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第23章:最悪のシチュエーション


ツンデレ和輝参上





 時間は午後8時。場所は本日、愛染高校一年生達が宿泊する旅館、その一室。


 ルームメイト達がトランプやらゲームやらで盛り上がっているのを尻目に、和輝は一人窓枠に腰掛けて夜空を見ていた。


 憂鬱な溜息が漏れる。

 この部屋に入ってから何度目の溜息か、数えるのもバカらしい。



 紅美夏とは結局、あれ以来一度も話すことがなかった。

 視線を合わすことがあったかどうかさえ、怪しい。



 一体、何がいけなかったというのか。


 紅を突き放してしまったこと? いや、紅はそんな些細なことで怒るような奴じゃない。ケンカはダメと何度も訴えたのに俺が無視したから? 確かにあまり褒められた行為ではなかったが、ああしなければ俺が何もせずともアキが暴れ出していただろうから、俺が手を貸したことは間違ったことじゃないはずだ。


 そもそも、どうして紅はあそこまで争いごとを嫌うのだろう。


 あの性格は今日に限ったことではない。紅はいつも、俺とアキが口ゲンカして拳を振り上げたとき、必死にそれを鎮めようとしていた。


 紅には何か、過去のトラウマでもあるのだろうか。


「……だからどうしたってんだ」


 紅にトラウマがあろうとなかろうと、俺には関係ない。俺は今まで通り、紅と接するだけだ。


 ……その今まで通りを、紅が拒絶しているのが今の現状なのだけれども。

 

「どうしたんだい、やけに沈んでるね」


 同じ部屋割りとなった雄哉が、脇にノートパソコンを挟むといういつも通りのスタイルで和輝に話しかけてきた。和輝を心配したのか、後ろで騒ぐ武谷達から逃れてきたのかどうかは、彼の表情から窺い知ることは出来ない。


「べつに、なんでもねえよ」


「君は、話を誤魔化すときいつもそっぽを向くね」


「………」


 雄哉のすべてを見透かすような視線を受け止められず、和輝はさらにそっぽを向いた。


「紅さんのこと?」


「さあね」


「謝ったりした?」


「謝る謝らない以前に、俺は謝るようなことはしてない。紅だってべつに怒ってるわけじゃなかった」


「そうだね、うん。確かにそうだ。

 でも君は、紅さんに対して、申し訳ない気持ちを持ってるんじゃないかな?」


「……もしそうだとしても、何を謝るってんだよ」


「さあ? それは自分で考えたらどうだい」


「話し振ってきたくせに、ずいぶん冷てえじゃんか」


「まあ、僕としては、このまましばらく君達がこじれ続けたほうがおもしろくていいんだけど」


 ニヤリと雄哉は怪しい笑みを浮かべる。自分の快楽に忠実な辺り、新城兄弟はやはり双子なんだと思い出させる。


「かーずきっ! なーに話してんだよ?」


「つか神代に真剣面なんて似合わねえようけけけけっ」


 会話が中断したのを見計らうかのように、武谷と中宮が絡んできた。つーか中宮、テメェは別の部屋だろうが、というツッコミはあえてしない。泊りがけの旅行で他のグループに乱入するのは半ば当然のことであり、そんなことにわざわざツッコムほど和輝は空気の読めない男ではない。他の男子も結構な数がこの部屋に集まっているし。


 だが、なんでわざわざこの部屋に集まるんだ?


 そんな懸念は自然と消えざるを得なかった。


「お、そろそろ時間だな」


 と武谷は携帯のディスプレイを確認して言った。


「?」


 なんのことか分からず和輝は首を傾げるが、他の男子はしっかり理解しているのか、皆気合を入れたりそわそわしたりと多種多様な反応を見せている。


「???」


 さらにはてなマークを増やした和輝を無視して、武谷はわざとらしくコホンと咳払いし、芝居がかった仕草で背伸びをしている。


「あー、ところでみんな……そろそろ、歩き疲れた体を癒したいと思わないかね?」


『たりめーだバーロッ!』


 うおぅっ!? といきなり上がった大声に和輝はのけぞった。なんだ? なんだこの異様な熱気は? そして何故某小学生探偵口調?


「まだ五月とは言え、さすがにあれだけ歩けば汗もかいたであろう? その汗を綺麗さっぱり落としてすっきりしたいと思わないかね諸君」


『たりめーだバーロッ!!』


「時に諸君、この旅館には我らの垢を一気に落としてくれる画期的なシステムがあるのだが、それはなんだね?」


『大浴場だよバーロッ!』


「……少し、頭あっためてこようか……?」


『イ゛ェアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!』


「……………ハッ」


 あまりに異質な光景に和輝は半分魂が抜けかかっていた。


 まあ、つまり、武谷が言いたいのはみんなで一緒に風呂入りに行こうぜということなのだろう。それは分かる。でもなんでここまでハイテンションになるのかが分からない。

 大体風呂に入るって言っても、一つしかない大浴場は今、女子の貸し切り状態になっているはずで―――


「―――って武谷テメェまさかっ!?」


 嫌な予感が頂点に達して、和輝は武谷を凝視した。武谷はその視線を真っ向から受けて、


 爽やかな笑みでサムズアップ。


「いくぜ野郎どもーっ!」


「待てやゴラァーッ!!」


 鼻息の荒い男子どもを連れて部屋を出て行こうとした武谷の胸倉を掴んで揺する。


「テメェ一体何考えてやがる!? なんでせっかく京都まで来てノゾキの思い出なんぞ作らなきゃなんねえんだ!」


「馬鹿者! せっかくうら若き乙女達が大浴場で一日の汗を流しているというのに、それを拝まないなど彼女達に失礼ではないか!」


「こそこそノゾキ見してる方がよっぽど失礼だ変態野郎!」


「俺は変態じゃない! 変態と言う名の紳士だっ!」


「意味分かんねえこと言ってんじゃねーっ!」


「まあまあ神代よ、そんな照れるなよ。お前だって紅さんの美貌を、直に見たいだろう?」


「中宮テメェ! 男として、いや人間としてそんなことしていいと思ってんのかっ!?」


「ハッ! ノゾキが出来ねえなら人間なんてやめてやらぁっ!」


「さすが中宮! お前こそ男の中の男だぜ!」


「ふっ、その言葉は新城、貴様にこそふさわしい」


「………」


「………」


『同志よっ』


 がっしっ、と二人は手を握り合う。


「ぐあっ! 組んではいけない二人が組んでしまった! 俺一人じゃ太刀打ちできねえ! 雄哉っ、お前も力を貸してくれ――って言ってる傍からいねえーっ!」


「和輝よ、いい加減認めるのだ。お前も心の底では、俺達と同じ気持ちでいるはずだ」


「いねえよっ!」


「それはお前の想像力が足りないが故だ! いいか和輝、全身全霊を込めて想像しろ。…女子達が笑い合いながら邪魔な衣服を脱ぎ去る…桶で湯をすくい全身を清める…艶やかな光沢を放つ美肌が湯船に沈んでいく…自分の体に不満を持つものがスタイル抜群の女子の肌を羨ましそうになでる…ハァハァ」


「気色悪いわっ!」


「ふふふ、そう言いつつも和輝、貴様も顔がずいぶん赤いではないか」


「ぐっ!」


 そりゃあ、和輝だって十五歳の少年である。年頃の女性の体に興味がないわけがない。

 まあ、ちょっとぐらいなら、のぞいちゃっても……いやいや何洗脳されてんの俺!? んなことしてもしバレたりしたら……紅って脱いだら凄そうだよなぁ……ってだから落ち着けよ俺!


「だぁああああ! 俺は負けん! 屈服なんてしないぞ! 俺はこの場にいる男子の最後の良心として、テメェらの野望を打ち砕いてやるっ!」







◇◇◇







 五分後。


 和輝の姿は、大浴場がある通りの曲がり角にあった。


「ハハ……燃えたよ、燃え尽きた……真っ白にな」


「何言ってやがる! 燃え尽きるにはまだまだ早えぜ!」


「そうだっ! 燃え尽きるなら紅さんのナイスバディをこの目に焼き付けてからだっ!」


 ハイを通り越してクレイジーなテンションを見せる男子どもに囲まれて、和輝は思いっきり溜息をもらす。


 仕方なかったんだ! 武谷達の異様な迫力に押され、味方は誰もおらず、己の中に目覚めた欲望を抑えるのも必死で……俺だって男の子だい!


 と、心の中でどこかの誰かに言い訳してみる。

 虚しいだけだった。


「……言っとくけどな、俺はテメェらが勢い任せに行き過ぎた行動をしないか監視するだけだからな。べ、べつに女子の裸が見たいわけじゃないからな!」


 みんなはなにも答えず、満面の笑顔で頷いた。

 何も言うな、分かってる―――その目は言っていた。


「殺すぞテメェら――――ッ!!」


 ギャーギャー騒ぐ和輝だが、周りの連中は涼しい顔で受け流す。なんだが、一人恥ずかしがってる自分がアホみたいに思えてきた。


 さて、となんとか落ち着きを取り戻した和輝を交えて、武谷が作戦内容を皆に通達する。


「いいか? 我らの目的はただ一つ、大浴場にいる女子達に気づかれることなく、楽園をこの目にしっかりと焼き付けることである。

 もちろん、馬鹿正直に正面から風呂に突っ込むようなことはしない。とある筋からの情報によると、大浴場の裏は雑木林になっているらしく、抜けるのは困難だがそこさえ突破できれば楽園はすぐ目の前だ。ちなみに中をどのようにしてノゾクかだが、……ふっ、やはり考えることは皆同じなのだろう……昨年もここに来た我らの先輩方が、既にノゾキ穴を確保しておいて下さっている。あとは…分かっているな?」


『サー、イエッサーッ!!』


 普段の武谷からはおよそ似つかわしくない作戦ぶりに、その頭の回転をもっとほかの事に生かせと思ってままならない和輝であった。


「武谷軍曹!」


「なんだね中宮准尉」


「先程小耳に挟んだのですが、見た目とは裏腹にかなりの強さを持つと噂の我らが担任浅倉暦が警戒態勢に入っているらしいです。彼女の目をかいくぐることができるでありましょうか」


「ふむ、安心しろ。そのことについては既に手を打ってある」


 おおっ、とみんなの士気が高まる。


「というわけで、任せたぞ和輝」


 ………。

 

 ……。


 …。


「はあっ!? 俺かよっ!?」


「そうだ。お前の身体能力の高さは昼間見せてもらった。お前ならば暦センセーを大浴場から引き離すことが出来るし、捕まることもなかろう」


「ちょと待てこらテメッ! 要は俺に囮やれってことかよ!?」


「がんばれ我らがヒーロー和輝くん!」


「ふざけんなボケッ! なんで俺だけ損な役回りなんだよ! ここは公平にじゃんけんだろ!?」


「ダメだ。この作戦はな、教職員に勘付かれた時点で終わりなのだよ。もし囮が捕まってしまっては、この計画が崩れてしまう…そうならないために、お前の力が必要なのだ!」


「ぐっ、しかし!」


「なんだね和輝くん? 私の命令に逆らうと言うのかね?」


 くっ。何故だ!? 何故だか武谷の言葉に逆らえねえ!


「だーもう分かったよ! やりゃいいんだろやりゃ!」


「ふふふ、期待しているぞ和輝」


 なんで俺がこんな目に……。







◇◇◇







 で。



「……俺、何やってんだろ」


 和輝は大浴場の前に立って、のれんの下に置いてある「ただいま女子貸し切り」と即席で作られた看板を見て、脱衣所のさらに奥での出来事を夢想して、とっても悲しくなった。


「絶対、武谷にうまい具合に乗せられたよな」


 などといまさら嘆いても遅い。さっきまで自分がいた曲がり角を振り返る。既に変態ノゾキ集団は大浴場の裏側に回ろうと駆け出した後で誰もいない。ついでに言えば、この通りに立っているのは和輝だけである。


 ヒュー、と風もないのにそんな擬音が聞こえた。


 てっきり、のれんの前ぐらいに立てば暦先生が飛び出てくるものとばかり思っていたものだから、正直拍子抜けであった。ていうか、虚しい。なんのために自分がここに突っ立っているのかを忘れそうになった。


「まあ、結果的にはこれでよかったのかもな……」


 女子達の裸に興味がないと言えば嘘になる。あのまま武谷達に付いて行けば自分もあれやこれやと言いながらものぞいていただろう。でも、やっぱりそれはダメだろう。人として、そして彼女達の不快感を考えたら、やってはいけない。……ちょっと未練はあるけれど。

 それに、ちょうど一人になりたいと思っていたところだから、この状況はむしろ喜ぶべきことなのかもしれない。和輝は壁に背を預け、天井を仰いだ。目を閉じる。


 ……今は、あまり何も考えたくない。


 視覚だけでなく、聴覚や嗅覚といった感覚を意識的に喪失させながら、和輝は何もない無の世界へ飛び込もうとして、


 突然の殺気に体が動いた。


「うおっ」


 一瞬で感覚をすべて取り戻し前転した和輝はしりもちをついたまま振り向いた。


 …………………………。


 見なかったことにしよう。


「どこ行くん?」


「いっ!」


 慌てて逃げようとした和輝だが、とてつもなく鋭利な声に体が硬直する。そのくせ、首だけはなぜか動いて無意識の内にもう一度振り返っていた。


「女の入浴シーンのぞこうなんて、ええ度胸しとるやんけ、ええ? 神代和輝くん?」


 そこに、愛染高校一年四組担任にして、どう見ても中学生にしか見えない童顔と身長を持つマスコット的存在―――浅倉暦が、どす黒いオーラを発して怪しく微笑んでいた。その背後に、彼女による傷跡であろう、拳一つ分の窪みが壁に。



 以前、武谷がこんなことを言っていた。



『暦先生ってさ、あんなナリだけど実は化け物みたいにスゲェらしいぜ。この学校には二年前に入ったばっからしいけど、そん時からすでに風紀委員ならぬ風紀教師として、柄の悪い連中をボコボコにしてたらしい。一説じゃ、暦先生が来てから素行に問題のある生徒の数が半分以下になったらしいぜ。ま、お前はべつに不良じゃねーから心配いらんと思うけど、気ぃーつけろよ』


 ……ごめんなさい。正直侮ってました。ていうか所詮噂話だと思って信じてませんでした。恐いっす。めっちゃ恐いっす。下手したらアキより恐いかもしれねーっす。


「あーっと……と、とりあえず先生、落ち着けって、な? たぶん先生はいろいろと勘違いしてると思うから、まずは心とその拳を鎮めて、冷静に話し合いましょう!」


 などと口では言いつつ和輝は逃走経路を確保しようとじりじり足を動かす。しかし無敗と噂される無敵の風紀教師浅倉暦(関西人バージョン)はそれをうまく牽制し、気がつけば和輝の背後には壁があった。


 ちょっ!? なんか動きがプロってるんですけどっ!?


 間合いの読み合いなら格闘家である自分が負けるはずないという思惑はあっさりと裏切られた。ロリ教師恐るべし!


 冷や汗がだらだらと背中を伝う中、この場を脱出する方法を必死に模索する和輝をいたぶるように暦はゆっくりと歩いてくる。逃げ道を塞ぐのももちろん忘れない。和輝は泣きたくなった。それでもめげずに何か説得文句を頭の中で並べて声にしようとするのだが、


「神代くん……センセーな、正直失望したわ。新城くんとか、中宮くんとかやったら、まあ予想の範囲内やから納得やけど……まさか、神代くんがこんなやましい行為に走るとは、ほんまにがっかりや。

 でもな、安心し。人は生きてる限りなんぼでもやり直せる。そしてそれは早ければ早いほうがええ……そやから、ウチがあんたを修正したるわっ!」


 交渉の余地、既になし。

 イコール。


 THE END


「いやだーっ! まだ死にたくねえーっ! つかこういうのは武谷の役割だろうがーっ!」


「大丈夫…一発くらったらそれ以降は痛み感じへんから」


「ひぃいっ!」


 予兆もなく飛んできたパンチを和輝はすんでのところでかわす。が、それは計算内なのか続けざまに膝蹴りがすぐ目の前に迫ってきた。なんでこんなとこで格闘戦しなきゃなんねーんだーっ! と心の中で絶叫しつつそれをうまく受け流し、暦の脇をすり抜ける。このまま逃走よろしくと行きたかったが、後ろから回し蹴りが迫る気配がしたので咄嗟に転がってかわす。その際何かをくぐったような気がしたが、気にしてられるわけもない。


 急いで体勢を整え振り向いた先にはすでに拳の連打が殺到する。しかも全部が全部、身長の低い所為による、下から上へ突き上げるような鋭い連撃だ。避けるのも難しく結果的に受け止めるしかないのだが、これが信じられないぐらい重い。マジ痛い。つーか女の拳じゃねえ!


 そんな攻防(といっても和輝が一方的にボコられてるだけだが)がしばらく続いたが、決定的な一撃が入ることなく時間が過ぎ、やがてじれったくなったのか、暦は一旦一歩下がり、スッ――と目を細めると、驚異的な踏み込みとともに右ストレートを放ってきた。とても速いが、視認できないほどでもない。これを受け流してまた後ろに回ろうと思い手を伸ばした瞬間、暦は固く握っていた拳を開き和輝の腕を掴んだ。

 え?――と和輝が呆然とするのも束の間、暦はその体格差をものともせず、流れるような動作で和輝をぶん投げた。


「うぉおおおっ!?」


 やばい壁に叩きつけられる―――そう思って和輝は身を固くしたが、どういうわけか迫っていたはずの壁が突然和輝の進行上から姿を消した。で、何故かがらっという音ときゃっという女性の悲鳴が聞こえた。―――女性?


 不思議に思った直後、来るはずだった痛みが遅れてやってきた。ゴロゴロゴロー、と和輝の体は『濡れた床』を『滑って』いく。ただでさえ勢いが強かった上に摩擦があまり働いていないらしく、体は壁に頭をしこたま打ちつけるまで止まらなかった。


「いっっっっつーっ!!」


 痛みで悶絶したくなるのを気力で押さえ込み、こうなったらとことん足掻いてやると半ばやけになって逃げようとするが――周囲に煙がもくもくと広がっているのに気づいて動きを止めた。


 煙――じゃなくて湯気?

 なんで、こんなとこに湯気が立ち上ってるんだ?

 なんで―――


「―――ッ!」


 ま・さ・か!?


 嫌な予感全開でさっきとは違う冷や汗を流して、ふとさっき自分が打ちつけた壁に目が留まった。よく見たら、これは壁ではない。何かの段差のようだ。その段差の向こうに何があるんだろう、と、何気なく視線を上げて、


「……………」


「……………」


 そこに、衣服はおろか下着すら身に着けていない素っ裸(すっぱだか)の紅美夏が某全顔で固まっていた。


「あ、あはは……」


 何と言っていいか分からず、引きつった笑いを浮かべるしかできない和輝は、よーやくのことで悟った。



 こ こ は 大 浴 場 だ バ ー ロ



 くしゃり、と美夏は表情を歪めた。



 言い訳する暇もなく、和輝は声の裏返った悲鳴と共に頬をぶったたかれた。






〜次話予告〜

ただでさえキマズイ空気がさらにこじれてしまってさあ大変。美夏に合わせる顔があるはずもなく、ふつふつと溜まるイライラに耐えられず和輝は旅館を抜け出す。そんな彼に、多数の影が忍び寄る――。


あんまり真剣じゃないバトルを書くのって意外に難しいです。作者はバトルを書き始めるとどんどんシリアス路線へ移ってしまうので……。

今回も分かる人には分かるネタを入れました。分かる人は「ぷっ」と吹き出してください。感想待ってます!

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