密談
暴行表現注意。
苦手な人は前半の切れ目までと最後読めばOK。
R15はつけてるけどそれで大丈夫かな……?
「この件に関しては、我が主人であるツェーレ・アドル・フォルム・ディートリッヒより、全権を委任されております」
「……なるほど、では交渉を始めよう」
ピリピリとした空気が漂う。
「我々の兵は287。数は少ないですが、全て、騎士団所属の精強な部隊出身であります」
「そうか。そいで?」
「……我々からの要求は、一つです。小さな領地で構いませんので、ディートリッヒ王国を再建していただきたいのです」
「小さな?範囲はどれくらいを考えている?」
「それにつきましては、すでに案をまとめてございます。この場所です」
差し出された地図を覗き込むと、赤く印がつけられている。
「……この肥沃地帯をか」
「第ニ、第三までは決めてございます」
「いや、いい。ドヴェルボラウは、扱いが難しい土地だ。海、そして肥沃な土地がある、な。そして港もある。そこを選んで来たか」
「よろしいのでしょうか?」
ベーレンは重々しく頷いた。
「それでは、我が軍の方も間も無く合流させていただきます。失礼をば」
「……うん?」
「後数ヘルで、到着すると」
約十数分で到着すると聞かされて、先ほどまでの重々しい空気は霧散し、ベーレンは戸惑いに視線を何もない場所に彷徨わせる。
「……それでは、場所を早急に手配いたしましょう」
テレアンが苦笑し、ベーレンはカクンと机の上に突っ伏した。
「離せ!私を誰と心得る!?」
「シハーナ殿下ですね。ええ、よく知っていますよ、よぅくね」
簀巻きにされた中から、絶叫がくぐもって聞こえる。エルシャダはそれを足でグリグリと転がしながら、ニコニコしている。
「我々の兵は、少し長旅で色々と……不満もあるそうです。上に立つものは、下の者の不満も解消する手助けをしなければ、なりませんよね」
さらりと言い放ったその言葉の意味を掴みかねて、シハーナは形の良い眉をひそめた。
布団を縛るヒモに手をかけて、ゴロンと彼女を取り出すと、一瞬で手枷をはめて、それを地面に楔で埋め込んだ。
逃げようとする足は、エルシャダがぎっちりと抑えていた。
「エル、服をお願いしますね。私は人を呼んできますから」
「口、塞いどく?」
「……ふふ、いいえ。そのままでいいでしょう」
「わかりました!」
シハーナの寝間着に手をかけて、スルスルとエルシャダは脱がせていく。シミひとつないその白い肌をエルシャダは汚いものでも見たかのように顔をしかめた。
「うん、良いかなあ、これで。脚は……逃げられないし、これでいっか。どうせ足腰立たなくなるし」
笑顔でエルシャダはぱちっと手を打ち鳴らした。
「エル、おいで」
「はぁい」
男たちが、わらわらと入ってくる。全裸のシハーナを見て、にちゃあと粘着質な笑みを浮かべた。
「良いんですかい?」
「ベーレンさんからは、好きにして構わないと言われましたので、構いません」
「そうかよ」
下卑た欲望を叩きつけられるのだとわかって、シハーナは震えだす。
「く、来るな無礼者!!」
「トゥルシャナ様、まだあの人自分の立場わかってないですよ?」
「馬鹿なので仕方がないんでしょう。エル、ほらおいで」
見せないようにという配慮は伝わったのか不明だが、エルシャダはトゥルシャナの胸に飛び込んで、顔を押し付ける。服の中から、くぐもった笑い声が聞こえて来る。トゥルシャナもつられて、低く笑いを漏らした。
「ぎぃ、い、いやだっ、やめて!!」
トゥルシャナは困ったように眉を下げて、エルシャダの髪を梳いた。
女の叫び声。憑かれたように他の男が入ってきて、シハーナを戯れに甚振っていく。
エルシャダは抱きしめられたまま、眠っていた。
夜が明ける頃、やっとシハーナは解放された。トゥルシャナがその頭に水をぶっかけて無理やり起こすと、狂乱に陥ったのか、叫び声を上げた。
「おはようございます。気分はいかがでしょう?」
「ぁ、ゔ」
声がひび割れ掠れて、美声のかけらもない。トゥルシャナはニッコリとエルシャダを抱き上げたまま微笑んだ。
「あれ……って、トゥルシャナ様!?お、下ろしてください!!」
「ダメですよ。エル、ほら見て」
「……わぁ」
何か貴重な宝石でも見たかのような声に、目の前で聞いていたシハーナのわずかな理性が、警鐘を鳴らす。
水桶を差し出されて、自分の顔を覗かされる。そして悲鳴を上げた。金髪はぐしゃぐしゃに千切れて乱れ、泥まみれになっていた。爪は割れ、腕や脚には無数の擦過傷があり、顔は殴られた痕でボコボコに腫れていた。歯は抜け、鼻は折れているそんな状態で、彼女はその桶の中の人を食い入るように見つめていた。
「……ぁぐ」
「まだまだ、逃げられませんよ。不満が溜まってる兵士は、あれだけではありませんから」
「……はっ……」
「今日の晩も、存分に可愛がっていただけますよ。文字通り、死ぬほどにね」
トゥルシャナの薄ら寒い笑顔に、シハーナの体は凍りつく。
まだ続くのか。
もういやだ。
死にたい。
けれど、それを実行できるほどの体力すら残っておらずに、シハーナはただ震えるばかりだった。
「……トゥルシャナ様、治療は一時的でもした方がいいよ?その方が、余計に惨めになるから」
「ああ、そうですね。ごめんなさい、エル。汚いものを見せてしまって」
エルシャダは左右に首を振った。
シハーナの叫び声を反芻するたびに、瓦礫に埋まった苦悶の表情が、想像の中で和らいでいく気がする。
でも、まだ足りない。
ペロリと唇を舐め回し、エルシャダは湿った唇でトゥルシャナに囁いた。
「シャナ様、まだ足りないです。もっと、もっと殺さなきゃ」
「そうですね。……ふふ」
ベーレンたちの交渉の後
シハーナを兵士の欲求の捌け口にしました。
いい加減ちょっと大丈夫かなこれは。
直ではないから警告はないと願いたい。




