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3 よくこの姿を見て驚かなかったわね

 おいおい、流石にそれはちょっとおかしくない?


 確かに異世界転生物は今や定番になっているし、もしそんなことが本当にあったらいいなぁなんて厨二病的な考えを持ったこともあるわよ。


 でもさ、そういうのって普通、召喚によって自分自身に特殊な力が身に付くのがお決まりのパターンでしょ。


 それにもしゲームのキャラで召喚されるにしても、それは近未来のフルダイブ型ゲームのキャラのはずじゃないの?


「私がやってたウィンザリア、フルダイブどころかVRですらないんですけど?」


 なんでPCの画面越しでやっていたゲームのキャラとして召喚されてるのよ、私。


 あまりの異常事態に頭を抱えそうになってたんだけど、周りの連中はそれどころの騒ぎではなかったみたい。


「強力な力を持ったものが、われらの制御の及ばない状態で顕現してしまっただと?」


「どうするのだ! 今回の顕現には通常の200年ではなく、600年以上の時を経てため込まれた魔力をすべて注ぎ込んでいるのだぞ」


「だが、なぜ失敗した? 隷属の魔法は確かに発動していたはずだ」


 なるほど、この人たちがやった異世界召喚ってラノベでよく見かける設定同様、長い間魔力を貯めないと使えないタイプみたいね。


 そのせいで召喚した私に隷属の魔法が効かなかったのが、彼らにはものすごくショックだったようだ。


「あっ、でも何で私には隷属の魔法が効かなかったんだろう?」


 これだけの人数で召喚してるくらいだから、その隷属の魔法ってのもかなりの威力があったはずよね?


 それに疑問がわいた私は、ついいつものゲームのつもりでステータスを、


「わっ、何か出た」


 開こうと思った瞬間に、目の前にいつも使っているPCのモニターくらいの画面が。


「名前がアイリスってことはやっぱりこの体、ゲームキャラクターのものなのか」


 映し出されていたのはゲームで見慣れたステータス画面。


 そこには現在の装備を身につけたキャラクターの画像と共に、名前と現在ついている職業である賢者の文字、そしてそのレベルと各ステータスが並んでいたのよ。


「でもこの人たち、この見た目のキャラが召喚されてよく驚かなかったわね」


 リアルの私は身長178センチでモデル体型、顔はつり目のいわゆる美人タイプってやつなの。


 人によってはその容姿を羨ましいと思うかもしれない。


 でもそれが、かわいいもの好きな私にとっては最大のコンプレックスだったりする。


 だからゲームの中だけでもと思い、身長は選べる最小サイズである140センチにして顔も日曜の朝やっている女子向けヒーローアニメのようなかわいい顔にしてたのよね。


 もし子供キャラが選べたらそっちにしたんだけど、すべてのプレイヤーが14歳の誕生日から始まるというゲームの設定上仕方なくこれで我慢したんだ。


 それにしても……。


「こんな小柄な女の子を見て、本当に街を滅ぼすほどの力を持っていると思ってるの?」


 召喚した時点で、その力は折り紙付きってこと?


 それともよくある、魔力が見えるってやつなのかな?


 そんなことを考えながら、私は再度ステータス画面に目を落とす。


 ジョブが賢者なのは、寝落ちしていたときについていたジョブが賢者だったからかな?


 レベルもゲームの時のままだし、今着てる装備もそうだからこの予想は多分あってると思う。


 そしてその各種ステータスを眺めていき、一番の下にあるログが表示される場所まで来たところで私はそこにある一言が表示されているのを発見したんだ。


 隷属の呪いをレジストしました。


「なるほど。そりゃ、呪いだったら弾くわよねぇ。アイリスの装備なら」


 でもその一文のおかげで、さっきまでの疑問はすっきり解決。


 だって見た目通りゲームの装備をしたアイリスとして召喚されたのなら、呪いが効くはずないもの。



 私がやっていたMMORPG『ウィンザリア』には、他のファンタジー系ネットゲーム同様各種状態異常が存在する。


 その内で特に厄介なのが、かかると全く動けなくなる麻痺と睡眠、それに呪いと石化なんだよね。


 でも石化は使ってくるのがごく少数のボスキャラだけだし、睡眠はどのキャラでも使えるたたき起こすというコマンドで簡単に状態解除ができる。


 そこで残る厄介な状態異常は麻痺と呪いなんだけど、特に呪いの方は夜になると現れるアンデット系の魔物のほとんどが使ってくるんだ。


 だからボス戦で変えた装備をつけっぱなしにするなんて凡ミスをしない限り、ほとんどのプレイヤーはアクセサリーなどによって抵抗率を100パーセントにしてるのよね。


 待てよ? ってことはもし私以外が召喚されていたとしても、ウィンザリアのキャラを召喚していたら必ず失敗してたってことか。


 それが分かった瞬間、目の前の白フードたちについ憐みの心が。


「あの様子からすると、かなり苦労して準備をしたんだろうになぁ」


 それはまるで長い時間をかけて構築したプログラムを保存する前に落雷による停電が起き、その信じられない状況から来るショックと、どこにもぶつけようが無い怒りと悲しみから呆然としてしまった過去の私。


 そう、理不尽としか言えない状況に陥ったその時の姿と重なって、私は心の中でさめざめと涙を流したんだ。


 月曜日は転生0の更新があるのでお休みして、次回更新は火曜の12時なります。

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