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女神の加護って 最高かよ! でも良いことばかりじゃないんだろ それな。  作者: 橘可憐
旅の終わり?

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「ハヤテ兄ちゃんコレスッゲー旨いよ」


「ホントとっても美味しい~。ロッテのほっぺ落ちちゃいそう」


「本当に美味しいわね。ハヤテ君は私の知らない料理を色々教えてくれるからこれから楽しみだわ」


颯はすっかり大きくなっていた双子に驚いていた。それに颯のことを覚えてくれていたのも嬉しかったし兄と呼んでくれるのも嬉しくて仕方なかった。


「本当ならこんなに新鮮な魚は海沿いの町にでも行かなければ食べられないんだ。マリンもリックもロッテも喜ぶのはいいがハヤテのことに関しては他の者には絶対に秘密だぞ。分かってるな」


颯はここではグランしか知らなかった異空間収納のことをマリンと双子にも打ち明けた。

気分を良くしてあれこれと作りまくったのはいいが、マリンに食材をどこで手に入れたのかを追求され結局話すしかなくなってしまったというのが正しい。


「分かってるよ」


「リックは忘れっぽいけどロッテはお喋りじゃないから大丈夫よ」


「あら、私だってハヤテ君が困ることは絶対にしないわよ」


双子なのに男の子と女の子では随分と性格が違うのか、それともリックはグランの影響でロッテはマリン似ってところだろうかと颯は家族のやり取りを微笑ましく感じていた。


それに異空間収納の秘密は絶対に口外しないと約束してくれたのにもちょっとホッとしていた。

別にもうバレてもいいとは思っていたが、それでももしそうなったらこの家族にも迷惑が掛かることになりかねないと思うとまた心配になったからだ。


折角こんなに歓迎され、この賑やかさを懐かしく感じている間はここでのんびりしたいと颯は思い始めていた。

それにグランがどこか疲れているように見えてなんとなく心配だ。ギルドでの仕事が余程大変なのだろう。できれば少しでも力になりたい。


「なぁなぁ、そんなことよりハヤテ兄ちゃんはダンジョンに入るんだろう? だったら俺も一緒に連れてってくれよ」


「え~リックだけズルいわ。リックが行くならロッテも行く」


「ダメに決まってるだろうが!」


颯が反応するより早くグランが大声を上げていた。


「そうよ、ダンジョンはあなた達が考えてるよりずっと危険なところなの。せめて成人するまで待ちなさい」


「えぇ~~、そんなことしてられないよ。誰もやっつけられない魔物なんだぞ。絶対俺が倒してやる!」


リックはどこかのヒーローのようにグッと握りしめた手を胸に掲げ熱い思いを口にした。


「リックには無理ね。誰も倒せないのにどうして自分なら倒せると思うのよ。根拠のない自信だけじゃ魔物は倒せないのよ。少し考えなさい」


ロッテはリックとは違い案外冷静に考えることができるようだ。


「俺知ってんだよ。だからハヤテ兄ちゃんが呼び戻されたんだろう? ハヤテ兄ちゃん、俺にあの魔物を倒す作戦教えてくれよ。俺なら絶対やれる」


「リックは本当にバカね。それじゃリックの手柄にはならないのよ。ホント分かってないわ。それにハヤテお兄ちゃんがどうしてタダでそんな重要な秘密を教えてくれると思うの。自分でできるのにリックに簡単に教える訳ないじゃない」


颯はロッテのあまりにも大人びた発言に半ば唖然とするしかなかった。


「ロッテ、おまえは手柄が欲しくて魔物を倒すのか。俺は手柄なんてどうでもいい。俺が倒したいから倒すんだよ」


ズビシ! とロッテを指差しそう宣言するリックに颯は驚き何気に少し疑ってしまう。本当にこの子達は八歳児なのかと。もしかしたらこの子達は転生者なのではないかと。


そんな二人の言い合いはいつものことなのかグランもマリンも溜息交じりに聞き流している。


「私はどうせなら有名になりたいわ。そして自分の将来は絶対に自分で決めると決めてるの」


この世界の子供達、特に女の子は信じられない事に親の所有物扱いされている。だから恋愛結婚できる女性は殆ど居ないし、自分の将来を考えることも許されていない。


男は外で働き女は家を守る。その考えの基、成人までに親に当然のように結婚相手を決められてしまうし、貧乏な家は下手をしたらまだ幼い内に売られることも珍しくない。


最もグランやマリンはそんなことをしないと颯は信じているが、実はマリンも親に決められてグランの元へ嫁いできたそうなので、二人がどう考えているのかは正直分からない。


「ロッテ、女の勤めは子を生み家を繁栄させることだ。それが幸せというものなんだ。俺が絶対にロッテに相応しい良い男を見つけてやるから安心しろ」


「あなた!」


当然のようにグランが昭和の倫理観のようは発言をするとマリンが青筋を立ててグランを睨み付けた。


「私はあなたに嫁げたことを不幸とは言いません。幸せだと思っています。しかしもしかしてあなたはこの子達が生まれるまでの私を不幸だと哀れんでいたのですか? あのままこの子達を授かることが無かったらもしかして私はあなたに捨てられてたかもしれないのですか?」


マリンの鬼気迫る様子にグランだけでなくリックもロッテも顔を青くし黙り込んでしまう。


「女の幸せは子共を生むことだけではないと言わせてください。ですから今の発言は聞かなかったことにします。ロッテにはロッテの好きなようにさせます。よろしいですね」


顔を青くしたまま激しく首を上下に振るグランには既に威厳の欠片もなかった。


「じゃぁママ、私がハヤテお兄ちゃんとダンジョンに行くのも許してくれるよね?」


「それとこれとは話が違います」


「大丈夫よママ。ハヤテお兄ちゃんならきっとロッテのことを守ってくれるわ。ママはハヤテお兄ちゃんを信じられないの? 絶対に無理はしないわ。別に奥まで行きたいって言ってるんじゃないの。リックも私もハヤテお兄ちゃんとちょっとダンジョンに入ってみたいだけなの。お願い許して」


ロッテの必殺技なのかお願いポーズで浮かべた笑顔がなんとも可愛らしい。日本で他の女が颯にそんなことをしたらあざといと言って冷めただろうが、なぜかロッテにはそんな感情はまったく浮かばなかった。

例えるなら姪っ子の悪戯を可愛いと見守る親戚の兄にでもなった気分だった。


「はぁ…。仕方ないわね。絶対にハヤテ君の言うことを聞くのよ。無理はダメよ。分かったわね」


「分かってるわよ。そんなの当然じゃない。リックが理解できているかは心配だけどね」


「お、俺だって分かってるよ」


リックは自分の名前が出たことで漸く正気に戻ったのか強がっている発言が颯には逆に痛々しく感じてしまう。男って肝心の所で女には敵わない生き物なのだと。


こうして颯は一度も発言することなくリックとロッテを連れてダンジョンへ行くことが決まってしまうのだった。



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