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60 ぺスパの家には養蜂箱を置いたらダメみたい


「それで、どんなドラゴンが居たの? メジャーなところで言うとレットドラゴンくらいしか思い浮かばないけど」


「いえ。色は白に近い水色とのことですからフロストドラゴン。大きさが頭からしっぽまでで50メートル近くあったそうですからおそらくそのエンシェント種かと」


 古龍エンシェントフロストドラゴンかぁ。ウィンザリアだと80レベルくらいのパーティーならなんとか勝てるくらいのドラゴンだったけど、ここだとどうなんだろう?


 デロワを見て逃げたってことはそれくらいか、もしかするともっと弱いのかも。


 人とドラゴンだと生物としても格が違いすぎるから、50レベル差くらいなら逃げださないかもしれないしね。


「それで、実際に見たデロワはなんて言ってるの?」


「たいした強さではなかったようですし、狩っておけばアイリス様へのいいおみやげになったかなと残念がっておりました」


 ああ、こりゃウィンザリアのエンシェントドラゴンより弱そうね。


 ガレット・デロワはミルフィーユがジョブチェンジさせていなければ確かバトルマイスターのはずだから、空を飛ぶ魔物相手の攻撃手段は投石や指弾くらいだもの。


 それで落とせると判断したのなら、それほど強くないはずだ。


「確かエンシェント種は人の言葉が話せたわよね。デロワには、かわいそうだから次に出会っても見逃してあげなさいって言っておいて」


「解りました」


 ただの魔物なら狩ってもいいけど、人と会話できる相手をおみやげにするくらいの軽い気持ちで狩るのはどうかと思うもの。


 それに後で遺族? と知り合って泣かれたりしたら目も当てられない。それが子供だったりしたら、間違いなく私の心が折れる。


 そんな訳で、ガレット・デロワがちゃんと自重してくれることを祈ろう。


「こちらからお伝えすることは以上ですが、アイリス様からは何かありませんか?」


「私から?」


 なにかあったかな? と少し考えた所で思い出した。


「そう言えば養蜂箱のことを相談しようと思ってたんだ」


「養蜂箱ですか?」


「うん。昨日パスパでバーベキューをしたんだけど、そのきっかけがハニーベアと言う熊だったのよ」


 私はハニーベアが名前の通りとてもはちみつが好きなクマであること、それを私が狩ったからしばらくの間はちみつが取れるようになるとフローラちゃんたちが喜んでいたことを話したのよ。


「凄くうれしそうだったから、それなら自販機で蜂蜜を買って来ようかなぁなんて思ったんだ。でも、この世界のはちみつが私の知っているものとちょっと違ったのよね」


「成分や風味に大きな違いがあったのですか?」


「と言うより見た目。私たちのよく知っている黄金色じゃなくて濃いブラウンだったのよ」


 はちみつって要は花の蜜を集めて固めた物でしょ。だから近くに咲いている花によってその色も変わるの。


 前にはちみつ専門店に行った時はブラウンのはちみつもあったし、中には黒に近いものもあったのよね。


 多分この近くにはブラウンになる蜜がとれる花が多く咲いているんじゃないかな?


「そんな所に黄金色のはちみつを持って行ったらおかしいでしょ。だから養蜂箱を置こうと思ったのよ。木工で作れる庭具のレシピにもあったし。でも、シャルロットに止められてしまって」


 曰く、ハニーベアが来るようになってしまったら大変じゃないですかとのこと。


 そう言えばハニーベアってとても鼻が効くから、かなり遠くにあるハチの巣も見つけ出すって言っていたもの。


 うちの庭に置いてもしハニーベアがそのにおいに誘われて表れでもしたら大変だ。


 退治できればいいけど、逃げられたりしたら人里に出てくるようになるかもしれない。


 森の中と違って畑になっている野菜は一か所に固まっているうえに、人の手が入っているから当然おいしい。


「その味を覚えてしまったらおしまいだもの。だからシャルロットの言う通り養蜂箱を置くのは断念したのよ」


「なるほど。では、その養蜂箱をこの城に設置しようと考えたのですね」


「うん。ダメかな?」


 二つ返事で了承してもらえると思っていたんだけど、ミルフィーユの返事は否定的なものだった。


「なんで? ここなら庭も広いし、一つや二つ養蜂箱を置いてもたいして邪魔にならないと思うんだけど」


「それはそうなのですが、この辺りに養蜂箱を置いてはちみつがとれるかどうかの方が問題なのです」


 この辺りは元々うっそうとして森であり、高い木々に日光を遮られたこの土地では花自体をほとんど見かけないと言われてしまった。


「そうか、花がなければ蜜も採れないものね」


「はい。湖の周りには木が生えていませんが、水かさが増えることがあるらしく草もあまり生えておりませんから」


 そう言えばこの城、湖の水位が上がっても問題が無いようにわざわざ高台を探して建てたんだっけ。


 そんな所じゃ花なんて咲いているはずがない。


「それならさ、近くに花畑がある場所とかないの? あればそこに家を建てて養蜂箱を設置すればいいし」


「なるほど。それならば問題はありませんね」


 さっそく風の精霊で調べた地形を確認すると、大きな花畑が森の奥の方にあることが解った。


 そこで自販機まで行き、Sサイズのログハウス風の家とそこに置く転移ポートを購入。ついでに地下にある木工ユニットを使って養蜂箱を5つ作ると、それも合わせてミルフィーユにトレードした。


「そんなに急ぐわけじゃないから、時間がある時にでもその花畑の近くに人をやって設置してね」


「はい、解りました」


 養蜂箱、ゲームだと五日ほどではちみつが複数採れたけど、ここだとどれくらいかかるのかなぁ?


 ちょっと楽しみ! なんて考えながら、私は足取りも軽く城を後にしたんだ。


 だってこの時はまさか、この養蜂箱ハウスでも問題が起こるだなんて思ってもみなかったから。


 読んで頂いてありがとうございます。


 変なフラグが少しづつ積みあがっていく。


挿絵(By みてみん)


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― 新着の感想 ―
ハチミツって幸せを感じる甘さですよね〜 ハニーナッツとか食べたら頬張って食べてる子どもたちの姿がイメージできるよ
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