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女神の加護って 最高かよ! でも良いことばかりじゃないんだろ それな。  作者: 橘可憐
旅立ち

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颯はこの海沿いの漁師町に思いの外長く滞在していた。既に三年目に突入している。


心配していたドットの貴族生活は殆ど見た目だけのもので、基本は驚くほど平民とかけ離れた事は何も無かった。


それに颯が温水を魔法で作れると知って庭師の休憩小屋に浴室を増築してくれたので、とても居心地が良くなったのも滞在が長くなった理由の一つだ。勿論部屋にベッドもちゃんと設置してくれいる。


そして颯の米を作りたいという要望を聞いたドットは庭の一角ではなく、街外の開いている土地を快く提供してくれた。好きなだけ開拓して使って良いと。


ただその条件として孤児達にも米作りを教えて欲しいと頼まれたのが少しだけ厄介だったが、背に腹は代えられないと颯は承諾した。


この街は漁で命を落とす漁師が少なからず居て、孤児や寡婦が多いのが問題になっている。グランは子供達が悪事を覚える前に食べていく手段を身に着けさせたいと考えていたようだ。


しかし孤児達と関わってみるとまるでお山の大将のようだったが、子共に戻った気分で接していると学生の頃に戻ったようでこれが案外楽しく新しい発見も多かった。


経験年齢四十年にして颯は大勢と関わる楽しさをなんとなく理解していた。

実際に学生だった頃はただただモブだった颯には考えてもいなかった体験だった。


それから最初は漁師小屋で始めた醤油とみりん作りは今ではそこそこに広い倉で行われていて、一つの事業になっている。


あとは颯が教えギャビンが新しく提唱した海女漁をする人も増え、この街の屋台料理の内容は実に充実したものになっていて、颯は自分で作らなくても食べたい物を食べられるようになっていた。


最近は醤油とみりん作りの様子を偶に確認する名ばかりの監督と米作りの合間に孤児達に魔法を教えている。


ギャビンとドットは氷を作れる者が増えてくれると助かるという淡い希望を持ち、それには子供のうちから魔法を教えた方が良いだろうという少しばかりの期待を持ってその様子を見守っていた。


しかしいざ始めてみるとグランやユージーンが簡単に魔法を理解したようには全然上手くいかず、魔力操作みたいなものを教えてもできる子とできない子がいて、本当に魔法には適性があるのじゃ無いかと思ってしまうほどだった。


それでも生活魔法のような簡単な魔法を使える子が増えると、ギャビンもドットも本当に平民でも魔法を使えるのだと納得できたようでかなり驚いていた。


そういう平穏でのんびりとした生活に馴染んでいた颯に突然の知らせが届く。冒険者ギルドが配達してくれたものだ。ギルド間の連絡のついでに一緒に配達してくれるらしい。

グランからの手紙ともう一通はユージーンからの手紙もあった。


颯はグラントマリンに手紙を書こうと思いながらついつい忘れていた。文字を書くのにあまり慣れていないというのはいい訳だが、手紙を書こうとして特別に何を書けば良いのかが思いつかなくて止めたというのがある。


グランからの手紙は元気でいるかから始まって双子が大きくなって大変だと続き、王都のユージーンを訪ねてやって欲しいという内容だった。

悪い知らせじゃなかったことに颯は心からホッとした。


双子ももう五歳になって今年は六歳。きっと悪戯盛りで大変だろうなと颯はその様子を想像して、マリンとグランは賑やかな生活を嬉しそうに過ごしているのだろうと微笑ましくなった。


そしてユージーンからの手紙は魔法がだいぶ普及した事のお礼で始まり、魔導具の開発が始まっている事の知らせだった。

この辺のことは既に颯も知っていたので今頃わざわざ知らせなくても良いのにと思いながら読んでいた。


しかし魔導具開発がなかなかうまく進行せずにいるので少し知恵を貸して欲しいと続いていた。

かなり切実に書かれているのには少しばかり引いてしまったが、わざわざ手紙を書いてまで訴えてくるのにはそれなりに理由があるのかも知れないと考える事ができた。


以前の颯だったなら面倒事の匂いに顔を顰め関わるのを避けたがるところだったが、最近の颯は少しは相手の気持ちを推し量る事を覚え、自分で役に立つのなら少しは手を貸しても良いかと思えるようになっていた。

他人に関わるのが面倒だとか目立つのは困ると思う気持ちはもう殆ど無い。


それに手紙が書かれた日付を見るとユージーンの手紙が届くまでに半年近くも掛かっていた。多分あちこちたらい回しにされた結果なのだろう。

考えてみれば郵便事情が発達していないこの異世界で、住所を持たない颯に手紙が届くのが奇跡だった。


お米と醤油の補充もできたしみりんも手に入れた。海鮮もかなりの量を異空間収納に収納してあるのでこの街を出るのにはなんの不自由もないのだが、ここで知り合った人々と離れるとなると少し寂しさを覚えた。

グランとマリンの元を離れる時は寂しさより冒険への期待の方が大きかったのに不思議だ。


しかしユージーンを半年もヤキモキさせているのかと思うとそちらも気に掛かる。

それに冷蔵冷凍技術を魔導具で開発できればきっとギャビンもドットも喜んでくれるだろう。


颯にできるかどうかはまったく自信は無いが知恵を貸すくらいのことならばと颯は王都行きを決意するのだった。



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