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19 転移ポートと見張りの塔

 外出時に持って行くものといってもそこは元冒険者(ゲーム内限定)、必要と思われるものはほとんどストレージに入ってるのよ。


 ということで普段は持ち歩いていないものを準備することに。


 その中で、まず私が思いついたのが家。


「野宿なんて、絶対したくないものね」


 ウィンザリアの家ユニットは、木があろうが岩があろうが関係なく建つのはこの城で実験済み。


 ということで自販機で購入することにしたんだけど、持って行く家のサイズでちょっと悩むことに。


「普通に考えたらSサイズよね」


 テント替わりなら別に大きなものを持って行く必要はない。


 だからSサイズが妥当なんだろうけど。


「もし、どこかに拠点を置こうと思ったら手狭になるかもしれないのよねぇ」


 Sサイズといっても、別にプレハブくらい小さいってことは無いのよ。


 自販機で買えるもので一番高価なものは建屋だけで100平方メートルちょっと、大体30坪くらいあるの。


 街で言うとちょっと大きめな一軒家くらいかな?


 でも少し地方に行くとこれより大きな家はざらにある訳で。


「この世界の家屋の大きさが解らないからなぁ」


 というわけでとりあえず建屋がこの広さで、同じ面積の地下が付いているSサイズを一軒購入。


 そして、同じ条件で比較的小さめなMサイズの家を買って持って行くことにした。


 この二つを持って行けば、ある程度の条件なら満たせそうだからね。


 ただ、Mサイズだと小さいものでも建屋だけで400平方メートルくらいあるけど。



 家はこれでいいだろうということで、次に持って行くものの準備。


 というか、これはこの城にも設置しなくてはいけないものなんだけどね。


 それは何かというと、転移ポートというものだったりする。


 これは文字通り転移をするための物で、ウィンザリアの頃は各街の入口や主要な施設の前なんかに大型のものが設置されていたんだ。


 そしてその転移ポートに登録すると、以降は専用アイテムを使ってその街にいつでも飛ぶことができたの。


 でも私が言っているのは個人で所有できるもの。


 これはユーザーからの要望で実装されたものなんだけど、店売りで買える小型の転移ポートを設置すると同期したほかの転移ポートに飛ぶことができたんだ。


 それは自分の家が建っている住宅エリアやクランエリアはもちろん、他の町の住宅エリアやクランエリアにあるフレンドの家に設置した転移ポートでも許可を得て同期できれば飛べてしまうという優れものだったのよ。


「これを玄関に設置しておけば、私が訪れた街に家を建てた時に相互で飛べるようになるのよね」


 これがただ城に帰るだけなら帰還アイテムがあるから問題ない。


 でも城から元いた街に行こうと思ったら、またフライングボードで長旅をしなければいけなくなってしまうもの。


 だからこれは絶対に設置しないといけないのよね。


「不測の事態も考えて、とりあえず複数買っておいてっと。あっ、そうだ! この城、やたらと広いからいくつか設置しておいた方がいいかも」


 この城って平面でだけ見てもやたら広いけど、高さだってかなりあるもの。


 その上地下まであるから上下の移動がかなり大変なのよ。


 その最たるものが見張り台。


 三階のベランダから塔に入って螺旋階段を更に30メートル近く登らなくてはいけないから、現実になってからは流石に私もまだ行ったことが無いのよね。


「いい機会だし、塔に登って転移ポートを設置してくるかな」


 私はさらに自販機から転移ポートをいくつか購入し、一階は玄関と階段横、そして二階三階の階段横に設置するとそのまま大きなベランダへ。


「改めて目にすると、ほんと高いわね」


 本当の私だったら、エレベーターでもない限り絶対に登りたくない高さ。


 そんな塔の中に入って、らせん階段をひたすら登っていく。


 でもこれが、まったく大変じゃなかったのよ。


 手すりがあるから少し楽というのもあるけど、何よりこのアイリスの体の性能がすごい。


「レベル100オーバーは伊達じゃない!」


 思わずそんなことを叫んでしまうほど、あっさりと頂上の部屋に到着。


 とりあえず部屋の中央に目的の転移ポートを設置する。


「さてと、外の景色はどんなものなのかしらん」


 誰もいないからなのか、四方の扉は閉じられたまま。


 でもカギはかかってないからあっさりと開き、私は物見用のベランダに出てみたんだ。


「わぁ、すごい!」


 この場所の高さは確か60メートルちょっとだったかな?


 でも城が小高い場所に建っているのと周りにそれより高い木や建物がないおかげで、凄く遠くまで見渡すことができたのよ。


 私はベランダの手すりに寄りかかりながら、しばしその絶景に見惚れる。


「下で見ても大きいと思ってたけど、この湖ってホント大きいのね。琵琶湖とまではいわないけど、浜名湖の倍以上あるんじゃないかしら」


 中部圏民ならおなじみの湖を思い浮かべながら、その広さに圧倒される私。


 色が濃い青ってことは、深さもかなりありそう。異世界の湖だし、水龍とかが住んでたりして。


 そんなことを考えながらしばし湖に見入っていたけど、その目を森や山脈に移す。


「見渡す限り、山と森ばかりね。これほど高い位置からなら、近くの街とかが見えるかも? なんて期待したんだけど」


 この塔よりはるかに高い山脈の向こうは仕方が無いとしても、この高さなら遠くに街とか見えないかなぁとちょっと期待していたのよ。


 でも、目に映るのはるか先まで続く樹海のみ。


「フードのお爺ちゃんたちに呼び出されたんじゃなかったら、この世界には私たちしかいないんじゃないかと勘違いしそうな景色ね」


 でもまぁ、ここから見えないからといって本当に無いとは限らない。


 城の周りの木だって15メートルくらいあるし、それより低い建物しかない村だったら見えなくてもおかしくはないだろう。


「それに、丘や谷だってあるだろうしね」


 お爺ちゃんたちも、何とかって言う都市を壊滅させろって言ってたもの。


 この世界にも人はいるし、町や村だって当然ある。


「どんな景色が広がっているんだろう。楽しみだなぁ」


 どこまでも広がる森を見つめながら、まだ見ぬ世界にワクワクがとまらない私だった。


 読んで頂いてありがとうございます。


挿絵(By みてみん)


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