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もののけの嫁として売り飛ばされました!  作者: 元々猫舌
もののけの彼女になりました!
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第三十四話

 その日、お城の中庭で魁くんとサッカーみたいな遊びをしていた。こちらの世界では蹴鞠というらしい。


「それ!」

「あ~!美子さま!勢い良すぎです!」

「ごめん、ごめん!加減が難しくて!」

「お返しです!それっ♪」


魁くんが蹴ったボールは勢いよく、植え込みへ飛んでいく。


「あっ!ごめんなさい!」

「いいの、いいの!取ってくるね!」


ボールが隠れてしまった植え込みまで走っていくと、怒ったような声が聞こえてきた。


「痛ったぁ~!」


へっ?!こんな狭いところで誰かが昼寝?


「すみません!そのボール……」


植え込みを覗いて、言葉が止まった。


う、嘘……小人?!ってか、何で?!いくら何でも非現実的過ぎっしょ!!


植え込みの隙間には、確かに10センチくらいの小人がいる。


あっ!そういえば、小人が見える心の病気があるって聞いた事がある。そっか……あまりにも混乱し過ぎて、ついに心が病んでしまったのかも……


「うん……きっとこれは心が作り出した幻だ……」


ボールを持ってその場を去ろうとしたら、小人が更に怒り出した。


「お前!謝罪無しか!」


あはは……ついに幻聴まで聞こえるように……


「そんな悪いヤツは、こうしてやるっ!えいっ!」


え?!やっぱ現実?!?


そう思う間もなく、シュルシュルっと、周りの景色が巨大化!!


「ど、ど~ゆ~事?!……って違う!私が小さくなってるじゃん!!」


その時、魁くんの私を呼ぶ声が聞こえてきた。


「美子さま!美子さま!何処へいかれましたか?」

「魁くん!ここだよ!」


思いっきり手を振って、巨大な魁くんを呼んだ。


って、服着てないしっ!巨大な自分の着物の上に座ってるじゃん!こんな姿、見せられないってば!!


急いで着物の中へ潜り込む!


「あれ?確かこの辺り……って、美子さまの着物だ!大変だ!!」


魁くんは私には気付かず、私の着物を掴んで城内へ駆け出した!


うわっ!いきなり空中にぶらぶら状態!落ちたら裸を見られるっ!


必死になって落ちないように、着物を掴んで耐えていると、魁くんは颯がいる最上階の部屋へ飛び込んだ。


「颯兄さん!」

「魁、そんなにあわててどした?」

「こ、これを見て下さい!美子さまが消えてしまいました!」

「何だって?!」


颯が、ガバッ!と着物を掴んだ!


うわわっ!揺らさないでよっ!


「お、落ちるっ!!」

「あれ?今、美子ちゃんの声が……何処にいるの?!」

「……颯、とりあえず、静かに着物を置いてくれる?」

「わ、わかった!って、何処なの?」


颯が置いた着物の裾から、顔だけ出す。


「ここだよ……」

「えっ?!美子ちゃん?!どうして?!」


近寄ってくる颯を、急いで止める!


「来ちゃ駄目~~~!!!」

「ど、どうして?!ってか、何でそんなにコンパクトに?!」

「とりあえずハンカチちょ~だい!何も着て無いの!」

「……え?」


颯の動きが止まったかと思ったら、ブホッ!と、いきなり鼻血大放出!!


「うわっ!颯兄さん!しっかりして下さい!」


こりゃ駄目だ……


結局、騒ぎを聞きつけた左京さんに手拭いを貰って身体に巻き付け、中庭であった出来事を説明した。


「う~ん……それは悪戯小人のせいかな?」

「悪戯小人?」

「たぶんね。親切にしてもらった人には味方になってくれるんだけど、怒ったらその相手を自分と同じ大きさに変えてしまうんだ。」

「じ、じゃぁ、一生この大きさ?」

「もののけなら一日で元にもどるよ♪ちょっとした懲らしめみたいなもんだからね!」

「人間なら?」

「白蛇族の件もあるから何とも言えないかな……大丈夫!小さくても、必ず美子ちゃんを護るから安心して♪」


颯は、ドン!と胸を叩いて、私を安心させるよう微笑んだ。


「颯……」


とっても頼もしい事を言ってくれてるけど、鼻血の栓をしたままじゃぁ、カッコ付かないよ……




 それから女中さんが持ってきてくれた人形用の着物に着替え終わると、魁くんがしょんぼりしながら、私に顔を近付けて来た。


「美子さま、ごめんなさい……僕が鞠を強く蹴っちゃったから……」

「魁くんが気にする事は無いよ。ただ、顔が近いかな……吹き飛ばされそう……」

「ふふ!美子さまがお人形さんみたいに可愛いので、じっくり見ちゃいました♪身長は三寸くらいでしょうか♪」


魁くん楽しんでるな……絶対に反省してないだろ……




 翌日の同じ時間になっても、身体はやっぱり小さいままだった。


「ふふ♪美子ちゃん、可愛い過ぎ!」


颯は寝そべって肘をつき、私を覗きこんでいる。


「絶対、楽しんでるだろ……」

「そんな事ないよ~♪だって小さいままだと抱き締めれないもん!早く元に戻って欲しいな~♪」

「はぁ……ここ最近、理解出来ないことばっかりが続いてるよ……」

「まぁ、そんなに落ち込まないで、一緒に領地の見周りへ行こうか♪」

「どうやって?無理っしょ!」

「僕の懐に入ればいいじゃん♪それか、肩に乗る?」

「……懐でお願いします。」


颯が手のひらに私を乗せて胸元まで運んでくれたので、着物の懐へ入った。


「じゃぁ、出発~♪」

「は~い……」


領地の見回り中、颯は上機嫌で歩いている。私はひょこっと懐から顔を覗かせている状態だ。


「こんなに美子ちゃんを近くに感じながら歩けるなんて、幸せ~♪」

「やっぱ楽しんでるじゃん!!」

「ふふ♪怒っても迫力ないね!」

「そりゃね……」

「今日は、河原でお昼御飯を食べようね♪おにぎり持って来たんだ!」

「いや、私はおにぎり無理だって……」

「ちょっとなら食べれるでしょ!ちゃんと分けてあげるからね♪」

「……よろしく。」


そして見回り途中の河原へ着き、颯は草むらに平らな場所を作ってくれて、そこへ私を下ろした。


「はい、ど~ぞ♪」

「ありがと……」


おにぎりをちょこっとだけ千切って渡してくれ、それを頬張る。


「ん!美味しい♪美子ちゃん、何だかピクニックみたいだね!」


颯は相変わらず上機嫌だ。こっちは呑気にピクニックとはいかないくらい、巨大な草に囲まれてるんだけど……


その時、背後からカサッ!と音がした。不審に思いながらも振り向くと、そこにいたのは……巨大な緑色のバッタ!!


触角をひくひくさせてるじゃん!!狙われてるじゃん!!


「ぎゃぁ~~~!!!助けて~~~!!!」


その場におにぎりを放り出して、ダッシュ!!


「美子ちゃん、どうしたの?っていない!何処に行ったの?!」


颯が私を探している声が聞こえるけど、構ってられない!!


「いやぁ~~!!来ないで~~!!」


必死に走り回って、大きな葉っぱの陰に隠れた。


はぁ、はぁ……何とか捲けたか……


ふと周りを見渡すと、大きな草だらけで、右も左もわからなくなっている。


「お~い!美子ちゃ~~ん!何処~?」


颯が遠くで呼ぶ声が聞こえる。


「颯!!こっちだよ~!」

「ちょっと待ってね!踏まないように、慎重に歩いていくね!」

「わかった!!」


ガサッ……

背後でまた草をかき分ける音がしたな……嫌な予感が……


恐る恐る振り向く……


「きゃぁ~~~!!!出た~~!!コオロギだ!!」


ってか、巨大なコオロギってグロ過ぎなんですけどっ!!


「美子ちゃん!じっとしてて!」

「無理~~!!助けて~~!!」


コオロギは追いかけて来なかったものの、巨大な草の隙間を走りまくって、また見覚えのない所へ来てしまった。


「美子ちゃ~ん!今度は何処~?!」


気付けば、颯からかなり離れたところまで来てしまっている。


「ここにいるよ~!」


思いっきり両手を上げながら振りまくって、何とか現在地を知らせようとぴょんぴょん飛んでみる。その時、いきなり身体に何かが巻きついて、後ろに引き寄せられた!


シュルシュルッ!


「うわっ!ちょ、ちょっと!一体何?!」


身体に巻き付いたものを辿ってみると……


「ぎゃぁ~~!!ガマカエルだぁ~~!!助けて~~!!」

「ぐふふ♪やっと理想の花嫁を見つけたケロ♪」

「はぁ?!何言ってんのよ!離してよ!!」


どうやら雪女の妖艶な雰囲気は、ガマガエルにまで通用するらしい……

いや、そんな事より私、もしかしてカエルと普通に喋ってる?!ってか、それもど~でもいい~~!!


「俺達の愛の巣に行くぞ♪」

「いやだ~~~!!!」


私の叫びも虚しく、カエルはぴょんぴょん飛び続けて何処かの田んぼまで連れて来られ、ドサッ!と地面に投げ出された。ガマはじぃ~っと私を見て、長い舌を出したり引っ込めたりしている。


ちょ、ちょっと何よ!!人を舐めまわすような目で見て!!ってか、マジで自分の身体と同じ大きさのカエルなんて、キモ過ぎっ!!


「おい、女!」

「な、何よっ!」

「仲間を呼んで来るから逃げるなよ!すぐ追いかけるからな!」


ガマは何を思ったのか私を置いて、バシャ~ン!と田んぼへダイブ!

逃げるなって言われて、待ってる訳無いじゃん!今がチャンス♪


猛ダッシュであぜ道を走り、何とか近くの畑へ身を潜めた。


「ふう……畑なら大丈夫かな……」


ムクムク……

……ん?今、土が動いたような……って、巨大モグラだぁ!!


「お?君、可愛いね♪どうだい?僕の嫁に……」

「もう嫁は嫌だぁ~~~!!!」


再び全速力で走り出し、大きな木の下で枯れ葉をかき集めて、その中に隠れた。


はぁ……雪女の妖艶な雰囲気って、色々と通用し過ぎだよ……


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