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もののけの嫁として売り飛ばされました!  作者: 元々猫舌
もののけの嫁になりました!
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第五十八話

 平和な日が戻って、焼けた田畑の復旧作業が始まった。私は領地の見回りの時に、おにぎりを差し入れる日々が続いている。


「みなさ~ん!休憩どうぞ~!」


作業している人達に声を掛けると、続々と集まってきた。


「美子様、いつもすまないね♪」

「本当は鍬を持ってもいいんだけどね!」

「そんな!美子様にそんな事させられません!」

「ふふ!だったらこのくらいはさせてね♪」

「ありがとうございます……頂きます!」


みんながおにぎりに手を伸ばして食べ始めた。その中には鬼神族の人達も混じっている。田畑に流れる小川が火の影響で乾上がってしまい、剛くんのお父さんが雨を降らせに来てくれたのがきっかけだ。

町の人達も、干ばつ被害に悩まされる事が無いと言って、歓迎ムードだ。


そして、大王の居城から贅沢な暮らしをしていた証拠が次から次へと出てきたらしく、困窮した生活は大王が原因だと鬼神族の人達が気づき、数人が復旧の手伝いに志願してくれたらしい。


「何だかこの光景が嘘みたいだよ……」


みんなでおにぎりを頬張る光景を見ていた颯が、ボソッと呟いた。


「ふふ!つい最近まで喧嘩していたとは思えないね♪」

「これがずっと続けば、二度と戦争は起こらないかな……」

「だね……」


二度と颯の手で、人の命を奪う出来事が無ければいいな……


そんな事を考えながら、城下町に入る橋を歩いていた時だった。


どんぶらこ……どんぶらこ……


……はぁ?!あ、あれは見間違いで無ければ、デカい桃?!何で川上から流れてきてんの?!


「美子ちゃん!見てみて!大きな桃が流れてるよ♪」

「だね……」


颯にも見えるって事は、幻じゃぁ無さそうだ……って、鬼退治は終わったよね?


「拾ってお城へ持って帰ろうよ!みんなで食べよう♪」

「い、いや……川で洗濯をしてるおばあさんに拾われた方が、彼の為かと……」

「……ん?美子ちゃん、何の事?」

「い、いや……独り言……」

「あっ!流れていっちゃうよ!僕、拾ってくるね♪」

「ちょ、ちょっと!颯!」


引き止める前に、颯はサッ!と川岸に下りてしまった。


はぁ……手付けもされていないのに、一児の母決定かぁ……


デカい桃を担いで上機嫌で歩く颯の横で、こっそり溜め息をついた。




 桃はお城の中庭へ置かれ、私と鈴ちゃん、右京さんに左京さんが見守る中、颯が包丁を握りしめている。


「んじゃ、みんな!いくよ~♪」

「颯!少しずつ、慎重に切ってね!」

「りょ~かいっ♪」


桃が真っ二つに割れた。

パッカ~ン!


「おぎゃ~!おぎゃ~!」


やっぱ……予想を裏切らないな……


「えっ?えっ?何で桃から赤ちゃんが?!」


みんなうろたえている。


そりゃ、びっくりするよね……


「鈴ちゃん……悪いけど、女中頭さんに言って、赤ちゃん用のミルクを貰って来てくれる?」

「わ、わかりました!」


鈴ちゃんは赤ちゃんに驚きながらも、台所へ走っていった。


「颯様、この桃は川で拾ったと言っておられましたね?」


左京さんが颯に尋ねている。


「うん……まさか赤ちゃんが入ってるなんて……」

「もしかしたら、この子は川赤子ではないですか?」


川赤子……って、何?


「もしくは川の上流に住む、水の精である川男の子供か……」

「かもね……どっちみち水妖族に間違い無さそう。左京、すぐに潤へ知らせてくれる?」

「かしこまりました。」


左京さんは返事をして、すぐに立ち去った。


ってか、桃太郎って、もののけだったの?!

だよね……普通の子供と犬とキジと猿だけで鬼の大王を倒せる筈が無いもんね……そう考えたら昔話って、突っ込みどころ満載だな……


とりあえず赤ちゃんを抱っこしてあやしてみると、颯が感心したように私を見ている。


「美子ちゃん、冷静だね!」

「まぁね……」


だって、予想どおりだし……


それからおしめにする手拭いを沢山持ってきてくれた鈴ちゃん、女中頭さん達と一緒に、部屋へ戻った。




 「僕、おしめを変えてみたい♪」


颯が積極的に赤ちゃんと関わろうとしている。


へぇ~、颯ってイクメンになりそう♪私達に子供が出来たら……


って、何考えてんのっ!手付けもまだだってば!!


「美子様、どうかされましたか?」


はっ!

気がつけば鈴ちゃんが不思議そうに私の顔を覗き込んでいる。


「い、いや……何でも無いって!あはは……」


颯をチラッと見ると、女中頭さんに指導して貰いながら、一生懸命におむつを交換している。


「颯様、お上手になりましたね!魁様がお生まれになった頃は、上手に出来ずに拗ねておられましたのに。」

「そ、そんな昔の事は忘れてよ!」

「ふふ!失礼しました。つい思い出してしまいまして。」


でも、交換が終わってもまだ赤ちゃんは泣き止まない。


「う~ん……どうしたらいいのかなぁ……」


赤ちゃんを抱っこしながら首をひねっていると、女中頭さんが教えてくれた。


「赤子が泣く時は、おしめを変えて欲しい時、お腹が空いた時、眠たい時です。」

「そういえば赤ちゃん用のミルクは?」

「申し訳ありませんが、城内に乳母となる者がおりませんでした。」

「そっか……んじゃ、後で人間界へ買い物に行こうかな。色々と必要だろうし。」


その時、赤ちゃんがちょっとずつ大人しくなってきた。


「あっ!もう少しで寝るかも♪」

「美子様、完全に寝付くまでそのままで…」

「わかった……」


小声で女中頭さんに返事をして、そのまま軽く揺らしていると、すぅっと泣き止んで眠り始めた。


「寝たみたい……」

「美子様、お見事です。そのまま布団へ……」


小声で会話しながら、そっと布団の上に赤ちゃんを置く。


「おぎゃぁ~~!!」


突然赤ちゃんが目を覚まして、大声で泣き始めた!急いでもう一度抱き上げて揺らしてみる!女中頭さんも首をかしげている。


「う~ん……もしかしたらこの子は、抱っこしてないと駄目な子かもしれませんね……」

「って事は、ずっと?流石に腕が疲れて来たよ……」


それを聞いた颯が立ち上がった。


「僕にもさせて♪」

「うん、お願い……」


颯が抱っこして、もう一度寝かせたけど、やっぱ布団に寝かせた瞬間、号泣してしまった!


「あちゃ……やっぱ駄目か……交代で抱っこしとこうかね……」

「そうだね……」


そして、鈴ちゃんに人間界の買い物をお願いして、荷物持ちに右京さんも同行して貰った。




 暫くして、蒼井くんがお城へやって来た。


「雪沢、大変な拾い物をしたみたいだな。」

「うん……抱っこしてないと泣いちゃうから、大変だよ……」

「はは!中々似合ってるぞ!颯様の子供が出来た時の予行演習だと思えばいいだろ!」

「ば、馬鹿っ!そんなの早いってば!」

「まぁ、確かに手付けの方が先だよな!」


チラッと颯を見ると、難しい顔をしてる。


「颯様だって、早く子供が欲しいでしょ?」


蒼井くんに話をふられても、颯は眉間に皺を寄せたままだ。


「……まぁ……子供はいいかな……」


えっ?それはど~ゆ~意味なの?


だけど聞く間もなく、すぐに蒼井くんが話を変えた。


「雪沢、俺にもその赤ちゃんを貸して。」

「うん、いいよ。」


赤ちゃんを抱っこした蒼井くんは、色々と気配を調べ始めている。


「う~ん……やっぱ川系の水妖族だろうな……どの種族かまではわからないけど……」

「そっか……」

「悪いけど、親が見つかるまで預かって貰えるか?すぐに探すようみんなに伝えるよ。」

「わかった。よろしくね。」


ふぅ……

蒼井くんが帰った後、溜め息をついた。


颯って、子供は要らないのかなぁ……

はっ!まさか、雑誌に載ってたみたいに、一晩でポイッ!とされるパターン?!いや……それなら今までも必死に私を護ろうとしないよね……

う~ん……益々、颯の真意がわからないや……




 赤ちゃんの面倒は僕達が見るよ♪宣言したその夜は、地獄のようだった。


「おぎゃ~~!!」

「……はいはい、ミルクですか、おむつですか……何回目ですか……」


眠たい目を擦りながら起き上がると、颯がミルクを作りに行ってくれた。


「おむつを代えておくか……」


薄明かりの元、何とかおむつを交換し、抱っこしてみる。


「ミルク、作って来たよ!」

「ありがとう……今、おむつを交換したよ……」

「美子ちゃんもありがとう♪」


颯からミルクを受け取って、赤ちゃんに飲ませてあげる。


「飲んでる時は大人しいね♪」

「ふふ!一所懸命に飲んでる♪」


哺乳瓶の中身が無くなるまで飲みきって、女中頭さんに教わったように赤ちゃんの背中をトントンして、ゲップをさせてみた。


けふっ!


「ふふ!ゲップの声まで可愛い♪」

「だね♪次は……」


地獄の寝かしつけだ……


「大人しい今なら大丈夫じゃぁない?」

「チャレンジしてみようか……」


そっとゆりかごに寝かせてみる。その途端、火がついたように号泣をはじめた!


「あちゃ……やっぱり駄目か……」

「やっぱもう少し落ち着かせた後だね……」


赤ちゃんを抱っこしようかと手を伸ばすと、颯が先に赤ちゃんを抱き上げた。


「美子ちゃん、眠たいでしょ!寝かしつけは僕がやるよ♪」

「でも……」

「美子ちゃんよりは体力あるって♪」

「んじゃ、せめて見てるよ。」

「僕に凭れていいからね♪」


颯の腕に抱かれて大人しくなってきた赤ちゃんを見ているうちに、段々と私まで瞼が重たくなってきた。


「ふふ!美子ちゃん、寝ていいよ♪」

「ん……大丈夫……」


そのうち颯に凭れ掛かって、ウトウトとしてしまった。


「美子ちゃん……」


颯が呼んでる……でも返事が出来ない……


「僕は美子ちゃんさえ居てくれれば、他に何も望まないから……」


……それは……どういう意味……なの……?

聞きたいけど……


眠気に勝てず、そのまま深い眠りに入った……




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