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「折角ここまで来たのです。魔物の一匹くらいは倒していきませんか」
「そうだな。俺も実はハヤテの魔法が脳裏に焼き付いたままであの魔法を使ってみたいと思っていたんだ」
二人は懲りもせずにまた腐界に入る相談をし始めた。しかし気持ちは分かる。颯も昨日はこの腐界で思う存分魔法を放ち楽しんでいた。
ならば少しでも長居させないように協力するかとマップを開き魔物を探した。
「あっちの方角に魔物の気配を感じます」
「何! ハヤテは魔物の気配まで察知できるのか。それは凄い。探知は熟練の狩人でもなければ使えないぞ」
「本当に君は色々と規格外のようですね。どのように育ったのかとても興味深いです」
颯はなんとも答えられずただ苦笑いを浮かべるしかできなかった。
「まぁいい。颯が話したくないことは無理には聞かん。それよりも折角ハヤテが教えてくれるんだ。さっさと倒してまた具合が悪くなる前に撤収するぞ」
「分かってますよ。そういたしましょう」
二人は颯の指し示す方角へと急ぐと魔物の姿を見つけるやいなや魔法を放つ。
この二人は本当に魔法に対しての適性があるのか覚えが早いのか、失敗するかも知れないと身構えていた颯の心配を余所に見事に魔物を倒した。
ギルド長はファイヤーアローが、そしてユージンはフローズンアローがお気に入りのようだ。
「おおぉーー。案外簡単に命中したな」
「今のは私が倒したのです!」
「はぁ? どう見ても俺の炎の矢が致命傷だっただろう」
「何を言っているのです。ギルド長の矢はどう見てもあの魔物の核に命中したとは思えませんが!?」
二人の言い争いに颯は待ったをかける。
「二人とも言い争いをしている場合ですか。長くは滞在できないのですよ。それに魔物は核を壊さなくても獣同様致命傷を与えれば倒せるんです」
フォルトゥナの都合で昨日からそうなったとは口が裂けても言えないが、颯は早速その情報を伝えた。
「なんだと。それは本当か!? ならばユージーン次は俺が一人で仕留める。文句は無いな」
「ええいいでしょう。できるものならそうしてください。後で助けを求めても知りませんからね」
颯は二人の子供っぽい言い合いを微笑ましく聞きながら、これはもう思う通りにさせないと引き下がらないのだろうと考え次の魔物の気配を探知して教える。当然腐界から少しでも早く撤収できそうな場所に居る魔物を選んでだ。
「あっ、その前にドロップ品の確認はいいのですか?」
「そうだった。久しぶりのことについうっかりしていた」
ギルド長がドロップ品を探しに魔物の居た辺りに行くとそこには図ったように魔石が落ちていた。
「これはアレだな。ハヤテが持ち込んだ魔石と同じ物だな」
「本当に魔物からドロップするのですね」
ギルド長もユージーンも実際に魔物を倒し魔石を手に入れたことで何かを感じて考えているようだった。
しかしそんな様子もすぐに復活し二人は次の魔物の居る場所へと急ぐ。
そうしてギルド長とユージーンとそれぞれ一匹ずつ倒し満足したのか早々に腐界を撤収した。
「ハヤテが簡単に色々と魔法を放っていたから俺も簡単に考えていたがなんだか魔法を使うごとに体が重くなっていくのはどうしてだ?」
「それは魔力の減少のせいではないでしょうか。人それぞれ魔力の保有量が違い魔法を使うとその魔力が失われます。それから魔力が枯渇すると倒れると僕は聞いていますよ」
「それは回復するのですか?」
「勿論です。体力と一緒です」
「なるほどな。それじゃ好きなだけ魔法を使えるとは思わない方がいいな」
「私はまだ大丈夫そうです。ギルド長より魔力の保有量が多いということでしょうか」
「そうかも知れませんね」
颯は曖昧に言葉を濁しその場をやり過ごすことにした。これ以上この二人に張り合われたら颯の気が休まらない。張り合うのなら二人だけのときにして欲しい。
「なんにしてもそろそろ戻らんとギルドが混み合って大変なことになるぞ」
「そうでした…」
二人ともギルドの仕事を放って出てきたのを漸く思い出したようだ。
そうして急ぎギルドへ帰ると当然のように二人は受付の女性にたいそう叱られた。
二人とも受付の女性には頭が上がらないのか、女性の気の済むまで冒険者達にその姿がさらされ、颯はどうしたらいいのか戸惑いながらホールの隅で小さく大人しくしていることしかできなかった。




