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女神の加護って 最高かよ! でも良いことばかりじゃないんだろ それな。  作者: 橘可憐
旅立ち

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「やっぱり網と炭は必要だな。でもどこに行っても炭は売ってないし、自分で作るって言っても木を焼いて作るくらいの知識しか無いしなぁ」


漁師のおやじを待つ間浜焼きを楽しもうと思ったが肝心の道具がなかった。

仕方ないのでフライパン代わりの鉄製鍋を代用しているのだが気分がまったく上がらない。やはり雰囲気も大事だ。


しかし美味しそうに焼き上がったアワビとサザエとハマグリにちょっとだけ醤油を垂らす。

するとジュワ~っと貝汁の溢れ出る音と醤油の焦げる香ばしい匂いが食欲をそそる。


「みりんも考えないとな」


颯の特製ダレを作るにはみりんも必須なのだが何しろお酒が手に入らないので諦めるしかない。


「なんだか旨そうな匂いだな」


焼き上がったハマグリをナビに食べさせようと皿に乗せたところで漁師のおやじに声を掛けられた。

颯は満面の笑顔で当然くれるよなと訴えているおやじに仕方なく皿を差し出した。


「食べます?」


「催促したみたいで悪いな」


漁師のおやじはハマグリの身を器用に貝から外し口の中に豪快に放り込む。


「なんだこれ。旨いってもんじゃねぇぞ。この貝は知ってたがこんなに旨かったか!?」


「秘伝のタレを使ってるからじゃないですか」


颯は自分が使う分の醤油しか持ち合わせていないので、情報を秘匿する意味で敢えて秘伝のタレだと説明した。


「秘伝のタレだと。そんなに旨いタレがあるのか…」


狙い通り漁師のおやじはそれ以上を深く追求するのは止めたのか黙ってしまう。


「こっちが昨日説明したアワビでこれがサザエです。これも美味しいので食べてみてください」


アワビもサザエも食べようと思えば生でも食べられるけれど、颯は敢えてその説明は避けた。貝で当たると本当に苦しいからね。颯も一度だけ経験があるので用心に越したことはない。

まぁ教えもしないのにやる分には本人の自己責任だけれど、颯がうっかり教えて被害に遭われては目も当てられない。


「これか」


漁師のおやじは初めにサザエを口にした。サザエの身も教えもしないのに器用に取りだしているのを見て、颯はなぜかさすが漁師と思っていた。


「おっ、この苦みがたまらんな。それにこの食感がまた良い。どれこっちはどうだ」


おやじは掌より大きな丸のままの焼きたてアワビに豪快に齧りつく。見ているだけで美味しそうなそのワイルドな食べ方に颯は思わず生唾を飲み込んだ。


「おお、これは旨い!」


漁師のおやじは叫ぶようにそう言うと残りのアワビを食べるのに夢中になってしまう。そして食べ終わると満足げに頷いて颯をジッと見詰めた。


「頼みがある!」


急に頭を下げられ颯は一瞬びっくりしたが、何を言いたいのかはなんとなく察しが付いたので溜息を吐くしかなかった。


「…秘伝のタレは残り少ないので分けてあげられませんが作り方なら教えられます。でも僕でも失敗することがあるので作るのは難しいですよ。それでも構いませんか?」


「ああ、それで構わない」


ニヤリと笑うおやじに颯は口頭で醤油の作り方を説明していく。


「ああ、ちょっと待て待て。俺では覚えきれん。適切なヤツを紹介するからそいつに頼む。手数を掛けさせて悪いがよろしくな。それと約束の魚は船に置いたままだがどうやって持って帰るつもりだ?」


「それも秘策があるのですがあまり人目に付きたくないのですよね。できれば場所に案内していただいてあとは放置して貰えると嬉しいのですが」


異空間収納の事は誰にも知られる訳にはいかないので颯は無理を言っている自覚はあったがそう頼むしかなかった。


「分かったそうしよう。じゃぁ俺が他の漁師のヤツらに昨日のウニとこの貝の旨さを教えている間に済ませてくれ」


「助かります」


「俺の名前はギャビンだ。ここの漁師達の元締めをしている。これからもよろしくな」


「僕はハヤテです。こちらこそよろしくお願いします」


颯は麻袋に詰め込み海水に浸してあるウニとアワビとサザエの場所をギャビンに教え、そのまま船の場所まで案内して貰う。


「結構あるけど大丈夫なのか?」


「大丈夫です」


船の上に置かれた木箱を覗いて颯は驚いた。


「こ、これってメバチマグロじゃないですか!」


「ハヤテとの約束だからな張り切って大物を狙ってきた。満足してくれたか?」


「はい!」


本マグロとはいかなかったがメバチマグロを手に入れる事ができた。見ると他にもビンチョウマグロもあるしタイやキンメなどの高級魚も多い。


颯は思った以上の収穫にギャビンに感謝しかなく、嬉しさのあまり人目があると言うのに異空間収納に即座に収納してしまうところだった。一刻も早く収納し鮮度を保ちたかったのだ。

すんでのところで思いとどまれたのはナビに頭を叩かれ冷静になれたからだった。


「これら全部本当にいただいてしまってよろしいのですよね?」


「ああ、全部ハヤテの物だ。それ以上の価値の情報をくれたから寧ろこれでは足りないくらいだ」


「いえ、これだけあれば十分です。本当にありがとうございます。荷運びが終わったら私も会場の方に顔を出しますね」


「ああ、そうしてくれ。俺の方もさっきの秘伝のタレを教えて貰うヤツを呼んでおくから頼むな」


颯の行動を不審がらず詮索しなかったギャビンにありがたみを覚え、颯はどことなくギャビンに心を許しているのを感じていた。


そしてギャビンの姿が見えなくなったのを確認し木箱の中身だけを異空間収納へと収納していく。遠目に誰かに見られても何をしているかまでは悟られないだろう。


「ナビ、俺らはさっきの浜焼きのやり直しとマグロの山かけだ」


「楽しみです」


颯はすべての魚の収納を終わらせると急ぎ浜へと戻り、今度は誰に邪魔されることなく海鮮を思う存分楽しんだのだった。



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