表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/14

1-1金欠カバタとモネの娘(2) ーカバタ:バッドステータス【金欠】▷回復しますか?ー

――そして今、僕はここにいる。

目の前の蓮見さんが、細い指を突きつけて言い放つ。


「お前は、金欠さ!」

軽いのに、反論の余地がないほど真っ直ぐな口調だった。

「……」

言葉に詰まる僕をよそに、彼女は蜂蜜ウインナーコーヒーを楽しんでいる。


あちら側の世界の人間は変わり者が多いと聞くが…。そもそも、この女性は社会人かどうかも怪しい容貌だ。

――本当に大丈夫だろうか。

「あの、バッドステータスって何ですか? 僕、呪われてるんですか? 施術はもっと大人が……」


「一気に聞くもんじゃあ、ないよ。」

蓮見さんは姿勢を正し、前髪を整えてから言った。


「まず、言っておこう。お前が望む限り、私、蓮見紫瑞(はすみ しすい)が請け負う。蓮見家の名において、依頼は必ず遂行する。安心したまえ。」

その一言には妙な威厳があった。


「さて…バッドステータスってのは、呪いによる状態異常さ。」

そう、そこ気になる!僕は身を乗り出した。

「呪いって……神や妖怪の仕業とか?」


「それもあるが、呪いは環境や本人の原因でも発現することがある。“毒”や“麻痺”のように単に身体状態に作用するというより、本人の認知や行動に影響するものを指す類のものさ。」


「…生活環境、ですか?」

「そうさ。奇々怪界な力なんて必要ない。…呪いと言えば大げさだが、軽微なものは皆ある。

歪さを持たない人間なんて居やしない。そんな奴は人外さ、ふふふ。」

コーヒーをひとくち。言葉の余韻が残る。

「ネーミングも曖昧なもんさ。呪いで一括りにするには面倒だから、便宜上適当な名をつけているだけさ。」

……。

「そろそろ、お前の話をしようか。お前は金欠。それで、どうしたい?」

ハッとする。彼女の話に没頭していたせいで、自分の目的がぼやけていた。

「僕を、元に戻してください。」

「ふむ。バッドステータスの解除なら自力でできるが…」

ーえ、自分でできるの?

蓮見さんはタブレットを取り出し、画面を提示する。

「でもまあ、商売だからね。私がやるなら、これくらいだねぇ。」


『ランクC− 八十萬円也』


……目を疑った。

「高いかい?」

またあの楽しげな笑み。こっちは笑えない。

「……無理です。」

支払いの算段を巡らせるが、どう考えても無理。

「これでも、三守(みかみ)の紹介だから特別価格さ。」

「……これで?」

肉まんおすすめの判定家、三守さん。

信じていいのか…?


余裕そうな彼女の顔が一瞬歪む。子供に言い聞かせるように言った。

「いいかい、相手は神だ。他所じゃもっと取るか門前払いさ。嫌ならやめときな。でも、即解決を望むなら――私が適任さ。」

その目線はまるで出口のない深い穴のようだった。


――騙されちゃいけない。

無駄金は使えない。もう失敗はしたくない。

胸が苦しい。焦燥と恐怖が入り混じって、まともに思考が回らない。怖い!仕事を失うのも怖い。転職も、噂されるのも怖い。 でも、このまま金欠でいるのも怖い!!


パンッ!


「っ!!?」

一瞬息が詰まり、心臓が跳ねる。

すぐに状況が理解できず僕は目を白黒させる。

蓮見さんが、突然立ち上がり、僕に猫だましをかましたのだ。

ぽかんとした僕の目と、彼女の目が合った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ