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女神の加護って 最高かよ! でも良いことばかりじゃないんだろ それな。  作者: 橘可憐
旅立ち

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このダンジョンはできてから年月が経っているというだけあってかなり深かった。全二十階層プラス一階層だ。

プラス一というのは今颯は二十階層を超えボスフロアを目の前にしているからだ。


日本にできていたダンジョンは自然消滅すると言う話だったが、この世界のダンジョンは自然消滅しないのだろうか?


《魔素が集まる限り消滅はしません。ですから地球への魔素供給もできたのです》


「ふ~ん」


颯にとって八年も前の話なので興味も薄れなんとなくどうでもいい話になっていた。

それよりもここまで来る間ダンジョンを正常化させようと張り切ったせいでかなり時間が掛かっていてすっかり疲れていた。既に一週間は潜り続けている。


そしてさらにこれからダンジョンボスのドロップ品をコンプリートさせようと思ったら、もう五日か六日は留まらないとならないと思うと少し気が重かった。


かといってこのダンジョンにそう何度も挑む気力は無い。多分最短でボスフロアを目指しても三日はかかるだろう。


「今日のところはゆっくり休むか」


「それが良いです」


ナビも休みたいようだったので颯は異空間収納から肉まんとあんまんを取り出した。勿論皮も中の餡もあんこもすべて颯の手作りだ。


最近はナビも器用に箸を使うようになっているのでラーメンと餃子という選択肢もあったが、気分は甘い物も食べたいだった。


颯の異空間収納に入っている甘い物はそんなに種類が無い。作り方を知っていたのは団子とプリンとクッキーとパウンドケーキくらいで、ホットケーキミックスがあれば他にも作れる物はあるが、無いと全然思った通りに作れないので大抵の物は諦めた。


肉まんを作ったときに挑戦して作ったあんまんが思いの外成功したのでそれからは食事で甘い物も欲しいときは肉まんとあんまんのセットで食べている感じだ。


それにしてもできたてホカホカで保存できる異空間収納は本当に便利だ。ナビも美味しそうに肉まんに齧りついている。颯はあんまんだ。

砂糖の代わりに蜂蜜と素材採取で見つけた蔓から出る甘い汁を煮詰めたものを使って作ったあんこが甘さ控えめで結構美味しい。


肉まんとあんまんだけではお腹はずっしりしないが一応いっぱいにはなったのでナビに結界を頼み颯はそのまま休む。勿論ドットから貰ったベッドを使ってだ。


ダンジョン内でベッドで休む冒険者など颯くらいのものだろう。しかしここには他に誰も居ないので人目を気にする必要は無い。やりたい放題だった。


そして目覚めてから颯は異空間収納から浴槽を取りだしお湯を満たしていく。ダンジョンの外が朝か夜かも既に分からないが気分は朝風呂だ。ゆっくりとお湯に浸かり気分をサッパリスッキリとさせ、そして浴槽とベッドをクリーン魔法で綺麗にしてから収納する。


最近のクリーン魔法は汚れを落とすだけではなくどうも劣化を防ぐ作用もあるようなので、服や体には一日に一度と言わず気になったら掛けていた。だから本来なら入浴の必要も無いのだがそこは気分の問題なので颯は入る。


その後朝食は夕べ見送ったラーメンと餃子のセットではなくチャーハンを選択する。なんとなく腹に溜まるずっしりとした物が食べたかったのだ。


しかしこれから始まるボス戦を考えたら食べ過ぎは良くない。チャーハンとスープくらいで丁度いいだろう。がっつりはボス戦後のお楽しみだ。


颯はすっかりと準備と気分を整えフロアボスの中を覗くと中央にはサイコルプスが佇んでいた。


「おぉぉ、サイコルプスだ!」


久しぶりのファンタジーなモンスターに颯のテンションは上がり始める。


「やっぱりどうせ異世界に来たんだからもっとファンタジーなモンスターと戦いたいよな。ナビはフォルトゥナにそんな要望を出せないのか?」


「私がですか?」


「そう。俺が望んでるって事で」


「伝えるのは構いませんが今ですか?」


今かと言われると颯は口籠もってしまう。今すぐにどうしても叶えて欲しいって程ではないし、誰かに無理を言うのも躊躇われる。ちょっとした願望程度の雑談のつもりだったが正しい。


「今じゃ無くて良いよ別に。気が向いたらで…」


「了承しました」


尻つぼみになる颯の言葉にナビは久しぶりの『了承しました』だったので、颯はなんだか気が引けた。

しかし一度口から出した言葉は飲み込めない。ここで冗談でしたというのは簡単だが、冗談ではなく口にしていたのだから颯は少なからず責任を意識し腹を括る。


「いつも悪いなナビ。頼んだよ」


無理を言ったことで多分に迷惑を掛けるだろうナビに颯はちゃんとお礼をしなくてはと思う。


「では先にボスを倒してしまいましょう」


「そうだな」


そうして気分を引き締め改めてボスフロアに足を踏み入れサイコルプスと向き合う。

初回は少々時間が掛かっても一反木綿グルグル巻き魔法で完全拘束し解体魔法と決めている。そしてその次の対戦はレインボーアローだ。ここのところのボス戦はタイパを考えずっとそれで済ませていた。


そして今回も三メートルを超えるサイコルプスを少々時間は掛かったが難なく倒し、颯はドロップ品選択のウインドウを開く。


「おぉ、やっぱりこのクラスの魔物になるとエリクシルが絶対に入ってくるんだな」


ドロップ品の中にエリクシルがあるのを確認し、颯はもう既に手に入れているので一回分の戦闘を回避できたとホッとする。

しかし選択肢の中にサイコルプスの棍棒というのがあるのには颯は驚くより呆れた。


(フォルトゥナさん何考えてるんですか…)


多分このサイコルプスの棍棒とはさっき倒したサイコルプスが手にしていた武器だろう。

三メートルを超えるサイコルプスが手にしていた武器を手に入れたとしていったい誰が使えるというのだろう。


「飾りか? 飾りなのか!?」


どっかの富豪の豪邸に飾られる様子を想像し颯は一気に嫌な気分になる。


「まぁ手に入れるけどな」


アイテムリストに載せるためには確実に手に入れなくてはならないが、それにしてもまたナビの異空間収納の肥やしが増えたと颯は大きな溜息を吐くのだった。



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