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「おっ、なんかコレカッコイイかも」
「えぇ~、私はこっちの方が良いわ」
「じゃあコレとコレは俺が貰う」
「じゃぁ私はコレとコレとコレでいいわ」
リックもロッテも遠慮というものを知らず、颯が出したコレクションのすべてを二人で次々と分けていく。いや、もうホント遠慮なく。
確かに颯は一つだけなんて言ってはいないが、普通こういう場合気に入ったのを一つ選んでコレを貰っても良いかとお伺いを立ててくるものじゃないのかと颯は内心で戸惑っていた。
かと言って今さら一つずつしかやる気はなかったとはさすがに言い出しづらく、何と言って窘めたら良いのかと焦り思い悩み始めていた。
「おまえらソレ全部分ける気か?」
「えっ、なんで? だってくれるんだろう?」
「今さら気が変わったからやっぱりやめるなんて言わないですよね?」
「いや、そうじゃないけどな…」
颯は二人の様子にタジタジになり頭を掻くしかなかった。
(まいったなぁ…)
別に颯自身大事にしていた物ではないが、何というかこうも遠慮のない態度をとられるとなんだかあげるのが惜しくなってくる。颯は自分の器の小ささに内心で溜息を吐いた。
「でもそうですね。こんなに貰っても使い切れませんから私はコレだけいただきます」
ロッテは樹木モンスターのダンジョンマスターがドロップさせたユグドラシルの杖を手にしていた。
「そうだな。どうせなら自分で手に入れた方が気分が良いよな。じゃあ俺はコレにする。この剣でこの先俺もハヤテ兄ちゃんのコレクションに負けないくらい色々手に入れてやる!」
リックはどこで手に入れたかも忘れてしまったリックには少し大ぶりな剣を手にした。
颯の考えていることなどバレバレだったのか、二人の変わり身に颯は自分の戦果を自慢したいがために見せびらかしただけような気分にさせられてしまう。
実際双子に自分は凄いのだと自慢したかったのかもしれないし、スゴいと言われたかったのかもしれないと思う。今まで一度だってそんなことを考えたこともなかった筈なのに。
「武器が決まったのだから、私達でもあのはぐれメタルを倒せるかやってみようよ」
「おっ、それ賛成。クリティカルヒットなら俺に任せろ」
「その前にハヤテお兄ちゃん、私にもその解体魔法を教えてください。あと何かスゴい魔法を見せてよ。参考にしたい」
「ぉ、おう、分かった」
こうして颯はすっかり双子のペースに乗せられダンジョン攻略を進め、あっという間にボスフロアへとたどり着いていた。
何しろできたばかりのダンジョンだったので階層がまだ浅く第三階層がボスフロアだったのだ。
双子を連れてボスフロアまで来る予定などなかったのにと溜息を吐きながら颯は期待を込めてボスフロアの中を覗いた。
何しろ散々思い描いてきたスライム系のダンジョンマスターだ。いったいどんな姿をしているのか楽しみだったのは仕方のない事だろう。
ボスフロアの中央に佇んでいたのはメタル系アンドロイドかと言った雰囲気の人型のモンスターだった。なんだかある意味想定内過ぎてちょっとガッカリだ。
「なあ、ハヤテ兄ちゃん。アイツ俺らに任せてくれよ」
「二人だけで倒してみたいです」
ここへたどり着くまで確かに二人ははぐれメタル(仮)をそれぞれ楽々倒せるようにはなっていたが、さすがにダンジョンマスターとの戦闘を二人だけに任せるのはまだ心配だった。
「仮にもダンジョンマスターぞ。二人に何かあったら俺が後悔することになるからダメだ」
「じゃあもし一撃で倒せなかったらその時は諦める。最初の一撃だけ俺に任せてくれよ」
「ねっ、お願い。私も一撃で倒せるのか試してみたいの」
必殺ロッテのお願い攻撃に颯の気持ちが一瞬緩む。ちゃんとサポートをしていれば大丈夫かもしれないと。
「ナビ、万が一の場合二人にも結界を頼めるか?」
「お任せください」
「はぁ…。仕方ないなぁ。本当に一撃だけだぞ。おまえらの一撃を見届けたら俺が攻撃を入れるからな」
「やったーーー!」
「ハヤテお兄ちゃん大好き!」
二人はそう言うやいなやボスフロア内へと駆け出していた。
「クリティカルヒットをお見舞いしてやる!!」
「レインボーアロー!」
カキン!!
ズサッ!!
ダンジョンマスターが動き出す前に二人の攻撃がほぼ同時に入る。
すると驚いたことにダンジョンマスターは膝をついたかと思うとそのままあっさり消滅していった。
「やったね。どうだ俺の渾身の一撃は」
「あら、私のレインボーアローが利いたのよ」
「何言ってんだよ俺が倒したんだ!」
「ふん、リックの一撃だけじゃ多分倒しきれていないわよ」
喜んでいた筈の二人はいつの間にか言い合いを始めてしまうので颯は慌てて止めに入る。
「二人ともスゴいな。俺もびっくりしたよ」
「ハヤテ兄ちゃん見てただろう。俺がアイツを倒したんだよな?」
「違うわ。私がいたから倒せたのよ」
「どっちがじゃなくて二人で倒したんだろう。二人で倒したいと言うから許したのに喧嘩するならこれからは言うことを聞かないぞ」
「ちぇっ、仕方ないなぁ」
「そうね。こんなことで喧嘩しても始まらないわね。それより何をドロップしたのか確かめよう」
「そうだな」
リックとロッテの切り替えの早さに颯は付いていけないとまたもや溜息を吐く。
そして二人はドロップした十五万ゼニーという大金を喜々として折半しテンション高く転移魔方陣へと乗った。
「なぁロッテ、ダンジョンを出たら何を買う?」
「バカね、目立つ買い物はダメよ」
「折角こんな大金を手に入れたのに何でだよ!」
「私達がダンジョンマスターを倒したってパパとママに言えるの?」
「あっ、そうか…」
「しばらくはハヤテお兄ちゃんに隠れ蓑になって貰いましょう。じゃないとダンジョンへ行くのも反対されるわよ。ねっ、だからお願い。良いよね?」
颯はロッテの必殺お願い笑顔に呆気にとられ答えるタイミングを逃してしまうのだった。




