47 ファンシーゴーレムを作ろう
「それじゃあ早速、城に帰ってジョブチェンジする?」
ゴーレムを作るのなら精霊召喚士でいる意味はない。
だから城へ一旦帰ろうかって言ったんだけど、それを聞いたシャルロットはなぜか不思議そうな顔をする。
「どうかしたの?」
「えっと……私のジョブチェンジでしたら、この家でもできるのではないですか?」
「はい?」
思わぬ返答に、私はドラマで和製シャーロックホームズと呼ばれているメガネの警部さんのような声を出してしまった。
「できるの?」
「はい、そのはずです」
そう言われたので家の中に入り、ドア横のパネルを操作して調べてみるとほんとにできてびっくり。
そうか。新たなデーターを追加作成するのと違って、NPCのジョブチェンジは装備を変更するようなものだもん。
だから本宅じゃなくても変更できるのね。
「ここでもできるみたいだから、早速ジョブチェンジしましょう」
「はい」
そんな訳で、早速シャルロットのジョブを変更してゴーレムづくり。
「素体は何にする?」
「狩りや拠点防衛用に制作するわけではないですし、外見の変更が容易で安い素材でも製造できるアイアンゴーレムが良いのではないでしょうか」
安価と言うのであれば木材を素材にしたウッドゴーレムや石を素材にしたストーンゴーレムがある。
でもウッドゴーレムの外見は木人だし、ストーンゴーレムは人型の石像なのよね。
どちらも木の魔物の素材や魔力を含んだ特別な石を使えば形は変わるけど、値段が跳ね上がるから今回は対象外。
その点金属系は外見が選べるから、今回はその中でも安価なアイアンゴーレムがいいとシャルロットは言うのよ。
「そうね。この辺りの魔物だったらもし森から出てきてもアイアンゴーレムの敵じゃないし。そうしましょう」
素体にするのはアイアンゴーレムに決定!
「それじゃあ、アイアンインゴットを出すわね」
そう言ってストレージから出そうとしたんだけど、ここでシャルロットからストップがかかる。
「それとは別に宝石類をお願いします」
「宝石を何に使うの? アイアンゴーレムって、アイアンインゴットがあれば作れるよね」
「はい。ですが今回は、庭を飾るオブジェクトに偽装するので」
ああ、なるほど。アイアンゴーレムはそのまま作ると全身が鉄の鈍色だもの。
でも、そんな色の人形を庭に飾るなんてことないでしょ。
だからシャルロッテは宝石を塗料として使って、カラフルなゴーレムを作るみたい。
「どんな色の宝石がいるの?」
「何体か作るつもりなので、全種類出してもらえると助かります」
「解ったわ」
リクエスト通りアイアンインゴットと各種宝石をいくつか取り出してテーブルに並べると、シャルロットはそれを使ってアイアンゴーレムの制作を始めた。
「結構簡単にできるのね」
「はい。戦闘開始時に作ることもあるので」
そんな会話をしながらできあがったゴーレムは高さがだいたい20センチくらい。子猫を丸顔の2.5頭身に擬人化した、カラフルでファンシーなお人形みたいな外見をしていた。
「まぁ! すごくかわいい子ができたわね」
その姿があまりにもかわいかったものだからつい抱きかかえてしまったんだけど、それが想像していたものよりはるかに軽かったからちょっとびっくり。
「えっ? これって、アイアンゴーレムよね。それにしては軽すぎない?」
「これは確かにアイアンゴーレムですが、小型の上に中は空洞になっているので重さは1.5キロほどに抑えられています。ただ、そのせいでアイアンゴーレム本来の性能は出せませんでしたが」
ゴーレムはウッド、ストーン、アイアンと材質が変わるたびに強くなっていくの。
この可愛らしいゴーレムたちはアイアンゴーレムだから、本来は30レベルの前衛職と同等の戦闘力があるはずなのよね。
でもこれは軽くするために装甲を薄くしたせいで、せいぜい20レベル程度の力しか出せないらしい。
「ただキャッスル・オブ・フェアリーガーデン周辺では何の役にも立ちませんが、この街での運用であればこの程度の戦闘力でも問題は無いと思います」
「そうね。それなら、この間蹴り飛ばした銀色の狼と大体同じくらいの性能だもの。それで十分よ」
ここは森に近いけど、周辺の魔素量はかなり低い。
だから森から這い出てくる魔物がいたとしても、最強レベルであの銀狼の取り巻きだった狼レベルの魔物しか出ないんじゃないかな?
そう思いながら、目の前に並ぶファンシーな子猫ゴーレムを眺める。
その程度の魔物ならたとえ数十匹出てきても、このゴーレムが2~3体いれば軽く殲滅してしまうだろうなぁ。
正直言ってぺスパに置くと考えると、この時点でも過剰戦力以外何物でもない。
「それで、これを何体作るつもりなの?」
「そうですね。四方の守りとは別に遊撃固体が必要ですし、作業専用個体も何体か作ることを考えて最低でも8体。できれば15体くらい置けたらと思っています」
一体でもクラリッサさんが護衛に雇っていた冒険者たちが苦戦した銀狼。
それと同等のゴーレムを15体も使ってこの家を守るっていうの? それはさすがにやりすぎよ。
「この家は基本、魔物を寄せ付けないんだから作業専用だけでも守りは十分でしょ」
「ですが」
「シャルロット。あなた、いったい何と戦うつもりなのよ」
それに、いくら庭が広いと言っても流石にファンシーゴーレム15体は置きすぎ。
このまま放っておくと、ここはどこの遊園地のエントランスだ? って雰囲気の庭にされそうだから、私は作業に使う最低限の数に抑えなさいとシャルロットに伝えるのだった。




