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女神の加護って 最高かよ! でも良いことばかりじゃないんだろ それな。  作者: 橘可憐
異世界にて

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「これはあくまで提案なんだが、俺の家に余ってる部屋がある。良ければ取り敢えず俺の家で寝泊まりしろ。そして自分のできる仕事を無理せずに探すというのはどうだ?」


颯は思わず息を飲んだ。押しつけがましくなく颯の心配をしてくれているギルド長が信じられなかった。

自分がこれほど誰かを気遣ったことなど一度も無い。ましてや颯は夕べ知り合ったばかりの殆ど見ず知らずの他人だ。


今まで颯は他人を気遣うなんて考えたことも無かったし、その必要もないと思って過ごしていた。

しかしこうして逆の立場になってみるとなんとありがたいことか。


地球での颯は何があっても一人で解決してきた。寧ろどうして他人を頼れるのか不思議で仕方なかった。

期待して裏切られるなら期待しない方が楽だし、始めから期待しなければ無くすものも無いと思っていた。

それなのに今颯はギルド長を少なからず頼っているのだと自覚しショックだった。


「どうしてそこまで…」


「俺は弱い者が欺され搾取されるのを見ていられない。この冒険者ギルドはそれを防ぐために作られたモノだ。俺はただ単にギルド長として役目を果たしているだけだからそう構える必要はない」


「でも浮浪者全員に同じことはできませんよね?」


颯は意地の悪い質問だと分かっていながらギルド長に問いただす。

颯の矛盾している行動や自分でも戸惑っているグチャグチャとした気持ちを吐き出すためにギルド長に当たったのだ。

ギルド長なら甘えさせてくれるかも知れないと瞬時に感じ甘えたのかも知れない。


「まぁな。ハヤテの言うとおりだ。だから正直に言うと俺はハヤテのことを気に入った。それだけじゃダメか?」


「……いいえ」


颯は今までずっと誰かに認めて欲しかったのだと気が付いた。

誰かに言って欲しかった言葉、本当に自分が欲しかった言葉をギルド長から貰えた気がして涙が溢れるのを感じていた。


「今ギルド証を作ってくるからそこで大人しく待ってろ」


ギルド長は颯の流す涙を見ない振りをして部屋を出て行くので、颯は気持ちを解放させ溢れるままに涙を流した。


そして漸く涙が止まり気持ちが落ち着いてくると、はてと考える。

ギルド長はギルド証を作ると出て行ったが颯は書類の類いを書いていない。


定番だと必要書類をギルドの受付嬢に代執は必要ですかなんて聞かれながらステータスを誤魔化して書くか水晶に手をかざすとかする。

もしくはスッゴいスキルや魔法適性をギルド受付がうっかり大声でバラし騒ぎになるとか。


なんにしてもギルドカードを作る上で個人情報は必要なはずなのにいったいどうやって作るつもりなのかと考えていると、しばらくしてギルド長が銀の腕輪を持って現れた。


「これがギルド証だ。なくすなよ。サイズが合わなくなったら交換するからいつでも申し出ろ」


「これがギルド証ですか?」


颯はギルド証って大概カードだったりドッグタグのようなものだと考えていたので少しだけ戸惑った。

カードに魔力を流し魔力登録し、最新だとクエストを登録できたり魔物の討伐数が分かるなんてのもあるのになんともまあ、ただ名前が刻まれただけの銀の腕輪だ。


「文字も書けない計算もできないそんな学のない奴らを平気で欺し搾取するヤツらから守る為の物だからなそれで十分だろう」


「えっと、ちなみにクエストの依頼とかはどうするんです?」


「クエスト!? なんだそりゃ。仕事の依頼なら入ってくることもあるがそう多くはないぞ」


颯が知っている冒険者ギルドとはどこかが違うようだと颯は漸く気付く。


ギルド長の説明によると、冒険者が街中でちょっとした雑用を頼まれるのを受けるかどうかは自由らしい。

そもそも誰かに雇われても労働に見合った賃金が払われないことも多く、店で買い物しても代金を誤魔化されることも普通なのでギルドは発覚した時点で間に立ち問題を解決してくれるそうだ。


ギルドがいつでも間に立つと言う目印として腕輪を着けておけば欺す方も面倒に考えるのでトラブルを事前に防げるらしい。


そうして街中でのちょっとした雑用だろうと無理に押しつけられることなく、また搾取されることも無く仕事ができる仕組みを作り弱い者を守っているのだとか。


「それじゃあギルドの収入は? まさか維持費も自腹ってことはないですよね?」


「ハヤテは随分難しいことを知ってるんだな。勿論自腹なんてことは無いぞ。冒険者の多くは魔物や獣を狩っているからな。そのドロップ品や素材をギルドに卸して貰っている。ギルドはそれを商人に売って利益を得ているから冒険者が狩りをしてくれる限りは安泰だ」


冒険者が独自に商人に売りに行くことは無いのかという疑問もあったが、そういうツッコミよりも颯は今が魔石の話をするタイミングでは無いかと思いつく。


「そう言えば腐界で魔物を倒した時に魔石をドロップしたのですが、これを買い取って貰えますか?」


颯はポケットに手を突っ込むと異空間収納から魔石を一つ取り出し握りしめた。


「魔石ってなんだ? 初めて聞くぞ」


「これです」


ズボンのポケットから取り出したフリをしてギルド長に魔石を手渡した。


「なんだこれは」


「僕の国では魔物が落とす魔力の結晶体として知られています。この魔石はエネルギーに変換できるし魔導具も作れるという話ですが僕はあいにくその辺の詳しいことは知らなくて…」


「俺もそんな話聞いたこと無いな。だが興味深い。取り敢えず本部にも確認してみるが何しろ初めての事だから買い取るにしても適正価格の想像もできん。返事はしばらく待ってくれ」


「分かりました」


「それでこれは俺に預けてくれないか? 何しろ現物が無くては話のしようも無いからな」


「勿論ですよ」


ギルド長が案外すんなり話を聞いてくれたことも、そして颯の話を疑うこと無く信じてくれたことも嬉しくて仕方なかった。


「それよりハヤテは見た目以上に戦えるんだな。少し安心した。その小さい体で武器らしい武器も持っていないようだが魔物をどうやって倒したんだ?」


颯はギルド長の鋭い突っ込みに思わずドキッとした。

しかしここはへんに誤魔化し嘘を吐く場面ではないと考え正直に話すことにする。


「僕は魔法が使えるので…」


「魔法を使えるだと!!」


ギルド長の突然の大声に颯は思わずビビって身構えてしまうのだった。



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