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盗賊達が捕らえられ小屋を調べると、結構な現金とポーションなどのアイテムが床下に隠されていたそうだ。
捕らえた盗賊達は思っていた以上にダンジョンに入る冒険者を襲っていたらしく、颯はギルド長にかなり感謝されたが問題はその隠されていたお宝だった。
ギルド長は盗賊を捕らえてあると知らせる手紙を貰ったという事にしたそうだが、当の盗賊達は幽霊に襲われたと言っているらしいく、盗賊が溜め込んだお宝は誰のものになるのかで少々揉めたらしい。
本来なら捕らえた者に一番の権利があるのだが、まさか颯が捕らえたと名乗る訳にも行かず、では知らせを受けたギルドか実際に捕らえに向かった警備兵が所属する隊もしくは領主か、実際こんな事は前例が無いのでみんなして頭を抱えたそうだ。
颯はその話を聞いていて問答無用で取り上げなかった領主に少し感心していた。
「何暢気に聞いてるんだ。これはお前が起こした問題だ。少しは俺の苦労も考えて行動してくれ」
「だってナビが捕らえろって言うし、実際あの小屋はダンジョンに通うには便利そうだったから」
「ああ、分かった分かった」
ギルド長は颯の言い訳を聞いても問題は解決しないと分かっているのか、もう颯の話を聞く気はないらしく軽く手を振って話を遮る。
「それで結局そのお宝は誰の物になったんですか?」
「結局教会へお布施として寄付するそうだ」
教会は孤児院を併設してはいないが、定期的にスラムで炊き出しをしているのでそれに役立てて貰うそうだ。
教会の前に子供が捨てられるとそのまま教会員にされるので、実際は孤児を抱えているようなものだったりするが、自分の子供を教会の前に捨てる親は実は少ないらしい。
そこまで信仰が浸透していないのか教養のないせいかは分からないが、大抵の場合は幼い内から奉公に出されるか売られるかすそうだ。
だからこの街の住民に広く役立てようと考えた末の教会へのお布施らしい。
「へぇ~、それは良かったです」
「お前は本当に欲のないヤツだな」
ギルド長にそう言われても自分が稼いだお金ではないので別に惜しくもないのが事実だ。
まぁでも、実際にお宝を目の前にして周りに誰もいなかったら、もしかしたら颯も盗賊を捕らえた自分に権利があり自分が貰っても良いと考えたかも知れないけれど、なんにしてもあの小屋で一晩過ごしながら見つけられなかったのだから元々颯には縁のない宝だったのだと簡単に割り切れた。
きっと実際に目にしていないからだろうとは思う。しかし下手に欲を出しても大抵の場合良い結果にはならないし、今の颯に大金はまったく必要無い。分不相応な大金は身を滅ぼすとも言うし、他の誰かの役に立つのならそれが一番だ。
「それとユージーンが王都へ行くことになった」
「また急な話ですね」
「これも言わばお前のせいだ。王都のギルドから魔法講習を他のギルドでも開催したいから講習員を育ててくれと依頼があった。まさかお前に行かせる訳にはいかないだろう。当然俺も行けない。となったらヤツに押しつけるしかないだろう」
「講習を受けにこの街まで来させれば良いんじゃないですか」
「王都のヤツらは自分の方が偉いと考えてるからな。死んでもそんなことするもんか。それにお前のことに気付くヤツが現れても困るしな」
ギルド長はとことん颯の存在を隠してくれる気らしいと感じ嬉しさも感じるが、同時にユージーンに申し訳ないとも思う。
「それじゃ面倒事を押しつけられるユージーンさんには感謝ですね」
「一応出世扱いだ。ユージーンは悪い気はしてないようだぞ」
「そうなんですか」
「それに王都に行ける機会などそうはないからな。費用もギルド持ちとなれば尚更だろう」
「あれっ、もしかしてギルド長も実は王都へ行きたかったとか? 何でしたら僕がマリンさんを守ってちゃんと留守番しますから心配せずに行って貰っても構いませんよ」
「バカ言うな。留守の間マリンに悪い虫が近づかないか心配で眠れんわ」
「ハハハハハ」
ギルド長に惚気を聞かせられ颯は乾いた笑い声を立てるしかなかった。
ギルド長は颯の中身がおっさんだと知っているからだろうが、最近遠慮がなくなった気がする。それにまぁ気持ちが分からないでもないから大人しく聞いてはいるが。
しかしそれにしてもこの世界に魔法が広まっていくのを感じ、近い将来誰でも魔法が使えるようになるのだと思うと颯も悪い気はしなかった。
それにきっとこれがフォルトゥナの望んだことなのだろうとも思っていた。




