第一話SIDE:A 暁と蝕
注意
この物語は人によっては不快になったりします
ここから先見てみようっていうなら
頼む。最後まで突っ切ってくれブラザー!!
前回、突如して現れた、『死を纏う魔人』を名乗る謎の男、
『ノクス』によって、アルバは故郷も青春も何もかも奪われてしまった。
その後通りかかった騎馬隊『カルダイア隊』によって救出され……
〈1956年3月16日 午後7時頃〉
「ん〜〜〜〜……気絶してかれこれ3日と6時間ちょいだなぁ、目覚めないようなら長くて2年とかになるか?」
グロームが、昏睡状態にあるアルバを、椅子に座りながらずっと観察していた
「そしておれもずっと観察し続けて3日と6時間……一睡もして…ない………」
眠気が限界に達していたグロームは、光の速度よりも早く眠りに落ちてしまった、
その頃アルバは、今にも泣きそうな目を堪えて、震え凍えてながらも、自分の家に帰ろうとする夢を見ていた。
夢の中ではアルバはまだ今より幼く、周りの人々もまだ若く生き生きとしていて、時間はおそらくは夕方。彼に何があったのかはわからないが、家に帰ると早々にアルバは彼のお婆ちゃんに泣きついていた。
とても悲しそうに泣きつくアルバを優しく宥め、頭を撫でながら子守唄を歌っていた老婆のように見えた何かだが、次第にそれは皮膚が焼き爛れて抜け落ちて行き、体も膨れ上がって行き、髪も抜け落ち、爪が割れ始め、徐々に掠れた声になっていった。
アルバが気づく頃にはもう遅く、変わり果てた老婆は『死を纏う魔人』のような姿になっていて、何かに首を掴まれ、笑いながら家の壁へ投げ飛ばされ、あのときノクスにされたように痛ぶられた。
隙を突いて命からがら傷だらけで逃げ出したアルバは、後ろから追いかけてくる魔人のようなものを振り切ることができず、捕まってしまい、右掌を包む蒼白い光によって消されそうになったところで、冷や汗をかきながら目が覚めた。
目覚めて見渡す限り、そこには薄暗い部屋で座ったまま寝ている葡萄色に染めた白衣と、黒を基調とした衣服を着た、無精ヒゲを生やした茶髪の胡散臭い男や、横の机には果物、そして何より最先端と思われる医療機器などが鎮座していた。
すると突然、何者からか声をかけられた
『オイ!ソコノ!貴様ガ起キルマデニコノ俺様ハ幾ラ時間ヲ無駄ニシタト思ウカ!?呼ビ出シテオイテ待タセルッテドウイウ神経シテンダ!』
声がする方向へ視線を合わせてみると、そこには……なんか……
身長0.7mほどの、肉食獣のように長くて尖った耳のような突起の頭巾の付いた、白と金を基調としたローブに身を包み、
獣の耳ような突起が生えていて、凹凸のないボールのように丸い頭、
そしてローブと装飾物以外何も身につけていなく、
腕輪ような物や、首に掛けられた紋章入りのメダルのような金色に輝く装飾物、
爪や毛が一切なく心地よい弾力がある人形のような黒い肌、
男でも女でもないような可愛らしく生意気な声、
そして、猫のような生意気な目つきを持った、
青い目の可愛らしい顔と八重歯を持ったヒューマノイド……
のような見た目の何かが、物言いたげな風貌で佇んでいた。
『アノサァ!?ワザワザ助ケニ応エヨウトシテ78時間モ待タセルトカアリ得ネーゾ!?遅刻常習犯カ貴様!!』
「いや…その前にその喋り方どうにかしない?」
『エ?オ前喋レナインジャナカッタノ?』
「え?」
『喋リ方...カ、タシカニ他ノ人間ヨリハ特殊ダカラナ、オ前ヲモホウスレバイイダロウ』
『ア...ァ...?ァァ...ぁ...あ!!!げほん!!!……まぁそんなことはどうでもいい!!とにかくだな!!テメーこのやろ78時間も待たせやがって!!貴様が活動していないとこの俺様も外で活動できないんだ!!で!?要件は!?』
「要件って言われても……そもそもあなた、誰?」
『そっから説明しなきゃいけないのか…それもそうか』
佇んでいた何かは、アルバの目線と合わせるために、そこらへんにあった椅子を足場がわりにしてそこに立ち、腕を組みながら話し始めた。
『いいか、俺様は貴様のような軟弱で脆い奴を陰ながら応援してやることにして、貴様の記憶から産まれた防衛本能みたいなものだ。』
『…………貴様がどんな下品な記憶を見てたのかは知らん……てか知りたくない。フツーこんな見た目にならないだろ!!おかしいぞこれ!!』
『でまぁとにかくだな、その!呼ばれたって事実は―
「うん、ごめん、さっぱりわからない。もっとわかりやすくしてくれる?」
『あ、そう……』
何気ない言葉に少し落ち込んだが、さっきよりわかりやすく何かが説明し始めた
『いいか?俺様はいわゆる、貴様の心の闇でもあり、別人格でもあり、記憶の集合体だ!もっというならもう1人の貴様だ。でも貴様とは違う。』
「じゃあ……君はもう1人の僕って認識でいいの?」
もう1人のアルバと思わしき何かは、その言葉に少しイラっときた
『は?なんで俺様が貴様のようなヒョロガリのヘナチョコと同じだと思われるわけ?』
「だってもう1人の僕ってことはそうじゃないの?……少なくとも僕はそこまで身長低くないけど。」
『ふ、ふざけやがって!!テメー馬鹿にしやがって!!なんだ!?こんなマスコットみたいな見た目で文句あるか!?』
「文句は言ってないじゃん…」
その何かがアルバに掴み掛かろうとしたとき、彼らの顔の間に、3枚の刃がついたブーメランのようなものが、空を裂きながら通っていった。
「うるさいねぇ〜最近の子供は。元気なのはいいことだが人が寝ている時は静かにしてくれないか?」
飛んだ来たブーメランは、壁に刺さるとブーメランがあった空間にエラーが発生したかのようなモヤがかかり消えていた
「ぅ...あ!!!ぁ...い゛....あ...ろ゛!!!」
(うわ!!!あぶないだろ!!!)
そのとき、ブーメランが飛んできた方向から無精髭を生やした医者のような目つきの悪い男が来た
「ん?喋れないってのは本当だったのかぁ?
にしても...さっきからそこの変なのは呻き声なのに何を言ってるかよく分かるな?」
「ぅぇ...?あ...ぁ...?」
(あれ?なんで?)
『俺様は残念ながらこのヘナチョコに創り出されたからな......』
「へぇ...……噂には聞いていたが...本当にいるもんなんだな...他人に見える想像体ってのは...」
「んあー!ああ!!!!」
(意味わかんねー!なんでお前にしか聞こえないんだよ!)
「騒ぐなクソボウズ...耳障りだ...…とにかく、そっちのちっこい猫みたいなのお前、目に見える以外何が出来る?」
そういうとアルバから産まれた想像体はアルバの頭に飛び乗り無精髭の男を見下しながら言った
『俺様か?俺様相手に猫みたいなのだと!?俺様は貴様ら下等種族と違ってなんでも出来るんだぜ?』
「下等種族と違って...ねぇ」
グロームは机の上に置いてあった果物のウチからぶどうを取り指でその想像体に向かって弾き、
弾かれたぶどうはとてつもない加速で想像体へと向かった!
『ひぇ!!』
想像体はアルバの頭に抱きながら怯えた。
「ぃ…ぃぁ゛っ……ぅ……」
(君...いきがってる割には弱いんだね...)
『いや...別に俺様怖くなんか...』
そう言った想像体の目には大粒の涙が浮かんでいた
そして想像体が避けたぶどうはというと壁に激突し...
「イヤアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」
壁の奥にいた若い男に当たっていたようだ
『「!?」』
想像体とアルバはその威力に恐怖した!
弾かれたブドウの威力に2人がこの無精髭の男、グロームに脅えていた所、に大きな音を立てて若い男が入ってきた。
その若い男はボサボサで短く灰色の髪で、横にサスペンダーを下ろした黄土色のズボンと、袖がなく、腹が出ているタートルネックのインナーを来た男が怒鳴りながら入って来た。
「クソッタレテメー!!!人を殺す気かニコルノフ!!!知っててわざとやりやがったな!??」
「また騒がしいのが増えたか...…おいノクルヌ、患者の様態は今のところはとてもいい、お前が見とけ、俺は疲れた少し寝るよ。」
また寝ようとするグロームにノクルヌという男は容赦なく彼の胸ぐらを掴み、揺さぶりながら叫んだ
「クソッタレが!!あのな!?オレは副隊長の坊ちゃんから『グロームが3日間出てきていないから見てこい。』って言われて来てやったんだぜ!?このヤローいつかやると思ってたが殺す気か!?」
「落ち着けよノクルヌ…あのちんちくりんが下等だなんていうもんだから―
「クソッタレ知らねーそんなの!!それになんだそのクソ見てーな態度は!?クソが!!見に来たのが間違いだったぜ!!オレは一体何年こんなヤツと―
掴まれた腕をそっと振り解き、激怒するノクルヌを横目に自室へと向かうグロームであった。
ノクルヌはグロームに中指を立てて挑発し、とても21歳とは思えないほどに大人気ない姿をさらしたのちに、アルバたちの視線に耐えきれず気まずそうにしたまま後ろを振り返った。
「さて…クソ……あー………やっと起きたか?」
「うぁ...!」
(うん!)
「ん?お前、喋れねぇのかよクソが、手間かけやがって、おいそこの……あー…クソ猫?お前コイツの能力か想像体かのどっちかだろ?レアもんだな、100分の1くらいか?」
『さっきから俺様に向かって下等種族どもが...…なんだ!』
「あ?オマエやられたいか?生まれてから一度も女付き合いがないグロームとやり合ったのかは知らんが、オレはあのクソッタレよりも幾京倍も強ぇぞ?」
『ここはどんだけ化け物の巣窟なんだ.…..ここで本気を出したらこの施設が壊れてしまうからな!戦わないでやる!それでなんだ!』
「なんだよクソッタレが、やんねぇのか、つまんねぇなお前、それでだ、コイツのならお前、通訳できるだろ?」
ノクルヌの放った何気ない単語が、アルバに深刻な問題を引き起こそうとしていた。
「ぁ...ぁ...つぁ...んな...い...?」
少し嫌そうな顔をしながらアルバのイマジナルは通訳をし始めた。
『通訳ぅ?いいが...少しアルバの様子が変だ...この感じ...う...ああああああああぁぁぁ!!!!』
そのとき、アルバのどう想像体の体が蒸気を発し変形を始めた!
まだ幼く見えた想像体の体は徐々に野生み溢れる見た目となってゆき、体はアルバより一回り大きいサイズの虎のような漆黒の姿へと変形しアルバが着る形で合体し始めた
「ケッ!これが想像体の鎧ってヤツか!ジックリ見るのは初めてだぜ…...こいつァもしかしたらレアもんなんて括りに入り切らねぇかもな…...」
驚くノクルヌをよそに身体を無理やり起こしてアルバは叫んだ!
「お前なんかになんで婆ちゃんが!!!」
「……なんだ急に。お前、つまらねぇな。ウチで心に異常なんてきたしてても治療しねーぞ?」
そうノクルヌは頭をボリボリとかきむしりながら言った。
アルバには、その挑発的な単語全てをノクルヌと『死を纏う魔人』を重って見えてしまい、錯乱している。
『おマえなンかに...ムラがコわサれるノは...オか゛し゛い!!!』
虎のごとき姿になったアルバはとてつもない脚力で地面を踏み切り、ノクルヌへと突進した、足があったところには丸く大きな凹みが出来ていた
「うぉっと!速いな...ビチクソが!!おもしろくなってきたな!いいぜ?」
ノクルヌは暴れ回っているアルバの顔に指を刺し、その指先から小粒の光を発射した!
その光は目の前で眩しく、大きく広がり、アルバの動きを一瞬止めた!
次の瞬間、ノクルヌは強烈な蹴りを腹部を突き上げる感じで喰らわせ、アルバは部屋の角へと吹き飛んだ!
「たく、おもしろくなってきたなぁ!!!」
蹴られた衝撃を感じつつも、アルバは倒れた体制を立て直した。
『モう...ミンなにテヲ出すナ!!!!!』
アルバの姿が見えなくなるほどの速度でアルバは跳んだ、アルバは壁を蹴って部屋中を飛び回り加速する
「典型的な方法だな...場数が足りねぇんだよなぁ...…!クソガキ!」
再び突撃してくるアルバへ、ニヤリとしたあとノクルヌは、最初から見切っていたと言わんばかりに、アルバの攻撃を仰け反って回避し、仰け反った姿勢のままで脚でアルバの首を掴み地面へと叩きつけた!
そしてノクルヌは、倒れたアルバの鳩尾を足で踏みつけながら押さえた。
「クソが……生まれながらずっとケンカ育ちのオレとやり合おうってのが100光年速いぜ!」
『おい……貴様...!俺様から離れろ...ヘナチョコはもう落ち着いた.…..』
アルバが落ち着き、主導権を手に入れた想像体はノクルヌに対してまた威圧的になり始める
「クソ猫...お前こいつの事おさえつけられねぇのかよ...そんなンはどうでもいい、そうだ、通訳しろよ、落ち着いたんだろ?」
『貴様鬼畜だな...!』
ノクルヌは足をどけ、椅子にふんぞり返った
アルバは立ち上がるとベッドに腰をかける
「さてと...ガキ、本来は質問をいくつかしないとなんだが、オレは生憎そういうのが苦手だ、他の隊員が来るまでお前を見張らせてもらうぜ」
『ごめん...なさい...』
少し時間が経った頃、ドアが開く
「ヤルスク・タイガンスク虐殺事件、そのたった1人の生存者『アルバ・ルーメンセイル』1945年1月1日生まれ、11歳、身長142cmと体重40kg未満、髪の色は茶髪で目の色は碧、中性的な容姿だが性別は男、あとは……めんどくさいな………」
コーヒーを啜りながらでてきたのはグロームだった、その後ろから現れたのは、
"いかにも"魔女のような服装だが何処か不思議な色気がある妖艶な赤毛の壮年くらいの女性が現れた
「こら!ヤブ医者!報告はきっちり最後までやれとあれほど言ったわよね!なんでこんなことも出来ないのかしら...……全く...」
その台詞に対してグロームは不貞腐れたように吐き捨てる
「サスア...そんなに怒りを顕にしているから皺が増えるんだ」
それに対しサスアは鬼のような形相でグロームに命令する
「あんたねぇ!?……私はまだまだ現役でピチピチなのよ!!早く報告書を書きに行きなさい!!!!」
すかさずノクルヌが火に油を注ぐように言い放った
「でもお前ガキ2人いてまだそんな格好するくらいに破廉恥なクソババァじゃねぇか。泣けるぜ。」
「もう!!!なんなのよあんた達!早く自分の仕事に取り掛かって!ノクルヌは警備!グロームは報告書!早く!」
3人の大人がいがみ合いながらガミガミ言い争っている中、アルバはドンッ!!という音が立つくらいにシーツを殴った
『お前らなんなんだよ!ここにいるのわかってる!?勝手に大人気ない子供3人で話進めないでくれるかなぁ!?だいたい、僕はあなたたちの醜く言い争ってる場面を聞きに来たわけでもないんだ!用がないならさっさと報告したらどうなんですか!』
口を開き言い返そうとするノクルヌを遮るかのようにアルバはまだ続けようとしたのを察して、それを恥ずかしそうに顔を少し赤くしながらサスアは口を開く。
「それもそうね...…とりあえず、報告ね、今回あなたは私達が来た時点で死にかけていた、いや最早死んでいた。
そして村は壊滅、そこで、何があったのか貴方から聞きに来たの、覚えてる限り、いえ、全部思い出して話してもらってもいいかしら?」
アルバは思い出そうとしたのか、顔をしかめる。
『わかりました…』
第2話へとつづく...
【おまけ】
アルバ・ルーメンセイル
生年月日 1945年1月1日
異名 なし
出身 ヴラス国南部地方ヤルスク村
年齢 11歳
身長 142cm
体重 40kg未満
スリーサイズ B75 W65 H78
性別 ♂
髪の色 茶色
肌の色 白
瞳の色 碧
種族 ヒト
能力 なし
好きなもの 猫(特に黒猫)
好きな食べ物 燻製魚
嫌いなもの 不快になること
最も嫌いなもの 『死を纏う魔人』