失敗作のAIと壊してしまう少年
ゆるい話。
「くしゅん」
可愛らしいくしゃみをしてしまった。16歳の少年の可愛らしいくしゃみ、誰得。
いけないな、この街にヒトはいないのに。僕以外。
「風邪ですか? マスター」
心配そうに聞いてくる。
本当にヒトみたいな。外見は13歳の少女の、ソレは。
「寒いから、くしゃみをしちゃったんだろうね。気にする必要はないよ、慣れたらしなくなる、本にそう書かれている」
「わかりました」
「うん」
「じゃあ、何か暖かい飲み物をいれますね」
「いや、わかってないよね?」
「♪」
鼻歌、上機嫌に。
どこまでも、ヒトみたいな。
失敗作のAIロボットなのに。
『心』のある、AIロボット。
僕は、お金を定期的にもらう代わりに、コレと一緒に暮らしている。
誰も住んでいない、かつては誰かが住んでいた、この『街』で。
僕と、コレしかいない、故に静かな『街』。
退屈ではない、本があるから。
『アイツの近くにいたから精神が壊れた!』
『また精神病院送りだ』
『誰も住んでいない所に行けば皆満足なのに…』
「僕には、お似合いか」
自虐的に笑む。
僕は、ただ、本に書かれていることを真似するだけなのに。完璧な人になりたいだけ。超能力とかある訳じゃなくて、中身が変わり、顔つきも変わるだけなのに。
失敗作のAIロボットと、壊してしまう僕、お似合いだ。結局はロボットだから、僕がいくら変わっても問題はない。毎日顔つきが変わっても、不気味に思われない。
もっとも、僕はそんな自覚はないが。
「できました! 暖かい牛乳、ホットミルク!」
「ありがとう」
「だまがない」
僕は呟く。
「苦手な人もいるらしいのでっ」
「僕は好きだけどな、だま」
「わかりました、設定を変えておきますね!」
「ありがとう」
微笑んで返す。
そして、
「うん、ぬるくなく、熱すぎず。
美味しいよ」
「ありがとうございます! マスター!」
ヒトから嫌われるのも、なかなか悪くない。
ありがとうございました!




