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奏でよ怨者  作者: あじふらい
1 旅は道連れ
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遺跡群

地面に音で把握した構造を書く。いくら音で把握したとはいえ、その図はあまり遠くまでは描かれない。


「ここからこちらに行ったがいいと思いますが……」

「こちらの道のりはどうだ?これもある程度は捨てがたいぞ」

「もう石を壁に投げて、跳ね返ってきた方に行けばいいよ」

「エルシャダさんちょっと黙りましょう、俺たち邪魔です明らかに!」


もがもがと口を塞がれて、エルシャダがジギシャに抗議の目を向けるが、ジギシャは気にしない。

阿呆のくせに作戦に口を出す部下を止めるのはジギシャの役目だったからだ。


「……よし。ならば、こちらから行って、まずはその先のルートの確保をしよう。一応ムズィーの汁と紙はここにある」

「わかりました。では、そこから行って、ダメならばこちらのルートで行ってみましょう」


曲がりくねる先に行くと、トゥルシャナはなぜか眉をひそめる。それを怪訝に思ったヌァザはトゥルシャナに「どうしたのだ」と聞いた。

「いえ、少し、ほんの少しですが……その、上へと向いているような気がします。そして、道が嫌に綺麗な構造をしているんです」

「綺麗な?」

「ええ。でも、何かを見落としているような、そんな気が……」


トゥルシャナははっと顔を上げて、石の壁に手を当てた。ひとしきり叩いたりして、頷く。

「……なるほど、そういうことですか」

「一人で納得していないで、こちらにも説明をくれ。どうしたというんだ?」

ヌァザが尋ねると、トゥルシャナは地図を広げてその指で髪を弄るようにしてわずかなインクの盛り上がりから指で文字をたどっていくと、説明を始めた。


「ええ、まずこのルートについて。まず、我々は今現在、落ちてきた場所から北東に向かって進んできました。そして、今はこの辺り。おそらく、サルバハアル遺跡群がある場所の地下です。そして、この近くにその遺跡に続く地下回廊が恐らくはあるか、もしくはここが地下回廊か。一度調べてみなければわかりませんが、未だ発掘されていないものがあるのもまた事実」


トゥルシャナは唇を舐める。

「未発見のものであれば、報告して報奨金をもらうことができます。そうすれば、旅費を無理やり捻出するのも難しくはないかもしれません」

「それでは、ニーへに行って報告するのが良いだろう。ニーへがこういう遺跡の報告に対しては誠実で、金払いもいい」

「ええ、その通りですね。しかし、都市に入るのにやはり……必要なのはお金です。服も気候に合ったものに変えた方がいいでしょうし」


遺跡の中のものを勝手に売り払うということは、禁じられていることが多い。

サルバハアル遺跡群もその一つであり、周辺を掘り返すものがいるが、新しい建物は滅多に見つからない。


「国境を越えるための証書は持っているのか?」

「ええ、私はありますし、私のものがあれば、エルも発行することは可能でしょう。ヌァザさんたちは、兵士の身分証ですか?」

「ああ。それを使って、入国許可証明書を取れるだろう。なにぶんニーへじゃ、武器の持ち込み自体が禁じられているからな」

「そうですね。そこでいくつか調べておきましょう、あの破裂する謎の物体のことを」

「ああ」


そして、上に上がっていくと果たして、石の人工的な四角い何かがあった。

「……やはり、ですね」

「トゥルシャナ様、喉乾きました」

「遺跡の近くですから、村があります。そこでお水をもらいましょう?もう残り少ないので」

「はぁい!」


トゥルシャナはその石を素手で押しのける。と、そこから砂がざらざらぁ、と落ちてきた。

じめっとした空気がカビ臭い匂いと埃とともに吹き出してくる。

「……どうやら未発見の場所ですね。完全に埋まっています」

「これで、旅費云々は解決するな」


三人のために明かりを魔奏で灯すと、そこには壁一面にぎっしりと描かれた壁画と、文字の細かな群れ。トゥルシャナにははっきりと見ることができたのは、文字のみであった。

「これは、大きな発見ですね。ただ一つ問題は、どうやって出るかですが……砂が入ってきているのは、どうやらあの場所みたいですね」


トゥルシャナが一方を指差す。そして歩いていこうとした途端、ヌァザの足元に何かが当たった。

「な、」

白骨が、みっしりと並べられている。それに気づいて、ヌァザは目を見開いた。

「これは……」

「白葬、ですね。肉を全て取り去り、それをバラバラにして、あちこちに撒き散らす埋葬方法です。二度と死者が蘇ることのないようにという、埋葬方法です」


解説をしながら、骨のない場所を見つけてひょいひょいと歩いていくトゥルシャナと、おっかなびっくりな面々。

「なるべく踏まないようにしても、限度はいくらかありますね、っと。開けますよ」


切り出された四角い岩に手をかけて、トゥルシャナはエルシャダをジギシャに預けると力一杯押しのける。

「手を貸そう」

ヌァザも顔を赤くしながら、それを力一杯押す。ずずず、という岩がずれる音。

そして、ようやっとその場所から砂が落ちてきて——光が射した。

こんなにひっそりただいましたのに見てくれてる人がいて感激してます。

エルフとかドワーフとかスタンダードなファンタジー種族は出ませんので、それだけは気に留めておいてくれると嬉しいですね。

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