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もののけの嫁として売り飛ばされました!  作者: 元々猫舌
もののけの彼女になりました!
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第二十九話

 お城に戻って、部屋へ入った。


この部屋、こんなに広かったんだ……颯の気配がしないだけなのに、何だかだだっ広く感じてしまうな……


ぼ~っとしていると、右京さんが部屋へやってきた。


「颯様、美子様、おかえりなさいませ。」

「右京さん、ただいま……」


二人に挨拶をするって事は、やっぱり颯はいるんだ……


「……え?本当でございますか?」


右京さんが驚いて私に視線を向けて、またすぐに何も無い空間へ向き直った。よくわからないけど、経緯を説明しているみたいだ。


「本当にそのような事が……すぐに幹部を集めて対応を協議しましょう!─────わかりました。それでは暫くの間は、私が通訳致します。」


右京さんは私に向き直って、これから幹部で話し合うから、颯も不在にすると説明してくれた。


「大変申し訳ありませんが、暫くの間はお一人でお寛ぎくださいませ。」

「いいよ。どうせ全く颯の事はわからないしね。」

「そうですか……では失礼いたします。」


右京さんが部屋を出ていき、部屋の隅にある窓辺の前に座った。


ふう……広い部屋なのに隅っこが落ち着くなんて、やっぱ庶民だな……っていうか、一人だけ見えないって、こんな不思議な薬もあるんだな……


窓辺にはドライフラワーにする為に、鬼の子に貰った小さな花束を吊るしてある。その下には颯に貰ったサボテンを飾っている。それをぼ~っと見ながらも考える事は、鈴ちゃんの事だ。


もし、恋敵として憎んでいたのなら、鈴ちゃんなら簡単に私を殺せるよね……でも一週間で抜けるらしいって事は、何かを試したかっただけのかもしれない……


誰かが聞いたら楽観的過ぎるって言われるかもしれないけど、どうしても悪い方向に考えたくなかった。初めて出来た友達に恨まれた訳では無いって、思い込みたかった。


「鈴ちゃん……信じていいよね……」


窓辺に凭れ掛かって、目を閉じた。




 ……ん。あれ?私、寝てた……?


気がつけば外は暗くて、布団に寝かされている。


「颯が運んでくれたのかな……」


ありがとうって言っても居るかどうかわからないしな……


その時、ふと、行灯の火が明るくなった。


ふふ、颯が傍にいるってすぐにわかるな。


「ありがとう!颯、おやすみ!」


トン、トン!って行灯を軽く叩く音が二回聞こえる。


返事のつもりかな♪


ちょっとだけ気分が落ち着いて、もう一度深い眠りに入った。




 翌日から、部屋には常に右京さんが居る事になった。


「美子様、颯様の気配は全くわかりませんか?」

「うん……今、颯は同じ部屋に居るの?」

「はい、隣に座っておられます。─────全く分からないの?って、いじけていらっしゃいます。」

「はは……見えなくても、目に浮かぶ気がするわ……」

「─────はい、そのままお伝えします。美子ちゃ……失礼、美子様、僕はこんなに近くに居るよ~♪だそうです。」


と、急に背中に重みと温かさを感じた!後ろから抱きつかれている感覚に、思わず肘鉄!


バキッ!


うん、感触あり。


「う……美子ちゃ、様、酷い……僕がわからなくて寂しく無いの?とおっしゃっています。」

「静かで穏やかに過ごせてるよ~♪」

「そ、そんな……と、いじけ始めました。─────え?それは言わなくても良いのですね。颯様、失礼しました。」

「まったく……颯、右京さんを困らせたら駄目だよ!」

「─────りょ~かいっ♪だそうです。」


しかし、この会話があと六日間か……疲れるな……


「右京さん、執務があればこんなくだらない会話に付き合わなくてもいいよ。」

「しかし、美子様は不安では……」

「大丈夫!あと六日間の我慢だしね♪」

「─────やっぱり我慢してたんだ!寂しいんだね♪とおっしゃっています。」

「颯、ずいぶんポジティブな勘違いだね~♪」

「─────美子様、笑顔が怖いと、颯様がおっしゃられています。いえ!今のは決して私の言葉では……」

「ふふ。わかってるから、右京さんは気にしないで♪」


そう言えば、鈴ちゃんはどうなったんだろう……翔が追って沙汰を知らせるって言ってたけど……


「右京さん、鈴ちゃんの事なんだけど……何も無いよね?私、無事だし……」

「その件については、まだ何も決まっておりません。ただ、美子様の薬効が消えるまでは、白蛇族の村で自宅軟禁となっております。」

「軟禁って……何か酷いことされてないよね?」

「鈴様が自害しないようにという監視も込めて、颯様はそのように指示されました。」


それを聞いて一安心だ。そっか、颯は鈴ちゃんも守ってくれたんだ!


「颯、ありがとね♪」

「─────どういたしまして♪だそうです。あと、他の種族に知られないよう箝口令を敷いております。大変恐れ入りますが、バレないようにお願いいたします。」

「何かマズい事でもあるの?」

「はい……特に雪妖族に知られては、すぐさま鈴様が処罰されてしまうかと……」

「はは……わかった……」


確かにママに知られたら、鈴ちゃんは即行で氷漬けになりそうだな……絶対にバレないようにしなきゃ……




 次の日、颯が領地の見廻りへ行く時間になった。留守番を勧められたけど、あまりにも退屈だったしお菓子を作る気も起きなかったから、一緒に付いて行く事にした。


とりあえずいつもの道を私のペースで歩いてって通訳されているので、その通りに歩く。夏の日差しが眩しい散歩道だ。


城下町へ戻る川にかかる橋を渡っていた時、いきなり声を掛けられた。


「雪沢!」

「え?蒼井くんじゃん!」

「よう!元気そうじゃん♪颯様もお元気そうで。」

「─────いや、そんな事無いっすよ。ってか、二人ってもしかして喧嘩中?」

「へ?な、何で?!」

「だって、さっきから目を合わせないっていうか、雪沢も颯様の言う事にまったく反応しないからさ。」                 


そう言いながら蒼井くんは、私の隣をチラッと見た。


そこに颯がいるんだって事はみんなの視線でわかるけど、どう反応していいのか……

ってか、ヤバいっ!箝口令敷いてるし、颯が見えないってバレないようにしなきゃっ!


「そ、そうなんだよね~!まぁいつもどおり私が一方的に怒ってるって感じかな?あはは……」

「ふ~ん。じゃぁ、人魚族の島へ来るか?四六時中一緒にいると新鮮さも薄れるだろ。他の種族よりも人間界のものが多いし、家出するには安全なところだぞ。」

「ふふ。それはいいかもね♪」

「え?─────いや、決して下心ではなく、大事な同級生を心配しているだけです。」


はは……颯が蒼井くんに噛みついてるのがわかるな……ここはバレる前に退散するか……


「まっ!また喧嘩する事があったらお邪魔するよ!今日は大丈夫だから、またね♪」

「何かあったら遠慮なく言えよ~!じゃぁな!」


手を振ってそそくさとその場を後にした。


「ふう……危なかった……」


知り合いに会うっていうのは、想定外だったな……気を付けなきゃ!




 城下町まで戻ってくると、最近はあまり気にならなくなっていた町の人達の目線がやけに突き刺さる気がしてきた。ポツン……と、知らない世界に一人で取り残されたような気分だ。


冷静に考えると、周りっておばけだらけなんだよね……そして見渡す限り人間は私一人……


急に町のみんなから好奇な目で見られている、背筋が凍りそうな感覚に陥った。


誰かが私を狙ってるかも……私……誰かから狙われてる……

一人で城下町を歩くって、こんなに怖い事なんだ……


「……帰ろう……もう駄目だ!」


ダッシュで城下町を駆け抜けた!すると、後ろから同じく走る足音が聞こえてくる!振り向いても颯は見えないし、颯なのかおばけなのかもわからないっ!!


こ、怖いっ!!もう完全にホラー映画の世界じゃん!!


半泣きになりながら走って、お城の門に飛び込んだ!


「颯様、美子様おかえりなさい……って、美子様、どうかされたのですか?」

「い、いや……何でもないよ……」

「何だか顔色が優れないように見えますが……」


左京さんに声を掛けられて、やっと頭が冷静になってきた。


やっぱ後ろから追いかけて来る足音って颯だったのか……ってか、足音だけが追いかけて来るって、怖過ぎじゃん!!


「颯!!脅かさないでよ!!」

「─────ごめん、美子ちゃんが急に走るから……だそうです。」

「そっか……」


部屋へ入って、またしても深い溜め息をついた。


はぁ……颯が見えないだけで、散歩するのも怖いなんて……

あと五日間、私、堪えきれるかなぁ……




 翌日からお城で大人しく過ごした。領地の見回りも怖くて行けないし、話し相手の颯も見えないし、ママの所へも遊びに行けない。


「はぁ……暇過ぎ……あと四日間かぁ……」


窓辺で溜め息をついていると、魁くんがひょこっと顔を出してくれた。


「美子さま、溜め息は幸せが逃げるらしいですよ!」

「魁くん!良く知ってるね♪」

「母上が教えてくれました!冷たいわらび餅を買って来ましたので、一緒にいかがですか?」

「ふふ!ありがとう。んじゃ頂こうかな♪」


天使の微笑みに誘われて、中庭の縁側でお茶をする事になった。


ん~!蝉の大合唱も気にならないくらい、冷たくて美味しい~♪ほっぺたが落ちそう♪


「ふふ!颯兄さんが、久しぶりに美子さまの笑顔を見た♪って言ってますよ!」

「こんなに美味しいモノを前にして、笑顔にならない人なんて居ないでしょ♪」

「僕も安心しました♪最近、美子さまが楽しそうにお菓子を作られる姿も見られませんし……あっ!そ、その……お菓子の催促では無くてですね……」


あちゃ……こんなに小さな子にまで心配掛けちゃってたか……


「心配してくれたんだよね!ありがとう♪」


頭を撫でてあげると、にこっ!と天使の微笑み♪ん~!癒やされるなぁ♪


魁くんの側に控えていた中京さんが、恐る恐る尋ねてきた。


「本当に颯様だけが見えないのですね……」

「うん。」

「お話されるのも……」

「無理かな。スマホも無いから、メールも出来ないしね。」


「スマホ?メール?」


魁くんがキョトンってしている。


うわっ!こんな仕草も可愛いなんて、何てお得な子なんだろ~♪


「人間界にある、コミュニケーションツールなんだけと、文字でお話が出来るメールっていうのがあるんだ。」

「へぇ~。良くわからないけど、便利そうですね♪」

「そうだね!まぁ、貧乏だったからスマホの料金を払えない時は、止められてたけどね!」

「止められる?何をですか?」

「ふふ。魁くんには無縁な話かな♪」


もう一度、魁くんの頭を撫でた。


魁くん、天使のまま育ってね♪



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