83 そう言えば上級神と言われてもおかしくないことをやってたっけ
あけましておめでとうございます。
今年も頑張って書いていくので、引き続きよろしくお願いします。
エルフの長老を追い返したことだし、最後にエルフの子供たちと戯れてから私も帰ろうかなって思ってたのよ。
でも、ミルフィーユにこんなことを言われちゃったんだよね。
「エルフたちの部屋割りをしているパルミエの邪魔をしないであげてください」
エルフだって仲のいい悪いはあるだろうし、その聞き取りをしながら部屋割りを考えている所へ子供たちと遊びたいからと能天気にやってくる上司。
うん。私なら間違いなく殴りたくなるわね。
そんな訳で、今すぐ突撃するのは断念。でも、やっぱりエルフの子供たちにさようならは言いたいもの。
「じゃあパルミエの作業が終わるまで、城でくつろぐとしますか」
「それがいいと思います」
ミルフィーユも私の子供好きは知っているから、特に反対することも無く一緒に城の中へ。
来訪者を出迎えるための部屋に通されてソファに座ると、担当のメイドさんかな? お茶とお菓子を持って来て私の前に置いてくれた。
それに口をつけると、それを確認したミルフィーユから話題を振ってくれる。
「エルフの里はどうでしたか?」
「う~ん、私としてはもっとファンタジー感のあるところかと思っていたんだけど、人が住む町とあまり変わらなかったわね」
エルフなんだからツリーハウスとかに住めばいいのにというと、ミルフィーユは苦笑する。
「外敵に常に狙われると言った事情でもなければ、特殊な建築物は住むのに適しませんから」
「エルフたちもそう言っていたわ」
木の上に橋を渡してそこに家を作る。そんなのはゲームの演出としては正しいだろうけど、住む人のことを何も考えていない造りだもんなぁ。
私だって家に帰るのにわざわざ木に登らないといけないなんて、どう考えてもごめんこうむりたいもん。
「あっ、そうだ。これはミルフィーユに報告しておかないと」
エルフの里で起こったことと言えば、多分これが一番大事だろう。
「エルフって相手の魔力量が解るらしくって、私を見た長老が上級神だなんて言いだしたのよ。おかげでオランシェットたちは私の眷属扱いされてたわ」
私が笑いながらそう愚痴ると、ミルフィーユは呆れた顔をしながらこう言ったの。
「何を今更そんなことをおっしゃっているのですか。下級神どころか邪神さえ倒したことがあるアイリス様が」
「あっ!」
そう言えば長く続いてるウィンザリアでは、今までの追加ディスクのメインシナリオ内で中ボスやラスボスとして出てきた神様と戦ってたっけ。
その中には究極邪神なんて大層な名前のものもいたからなぁ。ゲーム内とはいえ神様を倒しているんだから、上級神扱いされたとしても仕方がない気が。
「実際、街に紛れている神と思われる者たちは、アイリス様よりも弱いですしね」
「えっ!?」
エルフの長老が言っていた人間に交じって生活しているという神様、ミルフィーユはすでに見つけていたみたい。
「本人にコンタクトを取って確認したわけではないのでそれが下級神なのか上級神なのかは解りませんが、発見した者の報告によるとわたくしたちやアイリス様よりも魔力量はかなり少ないそうです」
「へぇ、そうなんだ。でも神様って年を取らないよね? よく人に交じって生活できるなぁ」
いつまでたっても外見が変わらないというのは、はたから見ればどう考えても異様だ。
だからそんな神様たちがよく人に交じって生活できるねと言うと、これまたミルフィーユから呆れた顔をされてしまった。
「人から見れば、エルフやドワーフも同じようなものではないですか」
「ああ、なるほど。この世界には他にも長命種がゴロゴロいたっけ」
曰く、神様は自分たちのことを天空人という種族だと周りに話しているそうな。
「外見上は人と変わりませんが、エルフ並みに長く生きる種族だと説明しているそうですよ」
「人は長生きしても100歳かそこらだもの。1000年くらい生きる種族の外見が変わらないからって、誰も気にしないか」
人に交じって生活する変わり者のエルフがいると長老も話してたし、他に同じような特徴を持つ種族が身近にいたら誰も神様だなんて思わないだろうなぁ。
私がそんなことを考えながらお茶を口に含むと、それでこの話は終わりと判断したのかミルフィーユが新たな話題を振ってくれた。
「そう言えば、前々から頼まれていたビタービートの栽培実験ですが、成功いたしました」
「えっ、もうできたの?」
種から育てると言っていたからもう少しかかるだろうと思っていた私は、この報告にびっくり。
でもミルフィーユはあっけらかんとこう言ったんだ。
「ドライアドに成長促進させましたから」
どうやらこの地で育てた場合どうなるかと条件を指定したうえで、畑にまいた種を成長促進させたそうな。
その結果、問題なく育つことが判明。ただ、本当ならもう少し夏と冬の寒暖差があるところで育てたものの方が砂糖は多く取れるらしい。
まぁ、ここには砂糖自体がないみたいだから多少精製できる量が減ったとしても問題はないかな。
「その他に解ったことですが、露地栽培するのであれば通常、ビタービートは春に植えて霜が降り始める晩秋に収穫するのが適しているようです」
各地に派遣した子たちの報告によると今は秋口らしく、ドライアド曰くこの時期だったから一番大事な糖分を蓄える時期の温度調節を比較的しなくてもよくて楽だったとのこと。
この辺りは夏でも28度くらいまでしか気温が上がらないそうなんだけど、それでも本来なら寒くなるころに収穫するビタービートにとっては糖を蓄えるに暑すぎるみたい。
だからもしその時期だったら成長促進と合わせてとても苦労したのではないかとドライアドから報告を受けたそうな。
「収穫したビタービートから精製した砂糖がございますが、確認されますか?」
「するする。どんなのができたのか、楽しみね」
私がそう返事をすると、ミルフィーユは部屋の隅に控えていたメイドさんに用意しておいたものを持って来てと一言。
すると頭を下げて一度退室した後、そう待たされることなく透明な器を持って帰ってきたんだ。
「こちらが、ビタービートから精製された砂糖です」
「へぇ、日本で言う所のザラメや三温糖みたいな見た目なのね」
ビタービート自体が茶色がかった実だからか、そこから採れた砂糖も少し茶色がかっていた。
「もう少し精製具合をあげれば白くできなくもないのですが、そうするとビタービート自体の風味が損なわれてしまうので」
「ああ、別にこれで何の問題もないよ。というか、そこまでやっちゃうとこの世界の人たちでは作れなくなりそうだし」
と、そう口走ったところで私はあることをひらめいたんだ。
「あっ、そうだ! これをメイヴィスちゃんのうちで作ってもらえばいいんじゃないかな?」
「メイヴィスさんという方に栽培を依頼するのですか?」
「違う違う。メイヴィスちゃんは2歳くらいの小さな女の子。栽培を頼むのはそのお母さんのデリアさんよ」
春に種をまくのなら、まだ数か月あるでしょ。脚気で寝込んでいるデリアさんの体も、そのころまでには体もある程度回復しているんじゃないかな?
病み上がりだときつい作業は無理だろうけど、これは他では作っていない作物だもの。
狭い範囲で作ってもらえばそれほど大変ではないだろうし、砂糖への精製方法を知らなければ不味い野菜だから盗まれる心配もない。
それにできたものは全部私が買い取ればいいのだから、収入も安定するし。よし、そうしよう。
「作ってもらう言い訳は……錬金術で使う作物とでも言っておけばいいかな」
食べられない野菜を作るのには疑問を持つだろうけど、そう言っておけば薬草の一種なんだろうと納得してくれるに違いない。
帰ったら早速メイヴィスちゃんの家に行って、この話を持ち掛けないといけないわね。




