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女神の加護って 最高かよ! でも良いことばかりじゃないんだろ それな。  作者: 橘可憐
王都にて

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「噂がスゴいことになっていますよ」


颯は家が決まった報告と先日ダンジョンで得た魔石を買い取って貰おうとユージーンを訪ねてみると、ユージーンの第一声がそれだった。


「なんですかそれ?」


「ダンジョン内で天災を起こし魔物を一掃した者がいる。あれは女神が使わせた使者に違いないともっぱらの噂です。そんなことをできるのはハヤテ君しかいませんよね。しかし随分とハヤテ君らしくないことをしたものだと感じたのですが何か心境の変化でも?」


颯が引ったくり少年と絡んできた冒険者の前で使った派手な魔法は天災だと思われたらしい。ちゃんと魔法名も口にしていたし魔法だと説明したはずなのに解せない。


本当に噂などいい加減なものだ。面白おかしく大げさに話し話題の中心になれれば何でもありなのだろう。颯はもう顔も忘れてしまったがあの冒険者達に今度あったらどうしてくれようとちょっとだけ怒りを覚えていた。


しかしそんなことは一応想定の内だったので今さら颯には目立ってしまったなどという後悔はなかった。


「あああれは、正直ユージーンさんの部下らしき人達の態度に少し苛立っていたせいだと思います」


「何か失礼なことでもしましたか」


「失礼というより随分と偉そうでした。ユージーンさんに頼まれて来たと言っても納得してくれなかったので仕方なくといった感じです」


「偉そうでしたか…。そのような報告は受けていないのですがね」


「それと一つ気になったのですが、魔法使いの集団ではこの先の攻略は難しくないですか」


颯はユージーンの部下達の戦い方を見ていて思ったままの感想をユージーンに伝えた。あれでは階段をバックにした戦闘しかできないだろうと。

そしてせめて他の冒険者達に協力して貰らうなり魔法使いを守れる体制を整えるなりの方法を考える必要があるのではないかと助言してみた。


「他の冒険者との協力は難しいですね」


「どうしてです? 協力が難しいなら雇うことを考えてもいいんじゃないですか」


「私の部下達には元々魔法を使うことのできた貴族も多いのですよ。ハヤテ君の話を聞いていまだにプライドが捨てきれないのだと良く分かりました。報告が上がってこないのもそれが理由でしょう。だとしたら一市民である冒険者との協力など今はまだ絶対に無理ですね。ハヤテ君の意見を参考にさせていただき私も何か考えてみます」


颯はあのやたらと偉そうな態度の理由が分かり納得してしまう。そしてやはり宿舎になど入らなくて良かったと心から思った。

それに攻略が進まなければどうしたって改善されるのだろう。


「ユージーンさんも色々考えているでしょうに僕も余計なことを言ってしまいました。聞き流してください。それよりもまた魔石を買い取って欲しいのですがよろしいですか?」


「勿論です」


颯はユージーンの快い返事を聞き遠慮無く異空間収納から魔石を取り出していく。


「ちょっと待ってください。この間あれほど買い取ったのにもうこんなにあるのですか!」


「ダンジョンの下層を一掃したらこんなのは当たり前ですよ」


「魔石を落とす確率は高いとは聞いていますがこれほどですか…。いったいどのくらいの魔物を倒したのかと驚くのも今さらですね」


颯は魔物のドロップ品を今は全部魔石に設定してあるので魔石ドロップ率が百%だということをうっかりしていた。それでなくても魔物数も多いのに驚かれて当然だ。


「ハハハ…」


颯は詳しい説明ができないので笑って流すしかなかった。


「魔石がこれほどあるのなら当然ポーションもかなりの数を保有しているのではないですか?」


ユージーンは何やら目を血走らせ掴みかからん勢いで詰め寄るので颯は思わず体を引いてしまう。


「あったらどうだというのです?」


実際はナビの異空間収納に各種一本ずつと颯の異空間収納に念のためにと何本か入っているだけなので、たとえユージーンに譲ってくれと言われてもそう何本も出せない。


「なかなか出回らなくて困っているんです。是非あるだけ譲ってください。お願いします」


ユージーンは何やら切羽詰まった様子で颯に拝み倒す勢いだ。


ポーションはドロップ率もそう良い方では無いし、冒険者達も手に入れたら念のために持っておきたいと考えるだろうから余程現金が欲しい場合でない限り売りに出されないのも納得がいく。


それに多分ポーションを一番必要とするのは冒険者なのだから別にそんなに出回らなくても困る人も少ないだろうと颯は思う。


「そんなに手に入れてどうするのです?」


ポーションが多く流通すれば買い取り価格が下がり、結果損害を被るのは冒険者達だ。

もっとも売っても二束三文となったら、自分達で使おうと考える冒険者が増えるからそれはそれで良いのかもしれないのだろうけれど。


それにしても魔石は魔石研究のため魔導具開発のためと思えば颯も遠慮無く入手し売ってきたが、ポーションを大量に入手し売り払ったら市場崩壊を起こしかねないと思えばそう簡単にできる訳もない。


「ハヤテ君はこの世界の医療の現状をご存じですか?」


「いえ、全然」


興味も無かったとは口にはできなかった。実際今まで颯の周りに病気を患った人など一人もなく過ごしていたせいもあるだろうがあまり気にもしていなかった。


「病気の原因を解明しようと魔物を解体しながら学ぶ者が増えました。そして病気を広めないために衛生にする必要があることも突き止めました。しかしまだまだ薬や呪いに頼る者が多いのが現状です。グランや私の使う回復魔法も呪いの一種と思われています。そんな中ポーションは奇跡の水として貴族共が騒ぎ始めたので市場に出る間もなく争奪戦が起こっているのです。そこで私はあのポーションを薬師達の手によって作れないかと考えているのですよ。貴族特権でしか手に入れられないなどあってはいけないのです。しかし研究材料にしたくても手に入らないのでとても困っていたのです」


ユージーンの言い分は良く分かった。魔石同様ポーションも研究させ自作できるようにしたいというのだろう。しかし颯にはなんとなく覇権争いの道具にしたいと言っているようにしか聞こえなかった。


魔導具開発では国王に話を持って行ったのが失敗だったと言っていた事を考えると、今度は出し抜いてやろうと思っているのではないかと。だとしたら颯は体の良い道具と考えられているようでなんとなく面白くないと思ってしまう。


「別にポーションに頼らなくても医学の進歩を試みている人は居るのですよね。それに薬師達だって病気に効く薬を研究しているはずですよ。そこにわざわざポーションを持ち込み研究させる意味が分かりません」


ポーションだけでなくハイポーションやエクストラポーションにエリクシルなんて言う万能薬も持っているなどと口が裂けても言えないと颯は思ってしまう。


そうしたら今医学の進歩に努力している人達の苦労など顧みられることも無く、この世界は本当にポーション頼りになってしまうだろう。


誰にでも安く手に入れられるのなら問題ないだろうが、絶対にそこに利権が絡み価格は操作され結果財力のある人だけが病気や怪我を治せる時代到来だ。


「ハヤテ君はポーションの可能性を正しく理解していないのではないですか?」


颯はここでユージーンとポーション談義を展開する気はさらさらなかった。考え方は人それぞれだ。颯の考えを押しつける気もない代わりに押しつけられるのもごめんだ。


とは言ってもトルストにユージーンとの付き合いは大事にしろと言われたばかりなので、ここで逆らい揉める気もない。


「買い取ってくれるというのでしたら何本かは用意できますが、そんなに多くを期待されても困りますよ」


「ええそれで構いません。ありがとうございます。お礼と言ってはなんですがハヤテ君にはここ冒険者ギルド本部の特別職員として職員証をお渡しします。これからは私が居なくても受付で魔石やポーションの取引ができるようになるので便利ですよ。身分証にもなりますし」


「身分証ならこのギルド証がありますけど」


颯は腕に嵌めた銀の腕輪を触りながらユージーンに確認する。


「ああそれとは別物ですよ。この冒険者ギルド本部の身分証となったら他の冒険者ギルドのギルド長より階級が上という扱いになりますから、ギルドで提示すれば待遇はかなり変わります。それになんなら貴族と口を利くのも可能になります」


貴族と口を利けるようになると言われても颯はなんだかそれはそれでとても面倒くさそうだと思うが、これからわざわざユージーンを訪ねなくても受付で取引ができるのは便利だと考え大人しく受け取ることにした。まぁ当面ここでしか使う気などないが。


「ありがとうございます。ではこれからポーションを手に入れる事があればこちらの受付にお持ちします」


颯は敢えて売る気はあるが今は持っていないのでという体を装いポーションを二本ユージーンに手渡した。そしてこれからも気が向いたら手に入れて時々売れば良いだろうと考えていた。


「本当にお願いしましたよ」


ユージーンに熱く両方の掌を握られ祈るようにされたが、颯はユージーンもすっかり貴族になってしまったのだなと内心で溜息を吐いていた。



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