1 お酒を呑んでゲームをするのはやめましょう
週一更新ですが、初回なのでプロローグと第1話を同時更新します。
UP時、次回は来週水曜日と書きましたが更新予定を変更し、土日に2話と3話、火水に4話と5話をUPします。
以降は当初の予定通り毎週水曜日の12時更新になります。
「はぁ、やっと修羅場が終わったよ」
疲れ果てて何とかマンションの部屋にたどり着いた私、本郷美晴は、部屋の電気をつけながら独りごちる。
「普段はそれほどでもないけど、繫盛期は地獄よね」
うちの上司ったら、残業代はきちんと払うから帰る事はゆるさんぞって、まったくホワイトなのかブラックなのか。
でもまぁ、その地獄も今日で終わり。
10日ほどの地獄期間を越えたし、明日は休みだからお酒を飲みながらネトゲでもするべ。
そう思いながら冷蔵庫を開けてビールを取り出し、PCの前へ。
「しかし、ホント疲れたなぁ。でもまぁ、職業関係の日課だけでもやっておくかな、お金欲しいし」
そう言ってPCを立ち上げ、MMORPG「ウィンザリア」を立ち上げる。
ひと昔のネットゲームはキャラクターを成長させるのがかなり大変だったという話だけど、今の流行は楽に成長させてエンドコンテンツで楽しんでもらおうという作りになっているらしい。
そしてこの「ウィンザリア」も例にもれず、キャラのレベル上げやお金の稼ぎ方がとにかく楽になっているのよねぇ。
さっき言った日課と言うのもその一つで、例えば戦闘系の日課だとログインするといくつかの雑魚狩りクエストが表示され、それを消化するとジョブ経験値やお金、それに名声値がもらえると言った感じになっている。
それで、今日私がやってしまおうと思っているのは職業系の日課、各種生産ギルドを周って、そこで募集されている生産品を納品する事で各職業経験値とお金を稼ぐというものなんだ。
これ、各ギルドへの移動は転移石と言うアイテムを使えば一瞬で移動できるし、納品するものも出来上がるものは最低品質や中品質のものばかりだけどボタン一つで作ることができる自動作成を使えば一瞬で終わってしまうのよね。
ってことで、今日みたいに仕事で疲れてるから短時間でパパッと済ませてログアウトしようと考えているような時にはとても楽にできる日課なんだ。
「ふぅ。自動作成を使っても、これだけ回ると流石に時間がかかるわね」
ただ、いくらすぐに終わる納品日課と言っても、流石に数をこなすと結構な時間は立ってしまう。
鍛冶、皮革、裁縫、木工、錬金術、魔道具、料理と各種ギルドを周り、すべての納品を終わったところで気が抜けてしまったのか、それともすでに2本目に突入しているビールのせいなのか、私はそこで急な睡魔に襲われたのよ。
でも雑魚狩り日課と違い、今は納品日課のために各種ギルドを周っていたのだから、たとえこの場にキャラを放置したところで安全な街の中では魔物に襲われて死ぬなんて事は無い。
安全な場所と飲酒、そんな条件が重なってしまったからなのか、不覚にも私はログインしたまま寝落ちしてしまったのよね。
まさかそれが、あんな訳の分からないことに巻き込まれるきっかけなんて思ってもいなかったから。
第1話と言っておきながら、プロローグのような始まりで申し訳ない。