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女神の加護って 最高かよ! でも良いことばかりじゃないんだろ それな。  作者: 橘可憐
王都にて

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颯が家を探しにオフィスを再度訪ねたのはまた来ますと言ってから実に一週間が経過していた。

ドアの前に立ちノックしてから颯はそう言えばここの主の名前も聞いていなかったし自分も名乗っていなかったと思い出していた。


「どうぞ」


前回と同じく抑揚のないやる気のなさそうな返事を聞いてから颯がドアを開けると、驚いたことに颯が書類を分類し整理した場所がそのままになっていた。


「すみません。また家を探しに寄らせて貰いました」


「ああ、君か…」


声で颯だと分かったようなので颯は遠慮無く物件関係の書類を漁らせて貰う。前回整理したので足の踏み場もあるしゆっくり座り込める場所もある。


リングファイルのことはすっかりどうでも良くなってしまったが、書類を分類して整理しておいたので目的の書類はすぐに探すことができるからまぁいいだろう。

颯がそんなことを考えながら書類に手を掛けるといきなり肩を掴まれた。


「君に頼みがある」


「なんでしょう?」


颯はなんとなくこのパターンに慣れて来た自分を感じていた。もう以前のように身構えることもなくなり警戒することもなくなっている。

嫌だったら逃げれば良いし無理だったら断ればいいそれだけのことだ。


「実に見事な整理術だ。是非この部屋全部を頼みたい」


まさかの掃除依頼だった。しかし見事な整理術と言われるほどのものでもない。木箱をカラーボックスのように積んで分類した書類を入れただけの簡易的な整理整頓だ。本当ならリングファイルにファイリングしてもっと分かりやすく棚にきちんと並べたい。


「でもどこに何があるかは全部覚えているんですよね? 僕が整理してしまったら困るのでは?」


「それはこの状態だから仕方なくだ。整理できているならそれに越したことはない。今まで何人か人を雇ったこともあるが誰もこんなに見事に整理した者は居ない。まぁその前に逃げ出されることが多いがな」


「ご自分で整理すれば良いのでは?」


「それができればやってるわ。この私にできない唯一のことだ」


日本でもものぐさなのではなく整理整頓ができない人が居るとは聞いたことがる。颯にはそれがどうしてなのかなんて理解できなかったので聞き流した情報だったが、まさかこの世界でそんな人に出会うことになろうとは思ってもいなかった。

記憶力はいいのだろうからきっと何かの障害の一つなのだろうと颯はなんとなく男の目を見詰めていた。


「で、どうなのだ。引き受けてくれるのか?」


「引き受けるのはいいですが僕はずっとは面倒見切れませんよ。ですから誰か雇ってください。僕がその人に整理術を伝授します。そうすれば問題は解決ですよね」


この前来たときもユージーンの紹介状を読んだら放り投げていたのだから、きっとこの先も永遠に散らかり続けるのだろう。その度に片付けに来るなんて颯には無理だ。


「まあ妥当だな」


「取り敢えず今日は家を探させて貰います。整理のことは人が見つかってからという事で後日でいいですか?」


「明日だ。明日までに用意しておく」


余程切羽詰まっているのか颯に強く詰め寄ってくる。しかしそんなに簡単に人が見つかるものだろうか。それに用意しておくって言い方もちょっと気になる。


「いいですけど大丈夫なんですか?」


「使えそうなヤツのあてはある。大丈夫だ」


なんだかいちいち口の利き方が颯の気に障る。偉そうな雰囲気はないのにまるでどこかの腹黒い貴族のようだ。

颯はこの人はきっと友達少ないのだろうなと他人事ながら心配になる。颯もけして多い方ではないのだが。


「僕はハヤテといいます。よろしくお願いします」


「ああそう言えば名乗っていなかったな。人の名前には興味が無くてな。私はトルストだ」


颯はトルストの自己紹介に興味が無いのは人の名前ではなく、人そのものなのじゃないのかとなんとなく感じていた。


そして颯は翌日から約束通り四日掛けてトルストが連れてきたマルクという少年に整理の基本を教えながら部屋を綺麗スッキリと片付けた。


それから家は街の外れにあるかなり古い石造りの家を借りることにした。出るときに現状通りにするなら部屋を自由にしていいというのと庭がやたらと広かったのが決め手。

王都の中心からはだいぶ遠いので少々不便だが庭には自由度の高い小屋もあったし色々できそうだ。


勿論部屋を綺麗にしたお礼として手数料その他はまけてくれたが、元々颯が出す訳ではなかったのでその辺はどうでも良かった。

それよりもこの世界の法律など聞けば教えてくれるのが颯にとってかなり役に立った。


ダンジョンは誰の物でも無いと颯は思っていたが本来国や領主など持ち主がちゃんと居るそうだ。

なので持ち主が取り上げようと思えば冒険者の得た利益を税金としてむしり取ることも可能らしい。ただそれを知る者が少ないだけなのだとか。颯は悪徳領主がその法律を知らなかったことに感謝した。


あと国ももしかしたらあまりにも古い法律なので忘れているのか敢えて広めないかなのだろうとのことにちょっと驚きだった。

国はダンジョンで得る利益に関心が無いのかと思ったが、魔物が落とすのは殆ど現金なので正直に申告する者が少ないのが理由だろうとのこと。


しかし近い将来ダンジョン所在地の冒険者ギルドでしか魔石やアイテムの取引ができなくなり、その取引に税金が絡むようになるだろうとトルストは教えてくれる。


それを聞いて、一度に買い取って貰えるよりはるかに多い量の魔石を毎回手に入れている颯は焦った。これからはダンジョンにいるより多く街に滞在しなくてはいけなくなると。


「今すぐにという訳ではない。それに抜け道もある」


「えっ、どんな?」


「ハヤテはユージーンとは懇意にしているのだろう。あそこでの取引は見過ごされる。付き合いは大事にしておくといい」


「なるほど、冒険者ギルド本部ですね」


颯はなんとなくインサイダー情報を得たようなそんな気分になる。しかし後ろめたさよりお得感を多く感じトルストとの出会いに感謝し、これからもこの世界の法律をあれこれ聞いてみようと思うのだった。



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