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女神の加護って 最高かよ! でも良いことばかりじゃないんだろ それな。  作者: 橘可憐
序章

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右仲颯(うちゅうはやて)は平成初期生まれのごく平凡なゆとり世代。兄はギリ昭和生まれで妹は同じ平成生まれでもZ世代と呼ばれている。


兄は女系家族だった我が家に初めて誕生した男子という事で大事にされ育ったせいか、かなり自己主張の強い性格。その上一般とは頭の構造が違うらしく次元の違う逸話を数々持っていた。


曰く、二歳の頃には読み聞かせた絵本は一度で覚え空で語って見せた。とか。いつも何かを考えるように空中に視線を彷徨わせ独り言を呟くことも多かった。とか。時代の最先端のさらに先を行くファッションセンスを持ち、今では普通に受け入れられている真夏のニット帽や左右色違いのソックスやワンピースにパンツを合わせるなどのファッションを披露しては色んな意味で当時の周りの人の話題を攫っていたらしい。


そして妹はどうしても女の子が欲しかった父を大層喜ばせ、故にデレデレに甘やかされたせいか大人になってもお姫様気質で何故か何をしても許され、何もしなくても許される愛されキャラだ。


そんな中颯は極々平凡だった。

親には颯は赤ん坊の頃から手を焼かせたことが一度もないと褒められ(?)ありがたがられる事はあっても兄のように持ち上げられ気を揉まれることもなく、妹のように甘やかされ気遣われることもなかった。


子供の頃はそれが面白くなくて何で自分だけがと思う事もあったが、それでもそれなりにしたつもりの自己主張がスルーされてしまうくらい平凡で普通だった。


高校生になる頃に漸く愛情の問題ではなく相性の問題なのだと少しは理解して諦めたが納得できた訳ではなく、それまで親だけでなく兄や妹に良くない感情を抱くことも多かったのは確かだ。その感情を表面に出すことはできなかったが。


兄が真性のかまってちゃんならあの頃の自分は真性の気付いてちゃんだった。気付いてくれない親や兄妹を本気で恨んだこともあった。


学校では名字の関係で弄られることはあっても虐められることはなかった。なぜなら颯があまりにも平凡で普通だったから。


成績も平均、性格も大人しくあまり自己主張をしない。良い意味でも悪い意味でも目立つことがまったく何もない所謂本物のモブだった。


いまだかつて本当に親しい親友と呼べる友人はできたことがない。たいていは少し仲良くなっても環境が変わればそのまま自然消滅。


いつも話題の中心に居る他人を羨むこともあったし、いつか自分もと思い人並みに色々と努力してみたが一度も話題になることはなく諦めた。


しかし心の中は別だ。颯にも人並み以上の熱い心はあったし人並み以上の正義感も持っているし人並みに厨二病も煩ったし人並みな趣味も持っていた。


ただ誰にもそれに気付かれることもなく自分からさらけ出すこともしない。今では長くモブ人生を歩みすぎて面倒なことはなるべく避ける気質にはなっていた。


勿論目立つのも好きではないし、今さら誰かに認められたい等という承認欲求もまったく無い。

自分で自分を認めているし、自分を幸せにできるのは自分だけだと思っているのですべて自己完結できる。


今では平凡で変わらぬ毎日を普通に送り、休日には自分の好きなことをしてのんびり過ごす時間に幸せを感じられるだけで人生十分だと思っている。


専門学校を卒業後独り立ちした颯は週末ごとに実家へ帰り、親孝行のつもりであれこれ頑張った時期もあった。

親を喜ばせようとプレゼントしたり観光地へ連れて行ったり。要望があれば運転手になり何処へでも出かけた。


あの当時は兄や妹ではなく自分が自分だけが頼りにされているのだと少し気分が良かった。

しかしそれは勘違いだと考えるようになり、いつしか自分だけが親に便利使いされているとしか思えなくなり止めた。


そして子供の頃に抱いていた鬱憤を一度に親にぶつけてみたが理解しては貰えなかった。

あれが颯の人生上最初で最後の親に対する反抗で親子喧嘩だったと思う。


今にして思えば颯には認めて欲しいという見返りを求める心が多分にあったが、親にしてみれば認めるも認めないもなくただ子共の成長を喜んでいただけなのだろう。


そう理解できてもやはり納得することはできず、思いの行き違いとは言えあれから親にも兄妹にも自分から連絡することはなくなり疎遠となった。


そして人生の殆どの時間を自分のためだけに自由に使えるのだと気付いてからは人と関わる必要性もあまり感じなくなっていた。


だから今さら日常に大きな変化など求めてはいない。そんなのは小説やアニメの中だけで満足していたというのに、何で自分が今こんなファンタジーじみた体験をしているのかと颯は混乱せずにはいられなかった。



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