序章:ある少年の物語の切れ端
これは僕が中学生の頃から暖めていたネタです。感想とかもらえるとうれしいです。
「何故だ?」
ギロリと光る獲物を震える手で握り締めながら、少年は困惑したような声で告げる。
「何故お前はそうまでして立ち上がる?」
「分かんねぇ」
それに答えるのもやはり少年であった。彼は血まみれの体を奮い立たせ目の前の敵を倒すために拳を握る。
そこにはもはや力はない。握るだけが精一杯の弱々しい拳。だが彼を取り巻く闘気はむしろその力を強めていった。
「俺にはお前の行動が理解できん。彼女との付き合いはごく短いもののはずだろう? 何年も同じ家で過ごした家族なら分かる。将来の約束さえした最愛の恋人ならまだ理解もできる。だが彼女は違うだろう。少なくとも俺はそう思っている。そんな相手のために何故そこまで命を張れる?」
「うるせぇ」
少年は吹き出る血と共に吐き捨てる。
「理屈じゃねぇんだ。ただ俺はあいつを助けたい。救ってやりたい。守ってやりたい。なんでかそう思うんだよ」
「分からないな。彼女はただのクラスメイトではないのか?」
「そのただのクラスメイトを助けるために命賭けることのどこがいけねーんだよ」
自嘲するように少年は笑い、歌うように言葉を紡ぐ。
「守りたいと思ったらダメか? 救いたいと思ったらダメか?
そんなわけないだろ?
俺は俺が守りたいと思った奴を全力で守る。助けたいと思った奴を絶対に助ける。
甘ちゃんだと笑えばいい。
だがこれだけは言わせてもらう。
それが、俺なんだ。
他の誰でもない、俺自身の確固たる決意。それを犯すことは誰にだってできやしない。
だから俺は何度だって立ち上がるさ。
俺の魂の輝きを、テメェの目に焼き付けてやる」
知らず知らず、己の足が下がることに気づいた獲物を持つ少年は歯噛みする。
「だったら見せてみろよ。未熟な“ソウルマスター”」
「言われなくてもやってやるさ」
少年は駆け出す。
その拳に、己の魂の輝きと、奇跡の力を伝染させて。
◇◇◇
少年は普通の高校生を演じていた。平凡な学生として日々を過ごしていた。
そこに訪れる、隠されていた異常。
あるべきはずの日常を否定され、その存在を形成するものすべてが非日常に侵された時。
少年は、世界を滅ぼす呪文を手に入れる。
これは、そんな少年の魂が練成されていく過程を描く、
心の温もりに溢れた奇跡とファンタジーの物語である。
これから長い時間をかけて執筆していくと思いますが、完結するまでみなさんお付き合いください。感想待ってます。