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女神の加護って 最高かよ! でも良いことばかりじゃないんだろ それな。  作者: 橘可憐
王都にて

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「残念。さっさと次へ行きましょう」


なんとなく予測はしていた。第六階層は魔物の数が多いとは言え颯の体験上驚くほどでもなく、第七階層も言うほど溢れている感じはなかった。なのでもしかしたらこの階層は以前冒険者が足を踏み入れていたのではないかと。


だから第七階層に居た魔物を一掃させ出現したのがモンスターではなく魔物だったことはそれほどショックでもなかった。


しかし第八階層に降りて颯は途端にテンションが上がる。明らかにモンスターハウスと化しているのが見て取れたのだ。


「これは期待大ですね」


颯が少年と冒険者達を振り返りニコリと笑うと、少年と冒険者達は揃って青い顔をして激しく頭を振ろうとしていた。


口から下尾てい骨の辺りまでしっかりと拘束し固定しているので絶対に無理なのだけれど、颯にはなんとなく分かる。なんだか疲れ果てている感じもするし。


「いつまでもそうしているのも申し訳ないですがもう少し我慢してくださいね。今この魔物達を一掃させたら解放しますから」


颯の解放宣言になぜか少年も冒険者達もさらに顔を青くする。だが新たに湧くモンスターと対面すればきっと喜んでくれるだろうと颯は少年達の反応を無視して魔物を一掃していく。


最近は魔物の殲滅の早さから効率を考えスーパーノヴァばかりを使っていたが、今日はなんだか気分も良いしツレも居るのでサービス精神を発揮して見て分かりやすい魔法をガンガンに使っていく。


「テンペスト!」


激しい嵐がダンジョン内に吹き荒れる。


「ファイヤーサイクロン!」


激しい炎を纏った竜巻がダンジョン内を移動していく。


「ビックウェーブ!」


超巨大津波が魔物を押し流す。


「ダイヤモンドダスト!」


氷の粒が一瞬で魔物共々空気までも凍らせる。


魔法名は颯が小説などから仕入れたものを適当に言っているだけで、本来は念じるだけで発動する。勿論強さや規模も調整可能。

しかし今回は少年に戦う術を教えるという意味もあってわざわざ口にしていた。かなりの大サービスだ。


そうしてダンジョン第八階層に居た魔物を一掃させ、颯はワクワクした気持ちでマップウインドウを見詰めモンスターが湧くのを待った。


「おっ、湧いた。ちょっと急ぎましょう」


颯はマップウインドウに表示された赤い点を目指し少年と冒険者を引き連れ急ぐ。


「やった! リザードマンだ!!」


以前爬虫類系のモンスターが湧いたダンジョンがあったが蛇ばかりだった。バジリスクなんて猛毒を使うヤツやメドゥーサなんて石化を使う厄介なヤツも最下層の方に居たが面白みが何も無かった。何しろ蛇だし。


しかしリザードマンは言わば戦士だ。きっとその高い戦闘能力を見せてくれることだろう。主に少年や冒険者達に。


そしてリザードマンの出現に喜んでいたはずの颯はついうっかりいつもの癖で解体魔法を使い一瞬で倒してしまう。


「ああ、すみません。今使ったのは解体魔法と言って多分僕にしか使えない魔法です。これからこの階層にはさっきのリザードマンが次々と湧きますから皆さんも自分達の戦い方で頑張って倒してくださいね」


颯が一反木綿グルグル巻き魔法を消し少年と冒険者を拘束から解くと、みんなはなぜか座り込んでしまう。こんな場所で座り込んでいては危険だと理解していないのだろうか?


「あっそうだ、忘れてました。魔法を覚えたいのなら冒険者ギルドで教えているそうですが今回は間に合わないでしょうから武器を貸します。頑張って戦ってください」


颯はナビの異空間収納で肥やしとなっているモンスターのドロップ品の武器の中からゴブリンの剣を取り出して貰い少年に手渡した。大きさと軽さから考えて多分彼には使いやすいはずだ。匂いもないし。


「……」


少年はお礼も言えないようだ。というか疲れ果てて口を利く元気がないのかもしれない。


「そう言えば僕たちをダンジョンに連れ込んでどうするつもりでした? 本当に荷物持ちをさせるつもりはなかったですよね。だって二人も荷物持ちが必要には思えませんでしたし。まさか僕たちをおとりにでもするつもりでしたか? 僕たちが襲われている間に魔物を倒すとか。そんな姑息な手はここでは使えないですよ。あなた達も頑張ってください」


颯は少年の次に冒険者達に向かってニコリと笑顔を向けるがやはり冒険者達からの反応はない。ひたすら苦しそうに肩で息をするばかりだ。


「そうそう、急がないとここもどんどんモンスターで溢れることになりますよ。僕はまだ下を目指しますので戻るなら転移魔方陣まで急いだ方がいいですよ」


再度モンスターハウス化するのは何年後かは知らないが、一応脅しておこうと颯は大げさに言ってみた。

臨時パーティーはここで解消だ。転移魔方陣はダンジョン下層に続く階段傍に設置されているのでここからだと第七階層に続く階段を上り利用した方が早いだろう。


颯が第九階層へと続く階段方向に向かい歩き出すとなぜか少年が付いてくる。口を利く元気もなかったはずなのに。


「臨時パーティーは解消しましたよ? この先は僕の自由にしますから付いてこられても責任は持てませんよ」


今さっきまでも颯の自由にしていたし、少年が上に行こうが下に行こうが責任を持つ気はなかったが一応念を押しておく。


「ここまで連れてきた責任を取れ。俺に戦い方を教えてくれるんじゃなかったのか」


「稼げる方法を教えると言ったのです。魔物を倒せば少なからず現金が手に入ります。それに戦い方はさっきまで十分見せたじゃないですか。あとは自分なりに考えて自分に合った戦い方を見つけてください」


「逃げる気か!」


「はぁ…。逃げるも何もないですよ。僕には君から逃げる理由などないし、君に対して責任を負わなくてはならない理由もない。そうそう、そのバッグどうせ中身は空ですから君にあげます。あとそれとこれも」


颯は責任がないと口にはしてみたが、確かに強制的にここまで連れて来たのは悪かったと少しだけ思い始め、ゴブリンの剣を貸すと言ったがどうせいらない物だしあげることにした。ついでにゴブリンの鎧も。


「地上に戻ったら売ってしまっても構いませんよ。どうせ僕にはいらない物ですから」


アイテムリストには既に載ってるし、イメージ的にも本当にいらない物だ。廃棄処分するのに丁度いい理由ができた。


颯はこれ以上付き纏われても面倒だと少年がゴブリンの鎧に注意を引かれているうちに全速力で走り念のためステルスモードを展開させる。


少年の逃げ足の速さを身をもって知っている颯は、今のまだそれほど魔物の湧いていない状況なら問題なく転移魔方陣まで行けるだろうと確信していた。それにあの冒険者達から逃げるのはもっと簡単だろう。

だからあの少年ならきっと自力で戦う術を身に着けられると颯は信じたかった。


《よろしいのですか?》


《何が?》


《ユージーンさんに触発されて弟子でも取るつもりかと思いました》


《そんな訳無いだろう。俺の相棒はナビだけで十分だ》


十二年後に日本に戻ると決まっていなかったなら仲間と呼べる存在を作る事も考えたかもしれないが、別れの日が必ず来るのだと思うと到底そんな気にはなれなかった。


それに日本でも心から信頼できる友達は数少ないのに、この異世界でそう簡単に見つかるとも思えない。

颯はいつも助けてくれ心を許せるナビとの二人旅が本当に気に入っていた。


《お任せください》


颯はナビが何をどう任せろと言ったのかまったく理解できなかったが取り敢えず下層を目指すのだった。



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