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女神の加護って 最高かよ! でも良いことばかりじゃないんだろ それな。  作者: 橘可憐
王都にて

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「カ、カッコイイ…」


颯はリザードマンといったら屈強な戦士くらいの知識しか無かった。

某有名なファミコンゲームで兜を被り剣と盾を持ったリザードマンと出会ったのが最初で、そのイメージが幼い頃に強烈に脳裏に焼き付いたままだった。


なので魔法を使うリザードマンや大斧を使うリザードマンには少し戸惑ったが、手甲鉤を拳に嵌めた体術特化のリザードマンにはかなり感動した。まるで忍者のようだと。


そしてありがたいことにその体術特化のリザードマンがダンジョンマスターだったこともあって、ドロップ品にリザードマンの手甲鉤があったのを颯は今回ばかりは飛び上がって喜んだ。やっと自分に使える武器ができたと。


理想は双剣使いとか暗器を扱う忍者や暗殺者に憧れている。

とは言っても、颯は日本に居た頃も体術なんて習ったことは殆ど無い。仕方なく入った部活で柔道をちょっと囓った程度だ。

だからたとえ知識にはあっても実践した事なんてまったくないので多分絶対体が思うように動かないだろう。今さら鍛える気にはならないし。誰かに師事するのも面倒だ。


しかしそんなの全然関係ない。なぜなら颯は手甲鉤を拳に嵌めたからと言って体術で戦闘するつもりはまったくなく、手甲鉤から魔法を放つ予定だ。


颯が振るう腕の動きに合わせ手甲鉤の四本の爪から魔法が飛んでいくのを想像するだけで脳汁が溢れそうなほど興奮する。きっととても強烈な必殺技でも使っているような気分になれるだろう。


「ナビ練習に付き合え」


颯はダンジョンマスターがリポップする間他のリザードマンでイメージ通りの魔法を放つ練習をする事にした。


既に殆どの魔法は颯のイメージ通りに発動できるがそうじゃなく、大事なのは手甲鉤から必殺技のように飛んでいくことで、手甲鉤から必殺技のように飛んでいくのが重要なのだ。

大事なことなので二度言ってみた。


かまいたちのような風の刃が四つの爪から飛び出し相手を切り裂くなんてそんな基本的なものではなく、もっと派手で威力の高い魔法が展開されたら最高だろう。まぁでも、基本は大事なのでまずは風の刃から練習するけどね。


颯はかなり夢中になりあれこれと試しながら練習していく。しかしどれもこれも颯が思っていたほどに格好良くはなく、なんとも地味な感じなのに自信をなくしていく。


基本のかまいたちのように魔法を飛ばすのがやはり一番しっくりしていて、次いで投網を放ったように見える雷魔法がちょっと派手と言ったところだ。


「う~ん…。何がダメなんだ? 何が足りない? 俺は何かを間違えてるのか?」


「颯様はいったい何をお望みですか。私には十分凄いと思えます」


「そうか?」


「はい。かなり相手の意表を突いてますし威力も申し分ないと思われます。それ以上何をお望みなのか私には理解不能です」


颯はナビに理解不能と言われ自分でも何を求めているのか良く分からなくなる。


(必殺技と言ったら戦闘の最後に決める一撃必殺の奥義なんだよな。かめはめ波とかゴムゴムパンチとか…)


「そうか分かった! ネーミングだ!!」


「ネーミングですか?」


「そうだよ。見た目も大事だがやっぱり技の名前を叫ばなくちゃ必殺技とは言えないんだよ。俺は重要な事を忘れてた」


「重要ですか」


「そう、とても大事なことだ。俺と言ったらコレみたいな、それが必殺技だ」


颯はそうは思いつくが、しかしなんとも自分にネーミングセンスがあるとはまったく思えなかった。

ときどき気分で口にする魔法名だって言わばゲームや小説からのパクりだし。


「困った…」


必殺技っぽいカッコイイ名前と思えば思うほどまったく思いつかない。しかし忍術を意識した名前をあれこれ考えていてどうにか思いついたのが『一閃飛蒼月』だった。


手甲鉤から放たれた三日月型の魔力が電光石火の早さで飛んでいく様子をイメージした名前だ。

その魔法がどんな形で発動しようとすべて一閃飛蒼月だ。それがたとえ解体魔法であったとしても。


颯は三時間も掛けて考えた名前に満足すると、必殺技を口にするのを意識しながらリザードマン相手に戦闘を続けた。実に楽しげにご機嫌で。


しかし一閃飛蒼月を口にするのを意識すると魔法の発動が遅くなりなんとも間抜けな感じがいただけない。あくまでもスマートに格好良くを意識して何度も何度もやり直す。


そうして絶妙なタイミングで発動できるようになるには少々時間が掛かったが、颯はどうにかダンジョンマスターのドロップ品をコンプリートするまでに必殺一閃飛蒼月を身に着けることができた。


それにダンジョンマスターがドロップしたリザードマンの革鎧も鱗っぽくなく派手でもなくとても軽いところが颯はちょっと嬉しくなりさっそく着用する事にした。

こうして近接戦士に見せかけたまさかの魔法使いが誕生したのだった。



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