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女神の加護って 最高かよ! でも良いことばかりじゃないんだろ それな。  作者: 橘可憐
旅立ち

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颯は冒険者ギルドに出向き買い取り受付のカウンターの前に立った。

この時間は冒険者が出払っているのかギルド内に人影は無く受付に立つ人の姿も無い。

この街の冒険者はみんなダンジョンに潜っているのだろうか?


「すみませ~ん。買い取りをお願いしたいのですが-」


仕方が無いのでカウンター奥へと向かって声を掛けてみる。


「おう何の用だ。ここに来る暇があるならダンジョンにでも行って稼いで来い」


威圧するような大声で話しながら現れたのはどこかで見覚えのある爺さんだった。


「あっ、もしかしてあなたは」


「おお、あん時の兄ちゃんじゃねぇか。今まで顔を見なかったから俺の話を聞いて別の町にでも行ったのかと思ってたんだが元気そうで何よりだ。で、どうだ、稼げてるのか?」


この街に来てすぐに赴いた公衆浴場で声を掛けてきたあの若々しい爺さんだ。あの時よりさらに若々しいというか荒っぽい雰囲気を醸し出している。まるでどこかの盗賊の頭だ。


「はい、お陰様で。それで魔石を買い取って貰いたいのですがよろしいですか」


「もしかして今までずっと溜め込んでたのか? 最近は奪われなくなったとは言え不用心だな。全部買い取ってやるからここに出しな」


颯は爺さんの言葉に一瞬『ここにですか?』と言って本当に異空間収納から魔石を全部出して見せて『僕何かやっちゃいました?』展開をしてみたい衝動に駆られたが、颯は既にギルドがどのくらいの量までなら買い取ってくれるのかを知っていたので準備は万端だ。買い取って貰う分の魔石だけをリュックに詰めてある。とてもじゃないが全部なんて出せない。


颯は魔石を詰めたリュックをカウンターにのせるとそのままお願いしますと差し出した。


爺さんはリュックの中を覗いて「これ全部か?」と顔色を変え驚くので颯は途端に焦ってしまう。もしかたら誰かから奪った物だと勘違いされているのかもしれないと。


「ただ者じゃねぇとは思っていたが兄ちゃんだったか…」


「えっと…」


颯は爺さんが突然何を言い出したのかがまったく分からなかった。


「兄ちゃんなんだろう? バカ共の目を覚まさせてくれたのは。ギルドとしても気を揉みながら何もできずにいたのに簡単に解決してくれたみたいじゃないか。本当に感謝してたんだ」


「ハハハハハ…」


颯はなんと返して良いのか咄嗟には思いつかず笑って流すしかなかった。


「ヤツらの話じゃ相手は複数で姿を見せなかったって話だったが、若いソロの兄ちゃんにやられたなんて話はできなかったんだな。まったく困ったヤツらだ」


爺さんはそう言って一人納得していたが、颯はきっと一反木綿グルグル巻き魔法で拘束されたのを他にも何人かいたと勘違いしたのだろうと考えていた。


もっとも見えない強者に怯えて悪事を控えてくれるのならそれはそれで良いかとも思う。

それに自分達から正直にギルドに報告したところをみるともう他の冒険者から魔石を奪う行為もしていないのだろう。


「でもどうして僕だと分かったんですか?」


「だっておまえ、この魔石はその辺の冒険者が持ち帰るのとは明らかに質が違うじゃねぇか。最近第六階層より下に潜り始めた冒険者の持ち帰るのより質の良いのも混じってるとなれば他に疑いようがねぇだろう。何しろ凄い魔法を使って下に降りてったって話だったしな」


颯はその辺ももう報告されていたのかと盗賊冒険者達の前でやり過ぎた事を少しだけ後悔していた。


「そんでまさかとは思うがダンジョンを踏破したとは言わないよな?」


「ハハハ…」


「踏破したのか!!」


「騒がれたくはないのでできればご内密にお願いします」


「あぁ? だっておまえ、ダンジョンの踏破となったらそりゃ大層な偉業だぞ。それを黙ってろって意味が分からん」


颯は別に騒がれたいとは望んでいない。十二年後には地球に戻る身だ。それまでこの世界の人達にあまり迷惑を掛けず目立たずに過ごす事を望んでいる。名前を残すなんてもってのほかだ。

この世界に名前を残すのはこの世界の人達の方がきっと色々と都合が良いはずだと颯は考えていた。


「僕はただの旅人冒険者ですから」


「…しかたねぇなぁ。兄ちゃんには借りがあるしな。分かったここだけの話にしておく。だが気が変わったらいつでも俺に言いな。俺にできることならなんでも力になってやる」


「ありがとうございます」


颯は妙に粘られなくて良かったと胸を撫で下ろす。そして理解してくれたことには感謝しかなかった。


「それと兄ちゃんの偉業は俺がちゃんと知ってるからな。それだけは良く覚えとけよ」


爺さんの妙に熱く颯を見詰めながら発した言葉がその気持ちをしっかりと伝えてくる。

颯は誰に知られることがなくても別にいいと考えていたが、爺さんの言葉が妙に胸を温かくする。そして本当は誰かに認めて貰いたかったのだと自覚させる。


「ありがとうございます」


今までだって多分誰かにこうして認めて貰えていたこともあっただろう。しかし颯はそれすら気付かずにいたというか、興味が無いというポーズを作りどこかで何かを諦め聞き流していたのだと思う。


颯を何も知らないその他大勢に認められたいとは今でも考えていないが、やはり誰かがちゃんと知ってくれているというのは本当に心強く嬉しいのだと改めて感じた。

そしてこの爺さんがちゃんと知ってくれていることがこんなに嬉しいのかと感じると颯は今度は心からのお礼を口にしていたのだった。



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