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女神の加護って 最高かよ! でも良いことばかりじゃないんだろ それな。  作者: 橘可憐
異世界にて

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颯は目を覚まし見慣れない天井に少し慌て、はっきりしない頭を振り記憶を探る。そして自分がエールのがぶ飲みで酔って倒れたのだと思い出す。


「なぁナビ。俺って状態異常耐性スキル持ってるんだよな? 酒を飲んでも状態異常判定されて酔わないはずなんだが、これってどういう事だ?」


「そうなんですか?」


ナビの暢気な返事に酒が毒判定されず酔いも状態異常と認定されないのか、それともフォルトゥナの認識不足の結果なのか分からないが、少なくとも酒を飲んでも酔わないという勿体ないことは今後も起こらないようだと颯は何処かホッとした。


颯は別段酒が嫌いということは無い。寧ろ無性に飲みたいときだってある。それなのに飲んでも酔えないとなったらこれほど悲しいことはないだろう。


もっとも今は子共の体なのでそこまで飲みたいとは考えてはいないが、この先大人の体になり友人ができたら颯だって一緒に飲んで楽しむくらいのことはしてみたい。

それにあのソーセージはやっぱり果実水では本当の美味しさを味わえないだろう。


「それよりここはどこだろう? あれから俺はどうなったんだ?」


「ここは冒険者ギルドの応接室ですよ。あの後ギルド長は颯様をここに寝かせご自分もお泊まりになったようです」


颯はギルド長にそこまで迷惑を掛けてしまったのかと頭を抱えた。

自分で払うと大見得を切った飲食代も結局ギルド長が出してくれたのだろうし、泊るところを決めていないと知ってたのもあってここへ連れてきて付き合ってくれたのだろう。


「あそこで知り合ったのがギルド長で本当に良かったよ」


颯は声を掛けられた時にちょっとビビったのも忘れ心から感謝した。


「取り敢えず挨拶に行ってお礼くらい言わないとな」


颯がソファーから立ち上がるといきなりドアが勢いよく開かれギルド長が現れた。


「おお、起きてたか。どうだ頭は痛くないか?」


「はい大丈夫です。それより色々とご迷惑を掛けてすみません」


「ガキがそんなこと気にするな。それより腹減ってるだろう。たいした物は用意できなかったが食え」


ギルド長はローテーブルの上に手にしていた荷物を置くとその包みを開いた。


「それは?」


「カミさんが届けてくれたんだ。上手いぞ」


まるで自分が作ったかのようにドヤっているギルド長に颯は苦笑いを浮かべる。


「わざわざ僕のために?」


「いや、俺がここに泊ったからカミさんが気遣って届けてくれたんだ。できた嫁だろう」


「それじゃぁ僕はいただけませんよ、僕は良いですからギルド長が食べてください」


「変な遠慮はするな。俺の分はまた後でカミさんが届けてくれるから大丈夫だ」


「なんだかお手間を掛けさせてしまいすみません。では遠慮なくいただきます」


颯は木製の弁当箱を開き手を合わせる。


「夕べも思ったがその手を合わせるのは宗教か何かか?」


「そのようなものです」


颯は詳しく説明する必要もないだろうと適当に流す。目の前の弁当は愛情が籠もっているだけあってとっても美味そうで、颯は早く食べたい衝動に駆られていたのだ。


鶏肉っぽい肉がテリテリしていて色は薄いが照り焼きのようだし、付け合わせのように隣に並ぶのはじゃがバタのようだ。


この世界にはお箸もフォークも無いらしい。スプーンではちょっと食べづらいと思いながら颯は切り分けられた鶏肉をすくい上げ口に入れる。


颯の想像していた照り焼きチキンとはまったく違った味。ほんのりとした甘さが肉の臭みを消しているのか全体的に淡泊だが軽く食べやすい。

じゃがバタっぽかったのは颯の知るジャガイモより味が薄いがホクホクして塩気も丁度いい。


誰かが作ってくれた弁当など何年ぶりだろうかと、颯はその事に感動し嬉しさが込み上げるのを抑えられず思わず弁当を描き込んでいた。


「な、上手いだろう」


ギルド長は颯の反応をどう捉えたのか知らないがしきりに嬉しそうにニコニコと颯を見詰める。


「ゲホッゴホッ」


「そんなに慌てて食うヤツがあるか。これでも飲んで落ち着け」


ジャガイモが喉に触りむせかえる颯にギルド長は水筒を差し出した。颯はそれを受け取ると栓を開け口の中に流し込む。

普通の水だったことに颯はホッとした。


切羽詰まって思わず手に取ったが、ギルド長が持っていた水筒だからもしかしたら水以外が入っている可能性もあった。

ここは異世界で日本の常識が通じないのだから気をつけようと思っていたのにと颯は少しだけ反省する。


「はぁー。ごちそうさまでした。とても美味しかったです」


「その水筒はハヤテが持っておけ。見たところ何も持ってないようだしな」


「良いのですか?」


「ああ、俺のお古で悪いが水筒は必需品だろう」


颯はギルド長の気遣いにまたまた心が温かくなる。こんなにあからさまに誰かに気遣って貰ったことなど今までに無かったと思う。少なくとも颯が独り立ちしてからはまず無かった。


「ありがとうございます」


颯は涙ぐみそうになるのを懸命に堪えてギルド長にお礼を言った。


「そうだついでにギルド登録もここで済ませてしまおう。お前は良くも悪くも目立つ。今ホールに出て行ったら面倒事が起きそうだ」


「えっ、僕、目立ってますか?」


長くモブ生活をしていた颯には聞き捨てならない言葉だった。


「この街は良いやつばかりじゃ無いからな。絡まれたら面倒だろう。俺も気をつけるがずっとは見てやれないからな。十分用心しろよ」


(目立ってる。目立ってるって…。俺が目立ってるだなんて……)


颯はギルド長の言葉も耳に入らないほどに戸惑う。

しかしまた地球ではずっとモブだった颯が異世界ではその真逆で目立つ存在になっていると知り少し興奮してもいた。


「僕これからどうしたら良いんでしょう」


今まで目立ったことなど一度も経験の無い颯は思わずギルド長に聞いていた。



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