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もののけの嫁として売り飛ばされました!  作者: 元々猫舌
もののけの彼女になりました!
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第三話

 翌日、散歩と称して城下町へ出た。もちろん人間界へ帰る祠の扉を探す為だ。そして、当然のように颯が追い掛けてきた。


「美子ちゃん、一人で歩いたら危ないって言ったじゃん。」

「だ~か~ら~!付いて来るなっ!」

「だって美子ちゃんが心配なんだもん♪」


ささっ!と速足で歩いた。ささっ!と颯も速足でついてくる。

急に立ち止まってみた。ぴたっと颯も立ち止まる。


「はぁ……どうやっても付いてくるんだね……」

「当たり前じゃん♪だって婚約者だし、しっかり護るからね!」

「護るって言ったって……」

「だから言ったでしょ?こっちの世界では頼りになるよ♪」


はぁ……出るのはため息ばかりなり……


再び大きく息を吐き出して、歩き出した。


「ってか、何で私なの?もののけ同士で結婚すればいいじゃん。」

「だって、美子ちゃんに惚れちゃったんだもん♪」

「何処に?」

「初めて出会ったのって覚えてる?」

「野良犬に颯が襲われてた時だよね?」

「そそ!人間界では器が20年越えないと力を使えないし、人間界しか知らない野良犬は僕のことも知らなかったみたいだから、追い払えなかったんだよね~!で、他の子はみんな逃げていったのに、美子ちゃんだけは僕の為に戦ってくれたでしょ?」

「たったそれだけ?」

「他にも色々あるよ♪健気に神社の掃除して、お小遣い貯めてたのも見てたしね!」


なるほどね……

貧乏が滲み出た見た目に惚れられる要素が無いと思ってたけど、そ~ゆ~所を見てたんだ……


「それに、おじさんとおばさんが喧嘩してた時なんて、いつも神社の境内で小さくなって落ち込んでたでしょ?抱き締めたくって仕方無かったって♪」

「だ、抱き締めるって!ば、ばっかじゃないの!!」

「あれ~?照れた?」

「照れてない!」

「そ~ゆ~事にしとくよ♪」


颯に文句を言いながら歩いていた時、トコトコと綺麗な毛並みの銀ギツネが目の前を横切ってきた。


「あっ!可愛い~♪」


人に慣れてるのか、まったく逃げる素振りも無い。思わずキツネを抱きあげて、なでなでする。


ん~!ふさふさの毛並みが癒される~♪


「そ、そなた、胸が当たっておる……」

「……へ?」


なでなでしている手を止めて、思わずキツネの顔を見た。


「だから、胸が……」

「き、キツネが喋ったぁ~!!」


びっくりしてキツネを手離した瞬間、ポン!と煙が上がって、中から鋭い目つき&整った顔立ちのイケメンが現れた!


「き、キツネが……」


説明を求めようと颯を見ると、何故か、いじけている。


「美子ちゃん、他の男に抱かれるなんて……」

「抱かれてないだろっ!ってか、この状況を説明しろ!」

「……わかったよ。こいつは妖狐族のしゅん。僕の幼馴染だよ。」

「へぇ~。だから化けれるんだね。」


颯は不貞腐れたまま、瞬を牽制している。


「瞬!美子ちゃんは僕の婚約者だからね!」

「ほう、これがか……」


キツネから化けた瞬って人は、私をチラッと見て、ふいっ!と目を逸らした。


「いたって普通のおなごであるな。」


うわっ!めっちゃ失礼!


「何だよ!赤くなりながら言うことか!絶対美子ちゃんに手を出すなよ!」

「あ、当たり前だ……我はおなごに不自由しておらぬ。」


そう言いながら、瞬はまた顔を赤くしてる。


そういえばさっき、胸が当たるって言ってたよな……何だかまた変な輩に惚れられそうな気がするし、ここは関わりを持たない方がいいかも……


二人の言い合いを背中で聞きながら、再び歩き出した。


「ちょっと、美子ちゃん!一人で歩くと危ないってば!」

「颯の言うとおりであるぞ。まだ人間の匂いしかせぬからな。」

「へ?何で瞬が付いてくるんだよ!僕の婚約者だよ!」

「だが、まだ颯の匂いがせぬ。手付けはしておらぬであろう。」


ん?手付け?もしかしてエッチってこと?


くるっと後ろを振り返り、二人に向き直る。


「あのさぁ……まだっていうか、永遠にないから!」


すると、瞬は名案が思い付いたかのように、ポン!と手を叩いた。


「では、美子、我の嫁になれ。」

「……へ?」

「さっきの胸……いや、美子の匂いが気に入った。」

「いやいや……」


やっぱ頭がおかしなヤツだ。しかもエロ狐ときた……


そんな瞬に、颯が噛み付いている。


「何で呼び捨てにしてんの!美子ちゃんだけは譲らないからね!」

「どうせ手付けしておらぬし、今から我も立候補すれば問題無いであろう。」

「だから!」


ここで、言い争いをする二人を冷静になって眺めてみる。


もしかして今、イケメン二人に取り合いされてる?!私ってばモテ期到来?!(もののけだけど……)


って、喜んでる場合かっ!


自分で自分に突っ込みを入れて、再び二人を無視して歩き出した。だけど、結局この日は、祠の扉を見つけることが出来なかった。




 「はぁ……」


盛大なため息をつきながら、颯のお城まで何故か瞬も一緒に歩いて帰る事になった。


「美子ちゃん、今日は誕生日でしょ!盛大にお祝いするって、みんな準備してたよ♪」

「もののけにお祝いされてもね……」

「そんな事言わずに楽しみにしててよ♪ケーキも人間界から取り寄せてるからさ!」

「わかった……」




 歩いてお城へ戻る途中、遠くからバサッ!バサッ!と羽音が聞こえてきた。


「美子ちゃん!危ないっ!」


急に颯が、何かから庇うように抱き締めてきた!


うわっ!颯の身体、結構固いっ!


何だか知らない男の人みたいで、不覚にも抱き締められた腕にドキッ!と、してしまった。


「ちょ!ちょっと!颯!」


焦って顔を見上げると、いつものふざけた顔ではなく、空を睨んでいるようだ。何気なく颯の目線を追ってみる。


「って、人に羽が生えてるぅ~!ってか、飛んでる~~!!」


羽が生えた人は、そのまま私達の目の前に降り立った。


「颯、婚約者を連れて来たって聞いたので、見に来ましたよ。」

(しょう)に言われても、美子ちゃんは譲らないからね!」

「ん?その抱き締めているのが、婚約者ですか?」


……ん?抱き締めてるって……うわっ!


現状に気付いて咄嗟に、ドン!と両手で颯を押しのける!


「ち、違う!違う!」

「あれ?違うのですか?」


翔って名前の人は、不思議そうに私と颯の顔を見比べている。そして、はにかんで、現状否定する気無しの颯……


「まだ照れてるだけだって♪」

「照れてないっ!」


すかさず颯に突っ込みを入れ、改めて羽が生えた人に目を向けた。長身で女の人みたいに綺麗な顔立ち、長い黒髪、またこれがイケメン♪


「見た目は普通ですね……」


結構失礼なヤツ!!


と思っているうちに、また颯と瞬が無意味な言い合いを始めている。


「翔!どっか行け!美子は我の婚約者であるぞ!」

「だから、瞬にも譲らないから!」

「それならば美子に選んで貰おうではないか!美子!我と颯、どっちを選ぶかはっきりしてもらおう!」


え?え~~~?!いきなりこの二択っすか?


「そ、その~……第一印象ならこの人かな♪」


私は、二択から外れた翔って呼ばれた人を指差した。この人ならまともそうだし、私を好きになる事は無いだろうな♪


「え~~~?!美子ちゃん酷いっ!うるうる……」

「美子、気は確かか?こいつは腹黒だぞ!」


颯の反応は想定内として、瞬の言う腹黒って……


嫌な予感がしたものの、翔って人は想定どおりのまともな答えを返してくれた。


「大丈夫です。私が美子さんに惚れることは無いですよ。」

「だよね~♪んじゃ、帰るわ。」

「待ってください。」


踵を返そうとしたら、翔っていう人に呼び止められた。


「ん?何か?」

「何かでは無いですよ。据え膳を頂かないのは男の恥ですからね。一晩であれば相手をして差し上げましょう。」


はぁ……?!やっぱこいつもアホじゃん!


「あのね!据え膳になった覚えも無いから!」

「今しがた私を選びましたよね。」

「いやいや、空気を読もうよ……」

「では参りましょうか。」


翔は、いきなり私の腕を掴んで、空高く舞い上がった!


「きゃぁ~~~!!!」

「声が大きいですよ。そんなに驚く事では無いでしょう。」

「な、な、何で~~~?!離してよ~!」

「ん?今離したら貴女は死にますけど、宜しいですか?」


チラッと足下を見た。地上高くにいるよね!これって現実だよね!


「ぎゃ~~!!やっぱり離さないで!!死ぬ!!」


恐怖から、思わずギュッ!と翔に抱き付く。


「ふふ。最近の人間はずいぶんと積極的ですね。」

「ち、違うからっ!!抱き付いてる意味が違うからっ!ただの恐怖だから!」


遠ざかる地上で、颯と瞬が小さくなっていく。


「翔~~~!!離せ!!」


そんな二人の叫び声も虚しく山へ向かって飛んでいき、一軒のお屋敷の庭に降り立った。


「ただいま帰りました。」

「翔様、お帰りなさいませ。……そちらの人間は今夜のおかずですか?」


へっ?私、食べられちゃうの?


お屋敷から出てきた翔の家臣らしき人の言葉に、背筋がぞっとする。すると、翔が私の肩を抱き寄せた。


「もちろん私だけのね。」


意味深に翔が微笑むと、家臣らしき人が納得したように頷いた。


「かしこまりました。では寝所しんじょを整えておきます。」


そう言って、家臣の人はそそくさと屋敷の中へ入っていく。


「びっくりしましたか?烏天狗は人間を食する事はありませんから、安心して下さい。」

「いやいや、どの意味でもおかずにならないから……」


そう否定した私を、翔は肩に回した手を下ろして、じ~っと見始めた。


「ん?何か私の顔についてる?」

「……いえ。普通の人間であれば驚いたり恐怖に怯えたりするでしょう。美子さんは平気なのですか?」

「平気じゃぁないけど、昨日から色々な事がありすぎて、驚く事がごく普通になっちゃったっていうか……」

「中々面白い人間ですね。今日は颯をからかっただけですから安心して下さい。」


そう言いながら、屋敷の中へと案内された。


「ふふ。あの美子さんを連れ去った時の颯の必死な顔、面白かったですね。」


翔の笑顔に若干ブラックなオーラが見える……瞬が言ってた腹黒ってのも遠からずってところか?

嫌な予感がするけど、ここから歩いて帰るって言っても道がわからないしなぁ……


ため息をつきながら翔の後について行った。


「ここが私の部屋です。ゆっくりとお寛ぎ下さい。」


ガラッ!

一つの部屋の引き戸を開けて、中へ入るように促された。


って、一組の布団で、思いっきり枕が二個くっついて並んでるしっ!

ヤバい!マジで貞操の危機じゃん!



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