副作用
瞼の裏に柔らかな光を感じ、ゆっくりと目が覚めていく。
続けて感じるは両手、両足にずっしりと鉄の重み。
2日間の訓練のインターバル、休息の時であった。日は既にそこそこ高く結構寝込んでしまったようだ。
昨日のあれは……どうなったんだっけ?
疑問形から記憶を掘り返していくがーー
あの痛烈な頭痛……
あの強烈な頭痛の余韻が全くなく、そこからの記憶が綺麗に途切れていて、殆ど精神的にあとをひいていない。
結局、ジークは俺をどうするつもりだ? 面談が台無しになった経緯が経緯だけに、このいつもと変わらないこの対応に言い知れぬ不安が募る。
ひとまず、この件は置いといて取り急ぎ考えなければならない事はあの頭痛の発生原因だ。
ジークがやったのか? あの炎はフェイクで実は強烈な頭痛を引き起こす怪電波に近いものでも送信されてたとかか?
だとするならば頭痛の前のあの奇妙な時間感覚の説明がつかないし、やる意味がいまいち不明な点が浮上し、この説は却下。
反動か?
これならば、あの超人的な時間感覚の代償ととも取れる気がして、筋が通る。
理屈や理由をすっ飛ばして原因を探っていくとやっぱり最も原因になりうるものは……
やっぱり、方術か?
ひとまず細かい事は置いといて、手っ取り早く原因を考察していく。
何故、あのタイミングで方術による頭痛が発生したか。
問題の起点をここに絞り、その前後から探っていく。
ジークが炎を右手にまとい始めた時に、真っ先に考えたのは発射のタイミングであった。
そこからは目に見えてる命の危険性からかもの尋常ではない集中力は発揮していたと思う。
多分、ここから何か原因があると見る。もう少し掘り下げていこう。
この集中力という一見、客観視しずらく、またイメージも漠然とした要素だが、あの時の状況を冷静に振り返るとかなり異常だと思う。
あの感覚は……ロドリゴや、ジークの時と似ていて
ロドリゴの治療、ジークの焼き肉で方力を身体で感じたケースが複数回あった。
あの集中力が増したとき頭に何かが入り込んできたような奇妙な違和感が僅かばかりよぎったのを覚えている。
そして、その感覚はまさに治療と破壊という真逆の意味を持ってこの身に行使された際に感じた何かが入り込む感覚と同等の感覚であり……
ここまで考えようやく結論に至る。
方力による時間感覚の延長か? 結論を出すには方術の知識が必要だ。
麻生はここまで考えて、ジークの机の上まで這っていき、机に並べられた資料から方術関連の書籍を複数拝借し、ベッドまで持ち帰り、読みふけっていった。
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方力とは何か?
方術と呼ばれる技術が確立したのはいつなのか?
そして、何故あの頭痛は発生したのか?
そもそも何故こんな力が存在するのか?
様々な実体験を経て、尽きぬ疑問に急かされながら読み進めていくと気になる項目に行き着く。
【方術を行使する以前に全ての存在が心得えておくべき事】
・何人たりとも方力のコントロールする術を身に付けていること。これを怠ると最悪死亡、廃人の可能性あり。
方術を行使する者ならともかくしない者も必須なのか?
これらの最大の理由としては己の身を守るためである。
根拠、理屈がまだ明らかになっていないが方力を頭、目付近に集中させると、凄まじい激痛に襲われて、そのまま死亡、廃人になった例が散見されとても危険性が高い。
有用な部分も数多くあるが、それを有り余っている危険性も孕み、この正体不明の激痛を回避出来た者は記録上存在しないと言われていて、知らずに方力を頭脳に集中させ、運良く死亡せず廃人にもならない者がいたが、それ以来方力のコントロールに余念がないのは言わないでも分かるだろう。
集中させた部分の性能が飛躍的に上昇する方力の副作用は極めて有用だが、こういった致命的な盲点も存在するため、用心が必要である。
昨日のはこれか。
記述を読みながら確信する。




