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女神の加護って 最高かよ! でも良いことばかりじゃないんだろ それな。  作者: 橘可憐
旅立ち

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「着いたぁ~」


高台に立った颯は日の光をキラキラと波に反射させる雄大な海を見渡していた。

日本でも見飽きるほど海は見ているのに、異世界の日本の海とは少し違った景色に感慨深さがあり颯はかなり感動していた。


「思ったより時間が掛かってしまいましたね」


「それはナビがついでに盗賊を討伐しようとか人助けはしておいた方が良いとか言うからだろう」


「颯様も採取に夢中になっていましたね」


「あれは仕方ない。念願のわさびに山芋だぞ。今度いつ出会えるか分からないんだから十分な量は確保したいだろうが」


颯は何度かナビにここまで来たついでにと盗賊のねぐらを襲撃させられていた。

そして盗賊達はいつものように穴に埋めて放置し、近隣の村や街のギルドに書き置きをして知らせた。

有無を言わせない雰囲気をナビが醸し出すから颯は仕方なく従うしかなかったとも言える。最近のナビは時折とても頑固になる事があるのだ。


しかしそのお陰もあって日本で食べたのとまったく一緒の自然薯とわさびを手に入れる事ができたので颯も満足している。


そして颯とナビは最近では漫才のような言い合いもできるくらいになっていて、それもあまりにも自然で違和感がなく既に颯はナビの進化に驚くことはなくなっていた。


「海鮮丼とマグロの山かけが俺を待っている。急ぐぞナビ」


「それも美味しいのですか」


「ああ旨いぞ。間違いない旨さだ。楽しみにしとけよ」


「はい、新たな情報のインプットは楽しみです」


「あぁ、はいはい…」


上がりきっていたテンションを少々下げられた気もしたが、こんなたわいのない会話も今では颯の日常になっていた。


颯は街に入るといつもなら公衆浴場に急ぐのだが今回はそれよりも先に市場へと足を運んだ。


「どんな海鮮が手に入るか楽しみだな」


《颯様、独り言は周りの人々に不審に思われますよ》


ナビとの会話が日常になっていたのでつい忘れていたが、ナビは周りの人々に認識されていない。だから街中でナビと会話をするとなるとどうしても独り言に思われてしまうのをうっかりしていた。


《そうだった。教えてくれてありがとうな》


《どういたしまして》


港の傍にある市場に近づくと潮の香りより魚の匂いが強くなってきた。そしてもうすぐ魚介が手に入ると思うと自然と颯のテンションは高くなってくる。

市場の傍にある屋台からは魚を焼く匂いが漂い颯を誘うのでついつい足を速めてしまう。


「それ一つください。いくらですか?」


「おお、兄ちゃんそんなに急がなくても大丈夫だ。うちのは新鮮な魚を焼いてるから間違いなく旨いぞ」


屋台のおやじは網で焼いていた魚を木皿の上にのせて颯に差し出す。炭焼きじゃないのが残念だがいい感じの焦げ目がつき美味しそうだ。


「1000ゼニーだ。皿はちゃんと返してくれよ」


少々高い気もしたが、以前韓国の屋台で韓国人と日本人では値段が違うのを体験している。当時日本人は一律千ウォンで韓国人にはおつりを渡しているのをみて観光客値段なのだと納得したが、この街も同じなのかも知れない。

それにもしかしたらお皿を持って帰る人が多くて保険のためにお皿代込みなのかもとも考えながら代金を渡す。


「えっと、どこで食べれば良いですか?」


「そりゃおまえ、邪魔にならないとこならどこでも良いだろう。なんならそこに立って旨い旨いと宣伝してくれても良いぞ」


屋台のおやじは屋台のすぐ脇を指差すので、颯は大人しくそれに従うとナビが不服そうにした。


《私はいただけないのですか》


《ここでその姿を現す訳に行かないだろう。ちょっと我慢してくれよ。後で絶対に俺がもっと旨い焼き魚を食べさせてやるから》


《仕方ないですね》


これが串焼きだったなら颯も持ち帰りどこか人目のないところを探しナビと食べるのだが、店の皿を持ち逃げしたと思われるのも面倒だ。


もっともそれは都合の良い後付けのいい訳で、ナビには本当に申し訳ないがこの五年魚不足の生活をしていた颯はついそこまで考えずに行動してしまっただけだった。


颯は魚を手で持ちその背中に齧りつくと、先にしょっぱさが少し来たが懐かしの焼き魚の美味しさが口に広がった。


「美味しいです」


「だろう。うちのはさっき水揚げされたばかりの魚だから他のとは違うぞ」


屋台のおやじの宣伝がてらの話を殆ど聞き流し、醤油をかけたいのを我慢して焼き魚を完食させる。


「ごちそうさまでした」


颯はおやじに木皿を返し次の屋台を覗いて行く。持ち帰れる美味しいものがあればいくつか買って異空間収納に収納しておきたいと思ったのだ。


しかしどこの屋台もその場で食べるのを目的にしているのか持ち帰れそうな物は何もなく、日本の屋台と言うよりタイや台湾の屋台のように料理になっているのものばかりで、その上生魚を扱う店は全然無くかなりガッカリだった。


折角なのでここの料理も食べてみたいという興味も少しあったが、今はそれより日本食での海鮮が食べたかった。

そうしてみると一番初めの焼き魚が一番日本の屋台に近かった気がする。


「まぁいいか。料理はあとでも食べられるし、今は新鮮な魚だ」


颯は屋台を離れ市場を覗いてみるがそこにはがっかりな風景しかなかった。

殆どが干した魚や塩漬けにされた魚を売る店ばかりで、生の魚を売っている店がなかった。


「生の魚が欲しいんですがどこで売ってるか教えていただけませんか」


颯は意気消沈し最後に覗いた店で聞いてみた。


「生の魚は漁から帰ってきた船と交渉するしかないな」


「そうなんですか」


まさかの漁師との直交渉とは颯は思ってもいなかった。


「兄ちゃん残念だけど一匹二匹じゃ相手にして貰えないよ」


「でも一応どこへ行けば交渉できるか教えていただけませんか」


「向こうにある船着き場だ。無理だと思うが行ってみな」


颯は海鮮丼を到底諦める気にはなれず、市場のおやじに教えられた船着き場へと急ぐのだった。



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