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女神の加護って 最高かよ! でも良いことばかりじゃないんだろ それな。  作者: 橘可憐
旅立ち

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「これほどの数の魔石は買い取り不可能です」


「えっ…」


ダンジョンで得た魔石を異空間収納からリュックに入るだけ入れて、意気揚々と冒険者ギルドの買い取り受付へ持ち込んだ。


しかし中身を確認した受付に立つ老齢の男性に冷ややかな対応をされ颯は言葉を失った。

ここはそんな冷ややかな対応ではなく驚かれるところで、颯は受付嬢に大騒ぎされ目立ってしまう心配や冒険者に絡まれる危険までシミュレーションしていたのにまったくの的外れだった。


そもそも冒険者ギルドの受付って美人のお姉さんや巨乳のお姉さんが居るのが定番なのに、颯の慣れ親しんだギルドの受付はどっしりとしたおばちゃんだった。


そしてここは老齢男性。まぁ確かに仕事ができそうな雰囲気はあるが、もしかしてギルドに綺麗なお姉さんが居るというのは夢か幻想なのか小説の中だけの話で、この世界ではその可能性は無いってことなのだろうか?


(おいフォルトゥナ、肝心なところを外すなよ…)


綺麗なお姉さんや巨乳にはあまり興味もなかったけれど、定番から外れていると思うと少し残念だった。


颯は何気に綺麗なお姉さんの『凄いです』みたいな物語通りの反応を想定して張り切ってリュックに魔石を詰め込んだのに、綺麗なお姉さんは居ないわ買い取って貰えないわではただの徒労に終わっただけだ。

面倒事を避けたい颯にはこの対応は寧ろ喜ぶべきところだけれど少しだけガッカリだった。


「これだけの量を買い取るとなるとギルドの資金が足りません。どうしても一度に売りたいのでしたら王都へ行かれるのがよろしいかと」


「では買い取っていただける分だけでお願いします」


「かしこまりました」


颯は王都以外のギルドでは普通一回にどのくらいの量なら魔石を買い取って貰えるのかを知りたかったのもあり買い取りを頼んだ。


それに異空間収納の中にはまだまだ沢山の魔石が収納されている。今回の買い取り量によってはこまめに小出しに換金する事も考えなければならない。



「半分も買い取って貰えなかったな…」


颯は街を出て当初の目的であった海に近い街を目指し歩き始めていた。


「思っていた以上にお金になったと喜んでいたではないですか」


「それはそうなんだけどな。まぁいいかぁ、海まで急ぐぞ」


ダンジョンも踏破してしまい冒険者ギルドで魔石も買い取って貰えないとなったらこの街にはもう颯のやることは何も無い。


もしもっと魔石を買い取って貰えるのなら異空間収納に溜め込んだ魔石を処分したかったし、魔法の練習がてらもう少しの間ダンジョン下層に留まっても良いかと思ったが全然無理だ。


冒険者ギルドも今回買い取った魔石を処分できるまで新たに大量は買い取れないと言っていたところをみるとギルドも王都に運んで換金するのだろう。


別にどうしてもしたかった訳では無いので別にいいのだが、もうちょっとだけ魔法を使っていたかった。

しかし魔石を買い取って貰えないのにこれ以上溜め込む訳にはいかないと颯は気持ちを切り替える。


「王都には行かれないのですか」


「王都は海鮮丼を食べてからだ。別にお金には困ってないし急ぐ理由は無いからな」


「了承しました。では当初の目的通り海を目指し最適解のルートを探します」


「……そんなこともできるの?」


颯の呟きのような疑問に対する答えはナビから返っては来なかった。きっと考え中考え中って感じなのだろう。


それにしてもナビの進化には驚きだ。

リストに未登録の魔物や素材を分かりやすくマップに表示できるようになり、一緒にご飯を食べてくれるようにもなり、今度はルート検索までしてくれるらしい。


なんだかどんどん颯の望み通りに変わっているようで、もしかしたらそのうちにアンドロイドやホムンクルスのように人間体になってしまうかもしれないと颯は考えていた。


「未発見素材等の採取を優先させたルートをマップに表示させます」


「それは助かる。ちなみに他のルートはどんな感じなんだ?」


颯はカーナビを思い出し、高速を使うルートや下道を行くルートなど他にもいくつかの候補があるように、ナビが考えた別のルートのこともちょっとだけ気になり聞いてみた。


「他には最短で行けるルートと盗賊のねぐらを回るルートとすべての街に立ち寄るルートなど色々ありますが、他のルートをご希望ですか」


「いやいやいや、そのままのルートで良いよ。うん、変える必要は無い大丈夫」


最短って言うのはまだ許せる。しかし盗賊のねぐらを回るとかすべての街に立ち寄るとか、ナビはいったい自分に何をさせる気なのかと颯は慌ててナビに念を押した。


「私の選定に問題があったかと思ってしまいました。颯様のご意向に添えていたのなら良かったです」


「……」


颯はナビから返ってきた返事に今までに無いなんとも言えない人間くささを感じ少々戸惑ってしまうのだった。



「さっきの男のリュックを見たか。中身全部魔石だったぞ」


「ああ、驚いたな。一人であの数は異様だよな」


「どこかに魔石のドロップ率が良い階層があるのかもしれないな」


ギルド受付と颯のやり取りを見ていた冒険者は颯に絡むことは無かったが少しばかり色めきだっていた。

最近は魔石の買い取り価格が上昇し始めていて、現金よりも魔石の方が断然実入りが良いからだ。


「俺たちがいた階層では見かけない男だったよな」


「ってことはもっと下の階層に潜ってたのか」


「でもヤツは一人みたいだったぞ。一人でそんなに下の階層に行けるものか」


「いや分からんが、俺たちもそろそろもう少し下を目指しても良いんじゃないか」


「そうだな他のヤツらと湧いた魔物の取り合いしてるならその方が良いかもな」


ダンジョン内での場所取りや揉め事がなくなった今、リポップの取り合いをしていた冒険者はこうして確実に日帰りができる階層での冒険から下層を目指す決意をする。


そしてやがてこの冒険者達が初めてダンジョンを踏破した者として世界に名を馳せる有名パーティーになるのだがそのきっかけが颯だと知る者は誰もいない。


それにそもそも颯が今まで放置されモンスターハウスと化していた下層を通常の状況に戻したからなし得たことなのだが、その事実も誰に知られることもなかった。


ダンジョン踏破はいまだに誰もなし得ていない偉業とされていたが颯はそんなことにはまったく興味も無く、颯が既にいくつものダンジョンを踏破していることはグランしか知らない事実だった。



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