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女神の加護って 最高かよ! でも良いことばかりじゃないんだろ それな。  作者: 橘可憐
旅立ち

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颯は漁師町を旅立って一ヶ月足らずの間に既に二つのダンジョンの踏破を終わらせていた。


少し足を伸ばしてわざわざ寄ったのに二つともまだダンジョン化して日が浅いのかそう深くもなく、またモンスターハウス化したような魔物の密集もなく、変わった魔物も居なかったのでちょっとガッカリだった。


しかしそのせいもあってかダンジョンに潜る冒険者の数は少なく、上層で手こずっているような見るからに新人ばかりだったので颯は遠慮無く下層に潜りやりたい放題できた。

そのお陰で丸二年以上戦闘から離れていた颯の勘を取り戻すのには丁度いいリハビリになった。


漁師町では本当にスローライフと呼んでもいいほどにまったりのんびりとした時間を過ごしてしていた。

たまには時間を見つけ泊まり込みで冒険に出ようと考えていたのにそれをしなかったのは、毎日のルーティーン的子供達と過ごす時間が颯にはとても心地良かったのかも知れないと今さらながら感じていた。


そして今回漁師町を出て三つ目のダンジョン。近くに街が作られるくらいには年代物のダンジョンらしいので颯はかなり期待していた。


しかし同時に以前ダンジョン内で場所取りが横行していたダンジョンもあったので、ここではどんなご当地ルールがあるのかと少しだけ警戒してもいた。


颯はダンジョン近くの街に寄ると久しぶりに情報収集がてら公衆浴場で風呂に入る。

最近ではドットに貰った浴槽を使い、人目に着かない場所で一人風呂を楽しんでいたので本当に久しぶりだった。


「兄ちゃん見ない顔だね。冒険者かい?」


「はい、先程この街に着いたところです」


「街に着いてすぐに風呂とは兄ちゃん良く分かっているじゃないか」


老齢と言うには申し訳ない感じのまだ若々しい爺さんが颯に話しかけてきた。


「はい、旅の疲れを落としてからダンジョンに挑もうと思いまして」


「兄ちゃんもダンジョン目当てか。だが気をつけな。最近ここのダンジョンじゃ稼ぎの奪い合いが横行しているそうだ。奪った魔石に名前は書いてないからな奪われたヤツは証拠が無くて泣き寝入りだ」


「また何でそんなことに」


颯は以前見た冒険者間の場所取りなんてまだまだ可愛いものだったのだと呆れるしかなかった。


「姑息なのが装備と現金は取り上げず魔石だけ奪うのだと。そうすればその冒険者は懲りずにまたダンジョンに入り稼いでくれるからな」


ドロップ品のアイテムを奪わないのは魔石とは違い足が着きやすいと考えているのだろうかと颯は思う。根こそぎ奪わないのが本当にこの悪党の頭の良いところなのだろう。


「ギルドは何も手を打たないのですか?」


「そりゃぁギルドの目が届くところで事件を起こせば当然捕まえるがダンジョン内では誰も見ていないからな。ギルドも対策をしようがないのだろう」


「でもギルドに魔石を持ち込む人を取り締まれば良いのでは?」


「だから魔石には名前を書いてないから証拠にはならんだろう。それに大量に持ち込んだってだけで冒険者を捕まえる訳にもいかんだろうよ」


颯は爺さんの言葉にドキッとした。自分もギルドに常に大量の魔石を持ち込んでいた。だからもしかしたら誰かから奪った物だと疑われたこともあったのかと思うと今さらながら冷や汗が出た。


「自分で魔物を倒さずに人の稼ぎを奪うなんて許せませんね」


颯はいつになく熱い言葉を口にしていた。

そんな事案が横行していては本当にいつ自分にどんな災いとなって降りかかるか分からない。この先うっかりにでも大量に魔石を買い取りに出しづらくなる。それだけは本当に困る。


いつもなら他人事として話を聞いている颯も既に他人事には思えなくなっていて、必ずやその極悪人を見つけだしどうやって懲らしめてやろうかと考え始めていた。


こんな事を考えるのもいつもの颯らしくないというか実に初めての事だった。いつもの颯なら目立ちたくない面倒事はごめんだと考えていただろう。


「兄ちゃん見たところ一人なんだろう? 狙われやすいだろうから十分に気をつけて無理しないことだ」


「ありがとうございます」


颯は風呂を上がっていく爺さんにお礼を言って自分も綺麗さっぱりと体を洗うと、明日からのダンジョン攻略に備えゆっくりと体を休めた。


そして夜が明けてダンジョン入り口に立つと颯はナビに宣言する。


「ナビ今日の探索はステルスモード無しだ」


「了承しました」


今日の颯は取り敢えずダンジョン攻略は諦め、魔石を奪う現場を押さえるためにダンジョン上層の巡回に徹すると決めていた。


ナビも既に颯の考えを理解しているようで、何かを聞いてくることも反対することもなかった。



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