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女神の加護って 最高かよ! でも良いことばかりじゃないんだろ それな。  作者: 橘可憐
旅立ち

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「ドットです。よろしくお願いします」


ギャビンに紹介された二十代中頃のとても漁師には見えない色白の青年は、どう見ても年下の颯にとても丁寧な挨拶をする。


「ハヤテです。こちらこそよろしくお願いします」


颯はドットと名乗ったその青年にどことなく親しみやすさを感じ、醤油造りを口頭だけで説明するのを止めた。それに思う存分海鮮を堪能できて今はとても機嫌が良い。


いつも以上に饒舌な颯は相槌を打つドットと一緒に醤油造りに必要な材料と器具を購入に行き、醤油造りができそうな小屋を探して貰う。


結局船着き場の傍に立つ漁師小屋の一つを空けて貰いそこで作ることにして、丁寧に説明しながら仕込みを終わらせる。


メモを取るのに忙しいドットにさらに丁寧に気をつけなくてはいけないことや自分の失敗談を話して聞かせ、熟成の大変さを十分に教えられたと颯は一人満足していた。


その後実際に醤油を使った料理を食べてみたいというドットに刺身をご馳走し、醤油は他にも色んな料理に使える万能調味料である事を教えた。


刺身にしたのは他にすぐに手に入る材料が無かったからでしかない。まさか異空間収納から取り出す訳にも行かないし、器具が揃ってないのにわざわざ何かを作るのも面倒だったからだ。


ここは漁師小屋だけあって、体を温めるために火を起こすのか囲炉裏のような場所はあるがそれしかない。

しかし魚を捌くためなのか調理台のような物やまな板や包丁みたいなナイフは揃っていて、売り物にならない余った魚ならすぐに手に入ったので正直それしか選択肢がなかった。


刺身を作りながら他の料理のレシピを簡単に色々と話しているうちに颯はみたらし団子が無性に食べたくなり、次は砂糖と片栗粉を手に入れる必要があると考えていた。


この世界の砂糖はまだ貴重品で値も張り到底一般市民が手に入れられる物ではなく、片栗粉なんて物は知られてもいなかった。


颯は甘味は特別に好きでも嫌いでもないが食べたいと思う事はある。しかし大抵の場合蜂蜜で代用が利いてしまうので今まで手に入れば良いな程度にしか考えていなかった。


この世界では砂糖作りは普及していないのに養蜂はかなり広まっていて、蜂蜜は甘味としても砂糖の代用品としても安く手に入り普通に広く使われている。


(だけどやっぱり砂糖だよな…)


塩は素材採取をしていて岩塩をかなり手に入れてあるし、この漁師町では比較的安く売っていた。


「ハヤテさん、もしよろしければこの醤油ができるまでこの街に滞在する気はありませんか? 急ぎでないのなら私ももっと色々と学べますし安心です」


颯はドットの申し出に少しだけ悩んだ。

確かに急いだ旅をしてはいないがこの街に留まりたい明確な理由がない。確かにドットは親しみやすいがそれだけだ。


それに醤油がちゃんとできあがるかは気になるが、その間行動を制限されるのは勘弁願いたい。

颯があれこれと思い悩んでいるのが分かったのかドットはさらに続ける。


「時々様子を見て教えてくれるだけでいいんです。その間私の家に滞在し自由に過ごしてください。迷惑を掛けないようにしますので是非お願いします」


「う~ん…」


滞在できる家があるのは正直嬉しい。そこを拠点にこの領にあるダンジョンを攻略したり、まだ手に入れていない素材の回収をすれば少し余計に時間は掛かるが野宿の回数は減る。

それに自由にしていいのなら休みも取れるし何か始めたくなった時に思い留まらずにすむ。


「他に何か作りたい物は無いですか? 滞在している間に私にできることがあれば手伝います」


『何でも』なんて大げさに言わなかったところがドットの誠実さを窺わせる。それに押しつけがましくないところも好感度が高い。なので颯はこの街に滞在してまでも作りたい物を考える。


「作りたい物かぁ…」


と、考えていて颯は『そうだみりんだ』と咄嗟に思いついた。

日本酒や焼酎は無理だがこの世界にもアルコールはある。あとは砂糖が手に入るかが問題なのだが、もし砂糖が手に入るならみりんが作れる。それならばこの街に滞在する理由にはなる。


「砂糖は手に入りますか?」


「砂糖ですか? 砂糖なら少し時間をいただければ手に入りますよ」


「本当ですか!? 砂糖って王族や貴族様でもなければ手に入らないと聞いてますよ?」


颯はもし手に入ればくらいの期待しかなかったのに、手に入ると言われ喜ぶのと同時に疑問も浮かぶ。本当に手に入れられるのかと。

しかし疑っても仕方ない何しろみりんが手に入れば颯の日本食も完璧に再現できるのだから。


「あぁ、言ってませんでしたね。私はここの領主の三男なんです。邸にいても私にできることはないのでこの街で社会勉強させていただいてるんです。殆ど平民と変わりないのですがそれでも砂糖を手に入れるくらいの融通は利きますよ」


颯はドットが貴族の三男と聞いて驚くより呆気にとられてしまう。全然まったく気付かなかった。

今さっきまで気にせずにかなりフレンドリーに接していた。というか、かなり偉そうだったかも知れない。ドットの方が年上だというのに。


颯はなぜか無礼打ちにされなくて良かったと胸を撫で下ろしてしまうのだった。



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