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女神の加護って 最高かよ! でも良いことばかりじゃないんだろ それな。  作者: 橘可憐
序章

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ブシュ! バチン!! ボンッ!


今や紫色の球体はバスケットボールより大きなサイズばかりになり、大きい物だと直径一メートルを超える物も出始めたが、颯はまるでシューティングゲームを楽しむように難なく次々と紫の球体を消滅させていった。


とは言っても颯の手の届く範囲内での事なので、既に何処まで広がったか分からないこの闇の空間にはまだまだ不気味な気配は多くある。


それでも攻撃の手段を手に入れたことは颯の恐怖を打ち消すだけの効果はあったようで、いつまで続くか分からないこの落下現象への不安もこの先の事も考えずに夢中になれた。


ただ少し疲れ始めてはいた。最近はあまり体を動かすこともなくなり、年齢的に体力の衰えも感じていたので、ただ腕を振るうだけの攻撃とは言え腕の怠さをひしひしと感じ大分辛かった。

が、重い腕を歯を食いしばり懸命に動かしていた。余計なことを考える暇を持たないために。


それに何気に普段使わない上半身の筋肉もかなり使っているようで、腹筋や背筋脇腹といったところが今にもつりそうだ。


それでも自分自身手を休めるのを許すことはできず、颯はただただ目に映る紫色の球体を潰すことだけに意識を集中させた。


そして息も上がり始めた頃足の裏に地面を踏む感覚があった。漸く地底へとたどり着いたようだった。


さっきまでは重力が半減されたかのようだったのに、ストンと足が地面に付いた途端に全身を普段通りの重力が襲い思わず膝をつき四つん這いになってしまう。


すると闇と紫の球体しか見えなかった視界にゴツゴツとした岩でできた洞窟のような空間が確認できる。

そして目の前には今まで以上に大きな紫色の球体が気味悪く蠢いていた。軽く直径三メートルは超えているだろう。


しかし颯はすぐには立ち上がることができず、息を整えながらその気持ち悪い蠢きをつい眺めてしまった。


するとゆっくりと形を変えるその球体は段々と何かの形を作っていく。颯が呆気にとられ見詰めているとその形は大きな骸骨の姿になった。

気味の悪い白く大きなソレは以前妖怪浮世絵で見た大きな大きな骸骨とまるで同じようだった。


目の前の出来事を上手く飲み込めずにいた颯が呆然としているとその骸骨と目が合った気がした。目玉などない骸骨なのに。

さらにその骸骨はニタァッと笑った気がした。表情筋などまるでない骸骨なのに。


「うわぁっ!」


気味悪さから声を上げた瞬間目の前の骸骨が大きく手を振り上げる。


(ヤバいヤバいヤバい)


骨だけの腕とはいえ太さはかなりの物だ。その腕で殴られたら軽傷で済む訳がないと颯は急ぎ立ち上がり回避するために体を動かした。

そして取り敢えず骸骨の視界から逃れようと骸骨の背後に向かい走る。


ドスン!!


先程まで颯が居た場所に振り下ろされた骸骨の拳が地面を激しく叩き轟音を響かせる。


(あれに当たったら軽く死ぬじゃん)


さっきまでのかなりの焦りと混乱はその衝撃音を聞き、多少の焦りは残しながらも颯の思考を何処か冷静にさせ、気持ちは段々と落ち着いていく。


そして骸骨の視界から外れた颯は手にした刀のお守りをさらに強く握りしめ骸骨に向けて突き刺した。が、骸骨を簡単に消滅させることはできず、堅い物を叩いた感触だけが拳に伝わった。


(クソッ、紫の球体は簡単に消せたのに)


颯は今になって紫色の球体の内ならば簡単に消滅させられていたのを思い出し、早いところ攻撃を開始しなかったことをすっかり形作られた骸骨を目の前に深く後悔していた。


しかし颯はここで嘆いていても始まらないと、体を回しながらこちらを向こうとしている骸骨の周りを走りながらさらに攻撃を仕掛けていく。


骸骨の動きはかなりゆっくりだ。それに前方にしか攻撃できないようでもあるしすんでいないのかすんでいないのかまだ立ち上がることができないようで動きも這いずるようにするばかり。


ならばこのまま骸骨が立ち上がる前に動けないようにするまでだと颯は腰椎をひたすらに攻撃していく。

骸骨の背後に回りながらただひたすらに夢中になって刀のお守りを突き立てる。その繰り返し。

やがて堅かった骨に徐々にひびが入り、突き刺す度にボロボロと欠け始めた。


「後もう少し」


颯は自分を鼓舞するかのように敢えて言葉にすると今まで以上に刀のお守りを握りしめる拳に力を入れる。すると刀のお守りが突然光り始めたではないか。


徐々に光は強くなりその眩しさに目が眩んだのは颯だけではなく骸骨もだった。


颯が眩しさから解放され、手にした刀のお守りを目にした時に全身を雷に打たれたような衝撃が走る。しかしその衝撃はすぐに修まった。


そしてお守りだった筈の刀はその手にずしりとした重さを感じさせ、刀身に竜が大空を泳いでいるような刃文を浮かべた本物の刀へと姿を変えていた。


「何だこれ!」


驚きより感激の方が大きかった。これでどうにかなるかも知れないと颯はニヤリと笑うと、さっきの光ですっかり弱体化したのか大人しく固まってしまった骸骨に向けて刀を振るう。


ザン!!


堅い物を切る手応えと共に骸骨の上半身が大きく倒れ込む。


ズザザザザ!!!


すかさず倒れた骸骨の頭上部分に回り込み、颯は今度は刀を上段に構える。


「覚悟!」


気分はすっかり侍だった。手にした刀で頭蓋骨を切るように振ると刀は頭蓋骨にすんなりと入りやがて綺麗に二つに割れた。


「またつまらぬ物を切ってしまった」


颯はすっかり動かなくなり紫の靄となって姿を消し始めた骸骨を目にし、勝利を確信して格好つけてつい一人呟く。すると途端に脳内に響く声があった。


ダンジョンの初踏破を感知しました。


ダンジョンの踏破者に称号を授けます。


踏破最速記録を確認しました。


記録者にスキルと恩恵を授けます。


さらにこのダンジョンを異世界への中継点へと扉を繋げこのダンジョンを固定化させることになりました。


「な、なにぃ~!」


颯はさっきまでの気分は侍テンションをすっかり下げ、頭を混乱させるのだった。



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