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女神の加護って 最高かよ! でも良いことばかりじゃないんだろ それな。  作者: 橘可憐
王都にて

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颯が王都近郊のダンジョンを正常化させるために攻略を進めている間にいくつかの魔導具が王都に導入され始めていた。


その一つが魔石街灯で、今までは主要箇所や裕福な家は個人宅で松明を掲げていたが、魔石街灯が整いだしたことで夜でもかなり街中が明るくなった。

この魔石街灯はクズ魔石を使ってもかなりの長時間明かりが持つらしく導入が早かったようだ。


そして既に貴族邸などではろうそくシャンデリアが随時魔石を使った明かりに交換され始めているそうで、近い将来一般家庭の明かりも魔石に変わるだろうということだった。


「随分と急ですね」


颯は自分がアイデアを出してからそれほど時間が経っていないのに話の進みが早いことに驚いていた。


「ハヤテ君が生活魔法を私に教えてくれたお陰ですよ。今ではライトを使える人はかなりいますからね。魔導具にするにもイメージし易かったのでしょう」


今日も相変わらず魔石の買い取りをして貰おうと冒険者ギルド本部の受付に顔を出すと、有無を言わせずユージーンの部屋に通された。


いまだかつてユージーンが不在だったことがない。魔法の講師になったはずなのにいったいいつ教えているのだろうかと颯は不思議に思う。


「それで言ったらコンロや水道もすぐですね」


「そうですね。今のところ調整に苦労をしているようですがすぐに実現できるでしょう」


コンロの火加減調整や水道の水量調整に苦労していると聞いて颯は、それでも実現されるのはもうすぐだと少し楽しみになる。何ならお湯を出せるようにしてくれればもっと便利になるだろうと期待する。


「それで製氷機や冷蔵庫はいつ頃になりそうですか?」


颯が今一番欲しい魔導具は冷蔵庫だった。いや別に冷蔵庫でなくても良いのだが、冷蔵技術が開発されればバターだってきっと露店で売られる日が来るだろうと期待を大にしている。


バターがもっと手に入れば今まで貴族様しか食べられないとされていたクッキーだって颯は自作できるし、パウンドケーキも美味しく作れる。この間手に入れた小麦粉を使ってパスタに挑戦しても良いだろう。


露天商から手に入れたバターはトースト以外にジャガバタ、イカバタ、ハマグリバターとつい調子に乗って食べていたらあっという間に残り少なくなってしまった。バターと醤油の相性の良いのも困りものだ。

なので是非冷蔵技術だけでも早く発展させて欲しいと颯は心から願っていた。


「ハヤテ君、そもそもですね氷を魔法で作れる人が居ません。この国はありがたいことに気候が穏やかなので氷を知る人が少ないせいもあるのでしょう。イメージがしにくいようです」


颯はユージーンの言葉に愕然とした。

地球では雪が降らない暖かい国の人であっても情報を手に入れる方法はいくらでもあるし、なんなら旅行をする事で体験することもできるだろうが、この世界の一般人はそもそも情報を噂でしか手に入れられないのだった。


たとえば情報として知っている貴族様であっても実際に目にした事のある人は少ないだろう。だとしたら自分で目にしたことの無い物をイメージしろというのはどう考えても無理だ。


「じゃ、じゃぁ…」


颯は無理なんですねと言葉にしようとしてふと閃いた。雪や氷を実際に見せれば良いのではないかと。


「イメージができるように実物を見せれば良いんですね?」


「それが手っ取り早いですが、そうなるとハヤテ君が直々に教えることになりますがよろしいのですか?」


今まで颯の存在を貴族などに極力知られる事のないようにしてくれていたユージーンは伺うようにして颯の返事を待った。

今一番颯を利用しているのは紛れもなく貴族となったユージーンだとはまったく自覚していないようだった。


颯としては別にもうそこまで隠れる必要も無いとは思っているが、それでもやはりダンジョン以外で自分から目立ちに行く気はさらさらなかった。


「直接に教える必要は無いでしょう。氷を実際に作って見せますよ」


「ですが、ティーカップの氷などすぐに溶けてしまうではないですか。開発部の者達の前で作るしかないですよ。本当によろしいのですか?」


颯がこの前ユージーンに見せたのはティーカップに入れた小さな氷だったので、実際ユージーンが言うように紅茶を冷ましすぐに溶けてしまった。


しかし颯はしばらく溶けないだろう大きな氷を作る事だってできるのだ。それこそ氷の彫刻を作れるくらいな大きな氷だってだ。だから何の問題も無いというのをユージーンは理解できていないようだった。


なので颯は異空間収納から桶を取り出すとそこに大きめな氷を作りユージーンに見せた。


「これよりもっとずっと大きなものも作れます。これでしばらくは溶けないでしょう。それにこうして削ると食べることもできるんですよ。シロップを掛けると甘くて美味しくなるんです」


颯はナイフで氷の表面を削りかき氷を作ってみせる。


「こ、これはまた…」


「場所を指定してください。そこに氷を作ります。是非開発部の方々に見せてあげてください」


「私はまだまだハヤテ君を侮っていたのですね。ダンジョンで天災を起こしたと噂は耳にしましたが、冒険者達のいつもの大げさな噂だと思っていました。実際に部下達に聞いてもたいしたことは無いと言っていましたし…。しかしハヤテ君は毎回大量の魔石を入手してくるのしたね。それも私の部下達全員がかりでも到底及ばない量の魔石なのですから考えてみればすぐに分かりそうなものなのに…。私の目はいつの間にか曇り考えがいびつになっていたようです。本当に申し訳ありませんでした。私も部下共々もっと鍛錬に励まないといけませんね」


ユージーンが深々と颯に頭を下げるのを見て颯はなんとなく良かったと胸を撫で下ろした。これからは少なくとも颯を利用しようと画策することは無くなるだろうと。


「僕も約束通りしばらくはダンジョンの正常化に専念させて貰います」


そうそうポーションの無心をされるのは困るという意味で颯は敢えて予定を口にした。

そしてその後冒険者ギルド本部の裏庭に氷山かというような大きな大きな氷を作り、冷凍冷蔵技術の発展を願って冒険者ギルド本部をあとにするのだった。



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