トレーニングは続く(誰の?)
「お前は怖いんだよ! だからもう婚約破棄する!」
王宮舞踏会の会場で、コットン王子はそう叫んだ。
ざわめく観衆の中で扇を口もとにあて、首を傾げる女性はコットン王子の婚約者リンネルだった。
「ほほほっ、ご冗談を」
そう言う彼女は、心底楽しげに笑った。
リンネル侯爵令嬢は、非の打ち所のない完璧令嬢。時々魔獣退治にも参加し、おおいに国に貢献する女傑でもある。その上、輝く金の髪のこの上なく美しい女性だ。
どこに不満があるのかと、彼女はまた首を傾げる。
「………分からないのか? お前は俺のピーちゃんをいつも苛めるからだ!」
観衆は固唾を飲んで見守る。
その時遠くから小鳥が飛んできた。
「ピーッ、ピッ」
王子を守るように彼の前にちょこんと座る。
「っち。また貴女ですか? もういい加減になさいな」
小鳥に話かけるメルヘン展開だが、両者険悪ムードである。
少女VS小鳥
どうやら小鳥には、亡くなった太后(王子の祖母)が憑依しており、いつもリンネルを邪魔する。
リンネルの魔法スキルは吸収と開放。
そのスキルで魔獣や反逆者を吸収し、ぺらぺらの紙状にする。あくまで一時的で、開放で元に戻る。
勿論燃やしたり破けば、復活不可である。
国王は彼女を自国に留める為、幼い時に王子と婚約させた。
優秀な彼女は、遊んでばかりで勉強しない王子の教育係から協力要請を受け、スキルをちらつかせて勉強させてきた。お陰ですっかり優秀な王子の出来上がりだ。
見目麗しく優秀な王子は、学園でモテモテだった。リンネルより1才年上の彼は、可愛いピンク頭のシルクとの恋に現を抜かす。
そして彼女が入学し、シルクを視界に捉えた。
「王子に近づいてはなりません、このスパイが!」
「ええっ。酷いわ、両思いですのに」
次の瞬間、シルクは王子の喉元に刃を向けた。彼女は他国の間諜で、あわよくば妃に収まろうとしていたが、ばれたことで作戦変更したのだ。
「良い思いしたんだから、本望でしょ?」
「ヒィ、助けて!」
リンネルは魔法を発動させた。
「吸収!」
彼女の魔法は、二人を同時にペラペラに。
それを見た小鳥は彼女をつついたのだ。
「ピー、ピピーッ(なんでコットンまで! このノーコンが!)」
「痛ったいわね、この馬鹿鳥が!」
なんて確執が通常で、ついに公になった今日だ。小鳥は彼を庇う為にやってきたのだ。
「ワハハッ。相変わらず仲が良いな」
「「どこが!! ピーッ(どこが!!)」」
笑いながら登場した国王は、婚約継続を宣言した。
12/11 12時 日間コメディー(短編) 67位でした。ありがとうございます(*^^*)
12/12 1時 日間コメディー(短編) 29位でした。ありがとうございます(*^^*)