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69 この世界でもエルフはプライドの塊なのか

 お花畑の近くに置いた養蜂箱用の家に問題発生。どうやらあの場所、エルフのテリトリーだったみたいなのよね。


「それで、何があったの? エルフが文句を言って来たとか?」


「文句と申しましょうか、どうやら襲撃があったようです」


 まさかの事態にあわてる私。


「襲撃!? 大丈夫なの? 怪我人とかは?」


「ご安心ください。たいした相手ではなかったようで、警備兵たちだけで撃退することができたようですから」


 報告によると、どうやら襲撃していたエルフたちは大体20レベル前後程度の強さだった模様。


 だからその場にいた警備兵の子たちもエルフを殺すことなく、軽くあしらって追い返したそうな。


「そうなの? よかった、城の子たちにケガがなくて」


「はい。ですが襲撃してきた者たちがエルフの中でも下級兵士にあたる可能性を考え、念のためクラフティをバトルマイスターにジョブチェンジさせて派遣し、指示を仰ぐためにアイリス様をお呼びした次第です」


 クラフティというのは、私がゲーム時代に作った6人のNPCの一人。赤紫色で肩に少しかかる程度のシャギーウルフカットの髪と赤味のかかった黄色い瞳が特徴的な女の子だ。


 そうか。NPCたちは多分この世界でも最強クラスであろうエンシェントドラゴンでもソロで狩れるみたいだから、その一人を護衛につけたのならお花畑の家の防御は万全だろう。


 それなら今考えないといけないのは、これからエルフたちとどう接するかよね。


「襲撃してきたってことは、もしかしてうちと戦争になるとか?」


「どうでしょう? 今のところ、花畑に設置した館を問題視しているだけのようですし」


 ああ、そうか。別にこの城を攻撃してきたわけじゃないんだから、うちと戦争したいとまでは考えていない可能性の方が高いよね。


 というか、この城の存在自体知らない可能性もあるし。


「花さえあればどこでもはちみつは集められるし、とりあえず養蜂箱が置いてある家を一度撤去して様子を見るのが一番簡単な対処法かなぁ」


「確かにその通りなのですが、それだと我が国がエルフに対して引いたという前例を作ることになってしまいます」


 それを聞いて私は、そんなの別にいいじゃないかって思ったのよ。


 でも、ミルフィーユの様子を見る限り、とても言いだせるような雰囲気じゃなくて……。


「それじゃあ、しばらくは現状維持で様子を見るのが良さそうかな?」


「はい。わたくしもそう思います」


 どうやらこの提案はお気に召したようで、ミルフィーユはゆっくりと頭を下げながら了承してくれた。


 でもなぁ、一度でも襲撃してきた以上は絶対にまた何かしら問題が起こると思うんだけど。


 そんな私の考えを誰かが読んだかのように、問題が扉の外からやってきた。


 コンコンコン


「失礼します。養蜂箱設置拠点から、新たな報告が入りました」


入って来たのは、服装から見て警備兵の子かな? その子に対して、ミルフィーユが小首をかしげながら聞いたのよ。


「いつもは私に直接クランチャットで報告が来るようになっていたはずだけど?」


「はい。アイリス様がお帰りになるとのことでしたので、クラフティ様が兵舎の方に連絡するようにと仰られたそうです」


 なるほど。私が帰ってきたらミルフィーユが相手をするのは簡単に想像できるものね。


 だから直接ではなく、間に警備兵を挟んだって訳か。


「ミルフィーユに連絡がなかった理由は解ったわ。それで何があったの?」


「はい。またエルフの襲撃があったようです」


 これにはちょっとびっくり。だって前回から時間がほとんど開いてないし、何より前回は簡単にあしらわれたんでしょ?


 なら襲撃するにしても普通は少し時間を置いて、何かしら策を講じるものでしょうに。


「あっ、もしかして今回はかなり強いエルフが襲って来たとか?」


「いえ。報告によると、多少は強いものが混じっていたそうですが、それでも我々警備部のものだけで対処できる程度の相手であったようです」


 ああ、一応前回よりも強いエルフは連れて来たのね。ただ、それがこちらより弱かったから同じ結果になってしまったようだけど。


「エルフって、もしかして考え無しなのかしら?」


「というよりも、こちらを見下していて負けるなどと頭の隅にも思わなかったのではないでしょうか」


 なるほど。そう言えばエルフって、多くの物語で他の種族を見下す傾向にあったっけ。


 そうか。この世界のエルフもそうなのか。


 でもまぁ、2回も軽くあしらわれたんじゃ、流石のエルフも多少はおとなしくなるんじゃないかな。


「何にしても、大した被害もなく終わって良かったわ」


「そうですわね」


 私とミルフィーユがそう言って笑い合っていると、警備兵の子が申し訳なさそうに言ってきたのよ。


「いえ。報告はこれで終わりではありません」


「えっ、まだ何かあるの?」


「はい。実は襲撃してきたエルフたちなのですが、どうやら逃げる際に捨て台詞を吐いたようでして」


 プライドだけはやたらと高いエルフ、流石に二度も軽くあしらわれてよほど頭に来たみたいね。


 私たちが使う帰還魔法に似たようなものを使って飛んで逃げたそうなんだけど、その時に負け惜しみのように設置した家を馬鹿にしたらしいのよ。


 曰く、みすぼらしい家をこの森に建てやがってと。


 そう言えば養蜂箱を置いた家って、Sサイズのログハウス型だっけ。


 確かにあまり豪華な家とは言えないけど、みすぼらしいとまでは言えないと思うんだけどなぁ。


 そんなことを考えていたら、隣でミルフィーユが大激怒していた。


「アイリス様から頂いた館に向かって、なんてことを言うのです!」


「いやいや、そこまで怒らんでも」


 そのあまりの勢いに苦笑しながらなだめにかかったんだけど、どうやらそう考えたのはミルフィーユだけではなかったようで。


「そのとんでもない暴挙にクラフティ様も大変お怒りになり、現在飛んで逃げているエルフたちを全力で追跡しているようです」


「なっ! それを早く言いなさい!」


 クラフティーが付いているバトルマイスターというジョブは、魔法が使えない代わりに各種武器の扱いにおいては全上級職の中で最強を誇るのよ。


 そして、その攻撃スキルの中には当然強力な範囲攻撃もある訳で。


「まずいわ。最悪、エルフが絶滅しちゃうかも」


 私たちプレイヤーならともかく、クラフティはMMORPGのNPCだ。敵に容赦するなんて思考は当然持ち合わせていない。


 それだけに早く止めないと大変なことになると思った私は、大慌てでクランチャットを飛ばすのだった。

 読んで頂いてありがとうございます。


挿絵(By みてみん)


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