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Bet the wing!  作者: 宮村灯衣
第一章 雛カラス
5/10

一次試験終了

分割 前編ラストです

「十一番、菅野蓮。跳躍お願いします」


「あいよ、跳べ」


 ストレッチ。身体を伸ばす。


「いよっし!」


 禅に教わったとおりに、跳ぶんだ。


「Flick!!」


 地面を蹴り、猛スピードで跳び上がる。

 失速を確認。


「Flick!!」


 十mあたりで壁を蹴り、また跳び上がる。

 調子がいいからこのままでも一気に上がれそうだけど慎重に行こう。

 大丈夫、跳べる。跳べる。俺は――鴉だ。


「Flick!!」


 十七m地点でもう一度壁を蹴る。そのままビルより高く飛び上がり、着地。


「お見事。えーと、残念ながら記録は破れなかったね。でもランクはS。おめでとさん」


「ありがとうございます!」


 いよしっ! ランクSだっ!

 カードを受け取り潰さない程度で握り締める。

 いける、このままなら!


「はいはーい、跳躍終わった人、ここで降下ねー」


 降下――強化装置を用い、高さ二十mから(跳び)下りる種目。

 命綱? そんなものあるわけない。

 言わずもがな最も危険。


「えー、あー、十一番、菅野蓮です……」


「はーい、心の準備できたらいつでもどうぞー」


 降下に必要なもの。

 まず、勇気。これがないと何もできない。

 そして、強化装置を用いて減速する技術。

 さすがの強化装置も二十mから飛び降りた衝撃には耐えられない。ちなみに十mでもまた然り。


「あー、あー」


「頑張れー。鴉になるなりゃ通らねばならん道だ」


「おう、そうだそうだ。ここから下りられてこそ、鴉になる資格があるんだ」


 他人事だと思って……!


「あぁ、もう!」


 やるしかない!


「Promote!!」


 両手を強化。目を瞑ってビルの模型から飛び出す。


「うっ、うわぁぁぁああ!!」


 下を見ないようにして、ビルの模型に強化した右手を食い込ませ、失速させる。

 やばい怖い怖い怖い怖い怖い。無理。もう無理。マジ怖い。


「Promote!!」


 残り十m。このスピードならそろそろ手を離しても大丈夫だろう。


「Flick!!」


 残り五m。俺は食い込ませていた手を外す。

 一気に加速した。

 残り、三、二、一。


「着地っ!!」


 成功っと。


「し、死ぬかと思った……」


 怖かった、超怖かった。


「…………カード」


「あ、はい」


 平賀教官だ。無口で超有名な平賀教官だ。


「…………Aランク」


「ありがとうございます」


 うん、よかった。あんだけ頑張ってCランクだったら泣くとこだった。

 あとは、早打ちと射撃? さっさと終わらせよう。

 この二つはやればすぐだから。

 ――結局、早打ちはCランク、射撃はAランクで俺の卒業試験、一次試験は終わった。

 あとは、結果を待つのみだ。




『本日正午、一次試験――座学、実技の結果を訓練場前に貼り出す! 見た者はすぐ、訓練場に入るように!! 先輩鴉との対面だ。以上!』


 今日の正午には全部決まってるのか……。寝ぼけながらスピーカーを凝視する。

 まぁ、昼までは自由ってことだしな。二度寝二度寝、っと。

 ぬくぬくとした布団にくるまってごろごろする。


「布団くんと親友になりたい」


 いつでもどこでも俺が近づけば温めてくれる優しい存在。


「おやすみ……」


 その布団くんにくるまれてもう一度眠りについた。




「うわー、ヤバイ。超ドキドキする」


「座学十番。せめて実技十番には入ってますように……!」


「も、もう俺余裕だぜ」


「おま、せめて足の震え隠せよ」


 正午、訓練場前、皆がざわめいているのを一人、木陰から眺める。俺に日光は天敵だからここはちょうどいい。


「お、きたぞっ!」


「うぉ」


「あー」


 教官が大きな紙を掲示板に貼っていく。皆が固唾をのんでそれを見つめる。


「第二十八期生、一次試験の結果だ。見た者からすぐに訓練場に入るように。そして、実技上位三名、座学上位三名は道場前に、残りの者は座学優先で各上位十名は並んでおくこと。それじゃあ、お待ちかねの結果発表だ。各種目のもあるので確認しておくように」


「「「「「はい!」」」」」


 教官が紙の前からどき、パッと目に入ったのは――――、


「菅野、蓮。座学三席……実技十六席……総合、九席……」


 今まで取ったことのないような順位のオンパレードだった。


「俺が、総合九席……っ!」


 いつも、実技を落として赤点だったから、こんなのはこんなのは……っ!


「うぉぉぉぉ!!」


 人目をはばからず拳を突き上げる。


「菅野っ!」


「な、なんだよ飯島」


 吠えたのを見られたのは正直恥ずかしく思わず目を背ける。


「俺は跳躍記録保持者だ。あいつら、停学なり留年なりなったとはいえ、自重しろよ。約束したのお前だからな」


「へーい」


 跳躍選んだのは失敗だったなー。射撃にでもしとくべきだった、うん。

 やっぱり実技総合共に主席は伊達じゃない。


「はいはい、できるだけ自重しますよー」


「嘘だろ! お前する気ないだろ!!」


 そもそも喧嘩売ってくるやつがいなくなるんだからさ、自重もなにもないだろうが。

 そう言うと、飯島はため息を一つついて諦めたように首を振った。


「もういい。ほら、さっさと行くぞ。先輩待たせるわけにはいかないぞ。俺たちゃまだまだ雛カラス、だからな」


「おうよ、これからもよろしくな」


 拳を合わせたそのとき、突然後ろから聞こえた大きい物音。思わず振り返り戦闘態勢をとった。

 そこに、いたのは――――。


「ナオ、俺なんで今日ここに連れて来られてるんだ? 卒業以来初だと思うんだが……何かあるのか?」


「えー、遥斗、僕言ったよ。……たぶん」


「言ってねーよ!! 言われたならさすがに俺も覚えてるわ!!」


 片手にだけ手袋をはめた青年(どちらかというと壮年か?)が眼帯を付けているよく似たもう一人に微笑む。


「今日は卒業試験一時の結果発表日」


「はぁ? ってことは!?」


 木の上から鴉が大空へと飛び立った。

 そして現れた黒い制服を身にまとう青年や壮年の――。


「おい、あれって……」


 鴉……。現役の鴉……。

 俺の、俺たちの憧れ……。


「大丈夫か、菅野?」


「あ、あぁ、大丈夫だ」


 我を忘れていた。思わず、感激のあまり……。


「早く行くぞ。怒られたくないしな」


「はーい」


 返事は伸ばすなと叩かれたが気にはしない。

 訓練場へと一歩踏み出した。

だいぶ見やすくなったとは思うのですが。

ただまぁちょっとどこで切るべきか微妙でして。


これで前編の分割は終わりです。

よければ感想などお願いします。

では次話で。

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