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75 聖遺物は伊達じゃない!

 農機具である鍬と鋤と言っても、そこは聖遺物。その力はとても凄まじいものらしい。


 たとえ草木一本生えないような荒れ野でも、ただの一振りで緑の大地に変えてしまうというとんでもない威力を発揮するそうな。


「ただ、使った者は魔力のほとんどを使い果たして数日寝込むことになるのですが」


 でもそこは聖遺物。振るうのにもそれ相応の対価がいるようで、自然災害でエルフたちの農地が壊滅した時くらいしか使われないらしい。


 因みにだけど、エルフも畑で作物を作るそうな。まぁこれに関してはいろいろなラノベでもそういう場面があったからそれほど驚かなかったけどね。


「どれどれ、性能はっと」


 せっかく目の前にあるのだからと、しらべるコマンドを発動。すると、これがいかにすごい鋤と鍬なのかが解る。


「どんな痩せた土地でも回復させ実り豊かな畑に変えることができる、ねぇ。確かにすごいけど、ちょっとついてる注訳がなぁ」


「なにか解ったのですか?」


 オランシェットがクランチャットで聞いてきたので、こちらもクランチャットで答える。


「これ、使うのにかなりのMPが必要で、使用者がそれだけのMPを保有していない場合はHPを消費して補うみたい」


「それじゃあ使う者によっては、振るうだけで死ぬ可能性があるのですか?」


 顔色を変えて聞いてきたけど、そこは神が下賜した聖遺物だもの。そんな危険なものであるはずがない。


「大丈夫よ。命に危険があるほど能力が低い人が使っても効果発揮されず、HPどころかMPも減らないから」


「なるほど、それなら安心安全ですね」


 危険が無いと解り、ほっとするオランシェット。そんな彼女に、この魔道具についての追加情報も教えておくことにした。


「これなんだけど、ここにいるエルフたちでは正直使うのが大変だと思う。でも私たちなら日常的に使える程度のMP消費量でしかないのよ」


「それでは、もし何か大きな災害があった時は」


「ええ。私かあなたたち7人のうちの誰かが使えば安全に、なおかつ広範囲の農地を回復させることができるでしょうね」


 この鋤と鍬、使うのに必要なMPが800ほどなのよ。


 見た所ここにいるエルフたちは大体600後半のMPを持っているから、豊穣神とやらはこの魔道具を下賜したんじゃないかな?


 因みに私とNPCたちなんだけど、魔法や戦闘スキルにはこれに匹敵する消費量のものもあるから使うのに何の躊躇もいらないのよね。


 だから何かあった時はエルフたちに話をして、これを借り受けようかと思う。自然災害はいつ来るか解らないからね。


「アイリス様」


 と、私がそんなことを考えていると長老に声をかけられた。


 だから何かあったのかしらん? と思ったんだけど、聞いてみた所聖遺物である鋤と鍬の前でいつまでも突っ立っていたから座ってはどうかと席を進めてくれたらしい。


 そりゃそうだ。クランチャットで話していたせいで、彼からは私たちがずっと無言で聖遺物を見ていたと思われているんだから。


 う~ん、失敗失敗。


 ちゃんと反省したところで、すすめられた席について長老とお話。


 とは言っても、実は話し合うようなことはもうすでになかったりするのよね。


 だって私がここに来た原因であるクラフティの暴走はもう収まっているし、暴走した原因だって、


「花畑の近くに建てた館ですか? 神の館をこの地に建てていただけたことは我らにとって最高の誉れですから、何の問題もございませんよ」


 これこの通り、養蜂箱ハウスを花畑の横に建てたことも、私が神認定された時点で不問どころか歓迎されているような状況なのだから。


 ってことで、話題は神様の話へ。


 だって気になるじゃない。過去とはいえ、ここに神様が訪れたことがあるって言うんだから。


 現実の地球ではありえないことが起こるなんて、まさにファンタジー! エルフの集落を見てがっかりした分をここで取り戻さねば。


「ここには800年くらい前に豊穣神が降臨したって言ってたけど、他の地にも神様が降臨したことはあるの?」


「はい。最低でも100年に一度くらいは、どこかしらから降臨されたという話が伝わってきます」


 神様って思った以上に頻繁に降臨している模様。というか、あくまで聞こえてきた話だけでそれなのだから、実際はもっと頻繁に降りてきているみたいね。


「神はいろいろな種族に姿を変えることができますし、われらエルフのように神の魔力を感じ取れる種族はあまりおりません。ですから、周りに知られることなく訪れ、そして去っていく神もいるかと思われます」


 実際、集落を抜け出して人族の街を頻繁に訪れる変わり者のエルフが、普通に人族と暮らしている神様を見かけたことがあるそうな。


 う~ん、神様って思った以上に自由人? 自由神? なんだね。


「一緒に暮らしていても気付かれないなんて、神様って案外存在感が無いんだなぁ」


「それは仕方がありません。魔力を感じ取れないのであれば、力を振るわない限り気付かれることもないでしょうから。それにその力も万能ではなく、我らでは太刀打ちできませんがエンシェントドラゴンが複数でかかれば敗北する時もあるそうですし」


 神様って言うと全知全能って言うイメージがあるけど、ここではそうでもないらしい。


 いくら相手がエンシェントドラゴンと言えど一対一なら圧倒できるそうなんだけど、何匹か纏まってこられたら対応が追い付かずに負けてしまうこともあるそうな。


「あとは、魔王が何とか相手をできるくらいでしょうか。それでも戦神が相手だと、勝つどころかある程度の時間足止めできる程度のようですが」


 ん? 魔王?


「魔王って、あれよね。昔、人の国に攻め入って勇者に倒されたって言う。それなのに、神様とある程度戦えるって言うの?」


「人族のもとに魔王が現れ、倒されたですと? はははっ、そんなことは天地がひっくり返ってもあり得ませんよ」


 神も冗談をおっしゃられるのですねと、大笑いするエルフの長老。


 えっ、えっ? どういうこと? 私って、倒された魔王を復活させるためにこの世界に顕現させられたんだよね?

 読んで頂いてありがとうございます。


挿絵(By みてみん)


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― 新着の感想 ―
雑草取りの聖遺物も欲しい、できてば生えないやつがイイ 横着者です!
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