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女神の加護って 最高かよ! でも良いことばかりじゃないんだろ それな。  作者: 橘可憐
王都にて

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「すみませんユージーンさんはいらっしゃいますか」


颯は冒険者ギルド本部の高級ホテルのロビーかと言った雰囲気にドキドキしながら、受付に立つ紳士然とした男性に恐る恐る声を掛ける。


マップでしっかりと確認してから入ったのでここが冒険者ギルド本部なのは間違いないのに、なぜか今までの街にあった冒険者ギルドとはまったく違った雰囲気に間違いかもという疑いは捨てきれずにいた。荒っぽそうな冒険者の姿も全然見当たらないし。


「申し訳ございません。お約束はありますか?」


約束がないと会えないほどユージーンは忙しいのか、紳士の態度にはまったく表れていないが追い出す気満々なのを颯はなんとなく感じ取っていた。


確かに約束はしていなしかなり待たせてしまったのでここで追い出されても仕方ないのだけれど、それではわざわざ冒険者ギルド本部へ出向いた意味がなくなる。他に行きたい所は沢山あったのに。


しかしぶっちゃけ追い出されたらそれなりに王都を楽しんで、またダンジョン攻略に戻ろうかと思いながら一応言うだけのことは言ってみることにする。颯にしてみればここで追い出されたらそれはそれでラッキーといった感じだった。


「はい、王都に来たらこちらを訪ねるようにと言われています」


「失礼ですがお名前をお伺いしても?」


かなり怪訝そうな眼差しを向けられたことを感じて颯はすぐにでもここを立ち去りたい衝動に駆られる。


「ハヤテです。お忙しいようならまたあとで伺います」


颯はあとで訪ね直す気などさらさらなかったが社交辞令的な言葉を付け加える。約束した以上一応訪ねたという事実は必要だろう。しかし気持ち的にはここを出たらまずは王都のどこへ行こうかと考え始めていた。


「ハヤテ様ですか!」


紳士は颯の名前を確認すると、声を荒げることはなかったがかなり驚いた表情を見せるので颯も同じく驚いてしまう。いきなりの豹変である。


「…はい」


「しょ、少々お待ちください。今ユージーンさんを。いえ、ユージーンさんの部屋へご案内します」


紳士然とした男性の狼狽えぶりに颯も思わず焦ってしまう。颯をここで待たせるよりユージーンの部屋へ案内した方が早いと判断したのだろうが、それにしても取り乱すほどのことかと思ってしまう。


《颯様が待たせすぎたせいではないですか》


《えっ、俺のせい? 俺が悪いの?》


《颯様にそれだけ期待しているということでしょう》


《期待されても困るんだけど…》


ユージーンの手紙には少し知恵を貸して欲しいとしか書いてなかったはずだが、いったい颯にどんな期待をどこまでしているのかとユージーンに会うのが少し怖くなる。


そして颯は紳士に冒険者ギルド本部三階にある部屋の前まで案内される。日本の常識だと上階は偉い人の部屋と決まっているが、三階といえばこの建物の最上階。この階には他にも部屋は結構あるが、もしかしたらユージーンはあれからだいぶ出世しているのだろうかと考えてしまう。


元々はグランの居た街の冒険者ギルドの副ギルド長だ。それが魔法の講師として王都に招かれ今はどんな肩書きが付いているのかとちょっと楽しみにもなる。


トントントン


「はい」


あの街ではノックの習慣などなかったと思ったが、さすがに王都ともなればノックは常識のようで颯はなぜか少し安心した。


「ハヤテ様をお連れしました」


紳士の言葉にユージーンの返事はなく、部屋の中でガタンゴトンともの凄い音が立ったかと思うとその後ガバッと勢いよくドアが開いた。


部屋の中から姿を見せたのは神経質そうな雰囲気に磨きを掛け、どこか貫禄が付いたというかちょっと老けた感じのするユージーンその人だった。


「ハ、ハヤテ君。君って人は本当に…。って、随分と大きくなりましたね」


ユージーンは颯の姿を確認しその成長ぶりに驚いているようだった。

まぁ確かに会うのは実に八年ぶりだ。十歳だった少年の頃とは随分と変わったと自覚している。背も伸びたし筋肉質に引き締まった体型にもなっていて、かなりいい感じに成長できている実感は自分でもあった。


「お久しぶりです。遅くなってしまいすみません」


「本当です。これ以上姿を見せないようでしたら手配書を配ろうと思ってました。でもまぁ情報は届いていたので何をしていたのかの察しは付きましたから心配はしていませんでしたがね」


「…?」


「まぁとにかく入ってください。中で話をしましょう。ああ、君はもう戻っていいですよ」


ユージーンはここまで案内してくれた紳士を帰すと颯を部屋へ招き入れた。


中は思っていた以上に広い部屋だった。小さな曇りガラスを組み合わせて作った大きなガラス窓から入る光がいい感じに部屋を演出し、そのガラス窓を背にした大きな執務机が今のユージーンの地位の象徴のようだった。


そして部屋の中央に置かれたやけに豪華な応接セットのソファーに座るように促され、颯は素直にそこに腰掛ける。革張りの感触とフカフカ具合がソファーがかなり高級であると物語っているので颯は一気に緊張し始めていた。


「さっき僕の情報が届いていたと言ってたと思うんですが…」


「はい、それはもうハヤテ君の足跡をしっかりと教えてくれるようにね」


ユージーンは部屋に置いてあったティーセットで颯にお茶を淹れてくれているようだった。


「えっとあまり意味がよく分からないのですが」


颯にはまったく覚えがなく、ユージーンが何をもったい付けているのかと少しイラッとしていた。

しかし颯のそんな感情を素早く読み取ったのかユージーンは楽しそうに笑い始める。


「ハハハハハ…。相変わらずですね。ハヤテ君の売り払っていた魔石は即座に王都に届いてますよ。何しろ質も量もスゴい物ばかりです。私にはアレを手に入れられるのはハヤテ君しかいないと確信できましたからね。その活躍振りを嬉しく感じていましたよ」


そう言えば以前どこかのギルドの爺さんにも同じようなことを言われたのを思い出し、颯は少しばかり焦ってしまう。それに活躍したつもりなど全然なかったのだから。


「僕じゃないかもしれませんよ」


「ご冗談を。今さら私に誤魔化しても意味は無いですよ。安心してくださいグランの他には誰にも話していません」


「ギルド長には話したのですか!」


「それは当然です。何しろハヤテ君が何も知らせていないようでしたので。それでお互い情報は共有させて貰っています」


「それって手紙でのやり取りってことですよね? その途中で誰かに知られる心配もあるじゃないですか」


「大丈夫ですよ。ギルド間のやり取りは結構厳重にされていますからご安心を」


今さら誰に何を知られても反撃できるだけの力は付けているし、現金という逃亡生活にとても心強い武器も持っているので別にそこまで心配することはないのだけれど、なんとなく自分の知らないところで自分の話をされていたと思うとどこかむず痒くて颯はつい反論してしまったのだった。けして反抗期ではない。


「ちょっと取り乱してしまいすみませんでした」


「いえいえ、相変わらずお元気そうなので安心しました。それよりも本題に入ってもよろしいでしょうか」


ユージーンは淹れたての紅茶を颯に差し出すと途端に真剣な表情になるので、颯は思わず紅茶より先にゴクリと唾を飲み込むのだった。



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