第7章:怒りの殺人シュート
学校生活が入り始めたので新キャラがぞくぞく出てきます。
ただ力を求めていた。
なんでも守れる、強い力を。
大切な人さえ守れればそれでよかった。自分はどうなってもよかった。
もうこれ以上、大切な人が目の前で死に行くのを見るのが嫌だった。
だから力を求めた。
どんな時でも救済できる奇跡の力が。
でも、やっぱり一人の人間にできることなんて、限られている。
救えない時は、やっぱり救えない。
守れない時は、どうやっても守れない。
そう思ってた。
あいつに会うまでは。
◇◇◇
「…………眠い」
ごたごたした日の翌日。にわか雨が通り過ぎた空は気持ちいいくらいの快晴の中、和輝の姿はサッカーゴールのまん前にあった。
「……はぁ。やっぱ、休めばよかったかな、今日ぐらい」
学校のグラウンドであり、体育の時間である。ゴールの前で仁王立ちになる姿は様になっていると言えなくはないが、二十四時間テレビを無睡眠で観賞しきったように眠そうな顔をしているので、その威厳は半減している。
「寝られるわけねえよな。あんな話された後で」
あの後、やはり雷雨は家に戻って来なかった。
言うことだけ言って風のように去って行った、謎の電撃少女。
彼女が和輝に残したものと言えば、運命を決める選択肢と、一枚の紙切れだけ。
「なんであいつ、こんなもの残していったのかね」
和輝はポケットに手を突っ込んで、雷雨のいなくなった部屋に残されていたノートの切れ端を取り出した。
『注意 雷神拳の使用限度五回』
バイバイもなければ、さよならもないと来ている。まあ、それはさておき。
「なんでこんなもん俺に教えんだ?」
おっしゃばっちこーい、とか、あがれあがれー、とか叫んでる男子どもの姿をどこか遠くに感じながら、和輝はボールが来ないのをいいことに考えに没頭していた。
「えーと。雷神拳って言えば、あの鬼を倒した技、だよな? それの使用限度は五回。つまり使えるのは五回だけ。うん、それは分かる。で、なんでそんなもんを俺に伝える必要があるんだ? ……ん? ちょい待てよ。これを教えるってことは、今の俺、あの電撃パンチ使えんの?」
うわマジやってみてえ! とガキみたいな発想に至る和輝であった。
「おい和輝ぼさっとすんな! 行ったぞっ!」
新城武谷の怒声が響き、少し遅れてボールがネットに向かって飛んできた。
「邪魔DEATH」
地面に水平に飛んでくるボールを和輝はあっさりと蹴り返す。その手にはめられた手袋はなんなんだと言いたくなるような行為だが、敵チームを唖然とさせるには充分な効果だったようで、和輝はちょっとしまったと思った。
神代和輝はごく普通の高校生。
一応、和輝はそういう風に振る舞っている。
格闘家であることは、面倒を避けるため極力秘密にしているのだ。
そのためできるだけうすーいキャラ作りをしようと心がけているのだが、友人である新城武谷が『お調子者・おバカ・おさる(これ不明)』の三拍子を揃えているため、和輝にまでとばっちりが来て結構目立っている。おまけに、力の加減をするのが苦手な和輝は時々ついいつも通りの身体能力を発揮してしまうため、こうした芸当を行いがちなのである。
今のところバレてはいないがこのままの生活を送っているといずれは公になるかもしれない。
「俺、真剣に友達選ぶの間違えたかな」
まあ、悪い奴じゃないんだけどさ、と思いつつ、和輝は右手に視線を向けて、次いでグラウンド中にも目を光らせる。
「……うし。今俺らのチームが攻めてるから視線はあっちに釘付け。こっちを見てるものほぼなし。チャンス!」
にししと和輝は笑って、なーに威力落としてやりゃ大丈夫さと楽観的に考えながら拳を握った。
「<雷神拳>!」
ゴールの枠に突き刺さる拳。
そして全身に伝染する震え。
「い――――――っっっってええぇぇぇえええええええ!!!」
次の瞬間には、ゴール前でのた打ち回る和輝の姿があった。哀れであった。そしてバカであった。
「な、なんで!? なんで雷が出ねーんだよ!?」
「出るわけないでしょ、そんなもの」
「なっ! 雄哉いつからそこに!?」
「さっきからずっといたよ。危ない独り言も全部聞いてた。君ってもっとまともな人だと思ってたけど、違ったんだね」
「結局こんなオチかよぉおおおおおおおおおっ!」
◇◇◇
「ところで我が友雄哉よ」
「なんだい突然改まって。危ない世界に僕を引き込もうとしても無駄だよ」
「……あえてそのことにはツッコミは入れん。だが、これだけはツッコミ入れさせろ」
びしりと指を突きつけて和輝は叫ぶ。
「テメェ何やってんだ!」
「パソコン」
言い切りやがったよこの野郎!
「……お前さ、今がなんの時間か知ってるか?」
「んー。体育の時間でしょ。そんなのこの状況見たらばっちし分かるよ」
「ほほお。で、我が友新城雄哉さんよ。兄貴がフォワードで大活躍しててお友達の和輝くんもゴールを死守している中、君は何をやっているのだね?」
「パソ」
「略すな! つかそう言う意味じゃねえ! お前学校に何しに来てんだ!?」
「……勉強?」
「聞くなよ! つかこっち見て喋れよ! ノーパソのキーボードかたかたやってんじゃねーよ!」
「それは無理な相談だね。今僕NASAのメインコンピュータにハッキング仕掛けてるところだから、手が離せない」
「すいませーん。誰かこの犯罪者捕まえてくださーい」
ああもうちくしょうマジで友達間違えた! と和輝は頭を抱えた。
新城雄哉。新城武谷の双子の弟。ちなみに二卵性双生児。趣味・ハッキング。特技・ハッキング。自慢・まだ一度も捕まっていない。あいつを敵に回してただで済んだ奴は見たことねえとは兄こと新城武谷の談。
……神様。なんでぼくの周りにはこんな変な連中ばっかし集まるんでしょうか。
「おら神代ー。言ったぞー」
「へーい」
傷つきながらも健気にボールを弾く和輝であった。
「しっかし、さっきはなんで雷神拳が使えなかったんだ?」
雄哉をグラウンドの端に追いやってから和輝は考えをめぐらせる。
「つか、よく考えたら、俺あの技の使い方教えてもらってねーじゃん。でも、昨日はなんか無意識の内に出せてたんだよな。うー、一体俺は何をどうやったんだ?」
わかんねー、と呻いて和輝は視線を無意味に動かした。ちょっとした気分転換である。
と、和輝の目に女子達が短距離に精を出している姿が飛び込んできた。
「そういや、今年の新入生はレベル高いんだったな。武谷に言わせりゃ」
そうかなー、と疑問に思いながら女子の姿を眺める和輝である。なにぶん美人でグラマーな姉がいつも傍にいるせいで和輝には他の女子のレベルが高いとはあまり思えないのだ。
しかし、そんな和輝でも思わず目を引かれるような美少女を和輝は発見して、あっ、と声を上げた。
「わー! 紅さんはやーい!」
「ほんとっ! 中学は陸上部だったの? コツ教えて〜」
「そんな……大したことじゃないよ」
数人の女子に囲まれて謙虚な態度を崩さずにいる、真紅の髪をなびかせる少女。その体躯はすばらしいの一言に尽きる。スリムな体。見事な脚線美。プロポーションも申し分ない。さらさらのロングヘアは触るだけで至福へと誘われそうな輝きを放っている。
一寸の隙もない、誰にも文句を言わせない完璧な美少女であった。
「あいつは……確か同じクラスの……」
「紅美夏さんだね」
「なんっ! 雄哉テメッ、いつの間に!?」
「ハッキングが無事終了したからディフェンスにでも参加しようと思って……。それより、彼女のこと、気になるの?」
「いや、気になるっていうか、なんていうか……」
和輝の脳内で入学式の出来事が思い起こされる。
「彼女のこと、知りたい?」
「……まあ、少し」
「分かったよ。えーと紅美夏と……」
「? お前何してんの? またパソコンいじって」
「僕が作ったこの学校の生徒データバンクで調べてるんだよ」
「……もしかしてお前、この学校の生徒全員の情報把握してる―――とか?」
「まさか。冗談言わないでよ」
「あ、あは! そ、そうだよな! いくらなんでもそこまでお前も」
「教員の秘密もばっちり調べてあるに決まってるじゃないか」
「誰か! 誰かこいつを逮捕してくれー!」
◇◇◇
「―――――出たよ。紅美夏。十五歳。誕生日5月4日。世界にも視野を広げている大企業・紅グループ本家の一人娘。容姿端麗・頭脳明晰、おまけにナイスプロポーション。趣味は映画鑑賞。狙っている男子は数多く、一部の教師さえも玉の輿を狙っているが、今のところ彼氏なし。いわゆる高嶺の花。性格は誰にでも優しく、また気遣いもできるので、男子のみならず女子の間での人気も上々。他には……」
「いや待てもういい。それ以上プライバシーに関わることを言うな。つか犯罪レベルに達してないかそれ?」
「何言ってるの。これからがおもしろいのに……あ、そだ。なんなら紅さんのメアドと電話番号も教えてあげよっか?」
「いいよ! つかお前そんなことまで知ってんのかよ!? どうやって調べた!」
「それはあなた。僕の情報網侮らないでと言うしかできませんね」
お、恐るべし雄哉情報網。和輝は思わず身震いした。
「それにしても、紅さんのメアドをいらないなんて君も変わってるよね。普通なら喉から手が出るほど欲しいと思うけどな」
「いらねっつの。俺と紅は友達ってほど親しい仲じゃねーんだから。メアドなんか分かってもなんて送っていいかわかんねーよ」
「本当に変わってるね君は。誰あろう紅さんのメアドだよ? 知っておいて損はないと思うけどね。あ……。今思いついたけど、このメアド一人二千円でも充分売れないかな」
「売るなよ。絶対に売るなよ!」
「分かってるよ。さすがに僕もそこまで道徳に反した行為はしない」
「お前の道徳基準がいまいちよく分からん」
「まったくだぜ」
「ってお前はどこから湧いてきやがった武谷!」
「ふっ。美少女の話あるところに我あり!」
「雄哉ー。警察コールプリーズ」
「おっけー」
「マジで携帯出してやがる!?」
ゾンビのように湧き出て話しに割り入ってきた武谷。どうやらフォワードに飽きてディフェンスに転身したらしい。
「けどさー。マジな話紅さんってスゲェよな、いろんな意味で。噂じゃ中学時代は何かと伝説的な奴だったらしいぜ」
うんうんと頷きながらサッカーそっちのけで会話に没頭する武谷。前にいても話し相手がいなくて寂しいから戻ってきたのではないかと和輝は推測しながら、結構興味がある話題なので食いついていく。
「伝説? なんだそりゃ」
「とにかくスゲェらしかったぜ。成績は常に学年トップで、運動神経も抜群。運動部からは熱心な勧誘もあったらしい。おまけに、紅さんってあの容姿だろ? 性格もいいし何かとモテてたらしいぜ。聞いた話じゃ学校内の約八割の男子が紅さんに憧れてて、告白された数は100を越すらしい」
「ふーん」
「ふーんって、驚いてないね。君は驚かないの? 僕がその情報を掴んだ時はなんのゲームだってツッコミそうになったけど」
「いやー。それは世間一般で言えば超驚くことなんでしょうけども。俺っち、一つ上に最強の姉貴がいまして、はい。だから異常的なことには結構慣れてしまってるというか。―――まあ、結果から言えば、加代姉の奴、他校の奴からもしょっちゅうコクられてました」
「……それはそれは」
「まあ当然だな! 加代さんってすげー美人だもの! 俺が見る限り学年のみならず学内ベスト3には確実に入ってるね。紅さんとも互角の勝負ができるのも頷けるぜ」
「いや勝負してないだろ」
「でもまあそれはそれとして、紅さんってなんで彼氏いないんだろな? 選び放題だと思うんだけども」
「僕の情報によると、バスケ部の次期キャプテン決定とも言われてておまけにすごいカッコいい先輩に告白されても振ったらしいよ」
「チッ! 手が早えな、その先輩! 俺も密かに狙ってたのに!」
「いやいや驚くのはそこじゃねえだろ!?」
「もう兄さんどっか行っててよ。兄さんがいると話がいろいろ変な方向にこじれそうなんだけども」
「てめこら雄哉! 言うに事欠いて何言ってんだ! 俺はお前の兄貴だぞ!?」
「………………そうだね」
「あからさまに嫌そうな顔で言うなーっ!」
いつも通り騒ぎ出した双子を見て和輝は苦笑する。なんだかんだ言ってもこの兄弟は仲がいい。二人にじかに言えばきっと否定するだろうけども。
「紅美夏、か」
和輝は女子達と談笑している紅美夏を遠巻きに見詰めていた。本当に綺麗だ。素直にそう思える。でもそんな彼女には彼氏がいないという。何故だろうか。誰か一途に思い続けてる男でもいるんだろうか。
何より不思議なのは自分だ。
なんで俺はあいつが気になるんだ? 惚れたとかそんなんじゃない。うまく言葉にできないのがもどかしいのだが、直感的に言えば、彼女を見たとき自分の中に何か違和感が生まれるのだ。その違和感が気になって仕方がない。
和輝はもう一度入学式のことを思い出した。
『……そう、よ、ね。もう、何年も前のことだものね……』
あれは一体、どういう意味だったのだろうか。
「ぐぎゃ!」
頭に突き刺さった痛みで和輝は我に返った。
「うぎぎ……っ! なんだよ一体!」
あまりにも不意を付かれたものだからもろにくらった頭がぐらぐら揺れている。悶絶ものである。何が起こったんだと視線を落とせばぽんぽんと転がるサッカーボール。どうやら誰かが蹴ったのが頭にクリーンヒットしたらしい。
「ふははははーっ! 思い知ったか神代!」
「なっ! テメェは!」
やけにむかつく高笑いが聞こえる方に目を向けると、そこにいたのは腰に手を当ててふんぞり返っている同じクラスの中宮であった。言動から察してボールを蹴ったのは奴で間違いない。それも意図的に。
「何しやがんだテメェ! 俺に恨みでもあんのか!?」
「恨みはない。だが貴様には罪がある。そう! どれだけの謝罪金を積もうとも拭えぬ大罪よ! よって俺は貴様に制裁を下した!」
「何わけ分からんことほざいてんだ! 俺がいつ大罪を起こしたってんだ?」
「今さっきだ!」
「あん?」
「貴様はついさっき、高貴で美しく、清楚で可憐な紅美夏さんの姿をずっと凝視していた。欲望でぎらつきまくった濁った瞳でだ! これを罪と言わずなんという? 他に言い様がない! 貴様は彼女の輝きを汚した! 許すまじ神代和輝! この程度のことで済んだことを幸福と感じとっとと睡眠薬多量摂取して死ね!」
「………」
うわー、マジでイタイ人がいるよー、と和輝は三歩ほど引いた。そんな和輝の隣で武谷と雄哉が世間話をする。
「そう言えば中宮くん、紅さんラヴだったね。異常なまでに」
「おーそう言えばそうだったな。なんたって自ら率先して紅さんのファンクラブ作ったぐらいだもんな。いやはや、さすがの俺もそこまでは真似できんぜよ」
「僕が収集した情報によれば紅さんに早くも告白しようとした男子達の六割を葬ったらしいよ。そうやって紅さんを影で見守りながら彼女には必要以上に手を出さず遠くから見詰めて満足してるようだね。うん、ファンの鏡だね彼は」
「まったくだな」
完全に他人事の二人。まあ実際他人なのだが。
そして和輝はと言えば、さっきはあからさまに引いていたものの今はプルプルと怒りに震えながら俯いていた。普段ならまあなんとか流せたかもしれない場面だが、今の和輝はいろいろと鬱憤が溜まっていたので歯止めが利かなくなっていた。
何あいつ? バカじゃねえの? つかバカだろ? こちとら昨日から全然寝てねえし考え事ばっかで頭沸騰寸前だしちょっと気分転換でもしようと思ってたところにこれですか? さすがの俺もキレますよ? つかキレた! もうキレた! とりあえず前方であっかんべーとかおしりぺんぺんとか地味にむかつくことしまくってるあのアホ生物殺す!!
「KILL YOU!!」
鬼の形相と化した和輝を見てさすがの中宮もびびったのか、「き、今日はこのくらいで勘弁しといてやろう」とさらに和輝の神経を逆なでするようなことを言って敵チーム側のゴールへ走って行った。
「逃がすかボケがっ!」
そう言うと和輝は、キーパーというポジションを放棄してボールを蹴り出した。もちろんゴール前は空っぽである。お前は赤帽子キーパーか! と武谷がツッコミつつ静止の言葉を投げかけた時、既に和輝は迫り来る敵三人を突破しているところだった。
怒りを全身に巡らせながらも、和輝は冷静にボールを運んで行く。
正面から来る敵を審判に見えぬ角度で当身をくらわせ、左右からスライディングしてくる奴らの足を目にも留まらぬ速さで踏ん付け、三人に囲まれると奥で控えている敵に顔面パスをお見舞いする。もうルールなんて知ったことかといった世界である。
「ひえーっ! あいつ化け物かーっ!?」
泣きが入った声で叫びながら全速力で逃げる中宮との距離を、和輝は確実に縮めていく。そしてすべての敵を振り切り中宮とゴールが直線状に並んだ瞬間、和輝は「死ねやゴラッ!」とヤクザみたいなノリで言って大きく振りかぶりシュートを放つ。
「ひぃ!」と短く悲鳴を上げ咄嗟に中宮は頭を下げる。
ボールはそのほんの少し上を通過していった。
「よ、よっしゃー女神は俺に微笑んだー! ふははははどうだ神代! 貴様なんぞのシュートがこの俺様に当たるわけねだろバーカ! ノーコンノーコン!!」
「やっぱテメェバカだろ」
浮かれまくってる中宮に向けて和輝は不適に笑う。
「ボールはまだ、生きてるぜ」
ガンッ、とゴールポストに弾かれたボールは引かれるようにして和輝の真上にやってくる。和輝はそのボールの軌道を完全に読みきり、勢いよく飛翔する。
「な、何っ!? まさか!?」
中宮が驚愕で目を剥く中、和輝は苦もなく空中でシュート体勢を整え吼える。
「死にさらせボケッ!!」
和輝は最大限の怒りを込めて渾身の蹴りを放つ。それは寸分違わずボールにヒットし、和輝の怒りと力が伝わったボールは、
雷に包まれた。
「いぃぃいいいやぁぁあああああああああああああああっ」
迫り来る電撃シュートを中宮は間一髪横っ飛びでかわした。「ちょおま避けんなよ!?」と声を荒げたキーパーも中宮と同じく悲鳴を上げてそれを避ける。目標を失ったボールは一直線にゴールへ突き刺さり、それだけに留まらずネットを突き破って後方の大木を一本薙ぎ倒し、終いには衝撃に耐え切れなくなったボールが破裂した。
「…………」
誰も、驚愕のあまり声を出せなかった。
ボールを蹴った和輝自身も。
なので、声に出せない思いを心の中で思いっきり叫んだ。
なんでこんな時に限って雷がしかも蹴りで出るんだーっ!!??
とりあえず和輝は体育教師に損害賠償を求められることになったとさ。
〜次話予告〜
騒がしくも楽しい日常を送る中、和輝の頭には雷雨との話が常にチラついていた。自分はどうするべきなのか? 自分はどうしたいのか? 悶々とした思いは日常へと現れていく。
次話も新キャラが結構出てきます。急展開なので話についていけないかもしれませんが、そこは多めに見てやってください。