりね?それじゃ、文ちゃんに言って広めてもらうわね〜」
「は、文に言うの!?それはやめて!本当に!謡真絡みは人集まるから!!!・・・行きやがった・・・」
「あ、あの・・・無理にパーティとか開かなくても私はいいんですけど・・・」
「夏、もう決まったから気にしなくていいんだぞ」
「謡真・・・あんた、覚えときなさいよ・・・」
「え、俺なの?」
幻想郷に来てみて最初に思ったのは、元いた世界で暮らすよりも、絶対絶対何倍も楽しいだろうなって事です。
謡にぃも一緒だし、遊佐も結羽もいる。こっちの人も、まだ少ししか話してないけど、いい人そうだ。
新しい生活に、期待感を強く感じて、私は謡にぃの手を握った。
〜その頃、とある場所にて〜
「手がかりがあったそうだな」
「ええ。二年前の大量誘拐事件の有力な手がかりを見つけました。こちらの写真を見て貰っても?」
「ふむ・・・これは・・・」
「間違いなく、藤堂謡真です。そしてこの隣にいる女・・・川へりで藤堂謡真と藤堂夏目の二人を連れてどこかへ一瞬で消えました」
「消えた、だと?」
「ええ・・・それはもう、一瞬でです」
「・・・・・・なるほど、二年前の事件、もう解決は出来ないと思っていたんだがな・・・」
「どうします?大隊長に伝えますか?」
「当たり前だ。大至急大隊長に伝えろ」
「藤堂大隊長に、な」
まだプロローグでした。
しっかり構想を練ってきたハズなので(え?)、後はそれをちゃんとした文に出来ればと思います。
次回までプロローグとなります。次回もよろしくお願いします。