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10 これで勝ったも同然!

「ミルフィーユさんや、ちょっと聞いていいかな?」


「はい、なんでしょう?」


「その後ろの人たちって、なに?」


 解らないなら知っていそうな人に聞くのが一番!


 ってことでミルフィーユに後ろの人たちは誰なの? って聞いたんだけど、


「見ての通り、使用人たちですが?」


 とあっさり返されてしまった。


「それは確かに見れば解るんだけど、ここってあなたたち以外にも人がいたの?」


「この広さの家を、わたくしたち6人だけで管理できると思いますか?」


 ミルフィーユが言うには私が設置した6人のNPCはあくまでフロアマスターという立場で、それとは別にハウスキーパーなどの働きをするNPCがいるそうな。


 なるほど、たった6人でこの広い家を全部管理しろという方が無理だろうから、ある意味当たり前なのかもしれないけど……でも、ゲーム時代では一度も目にしたこと無かったよね。


 それを指摘すると、ミルフィーユは額に手を当てながら、あきれ顔で首を振る。


「どこの世界に、主人がいる部屋の中を掃除するメイドがいるのですか」


「なるほど」


 話からするとゲームの設定上ではどうやら私の相手を設置した6人のNPCたちが担当し、他のメイドや使用人たちは別の見えないところを担当していたみたいね。


 じゃあ、なんで今は見えるところに?


 そう思って聞いたところ、新たな場所に家が移動したと思ったらいきなりNPCたちが全員呼び出されたから使用人たちも一緒に出て来たそうな。


「でも、これだけの人が働いていたとは驚きね。よく出くわさなかったものだわ」


「今までは帰ってもすぐにベッドにもぐりこむか、地下の作業場で作業するだけでほとんどこの家の中に居ませんでしたよね? 長く居たら、流石にどこかしらで出会うことになっていたと思いますよ」


「ああ、確かにそうかも」


 ゲームで家を持てるといっても、それは余剰分の物を置いたり、回復するために寝に来る場所と言うだけで別にそこで暮らすという訳じゃない。


 だからミルフィーユの言う通り、ゲームの中で私はこの家に長時間いたことなど一度も無かったんだ。


 ただ、家に長時間いたとしても設定上だけの存在だったこの使用人たちに私が出会うことは無かっただろうけどね。


「とりあえずこれだけの人がここで働いているのは解ったけど、日ごろの生活はどこでしてるの? この城の中?」


「いえ、クランエリアでは家の横に使用人たちが暮らしていた家があって、そこで生活をしていました」


「そうなの?」


 これはちょっとびっくり。


 でもそうよね、ここは私の家なんだからそこにある全部の部屋は私に使う権利がある。


 だから使用人がそこを占拠するなんてできるはずがないのだから、別の棟があってそこで生活をしていたという設定であった方がうなずける話だ。


「あれ? でもここに引っ越したのだから、使用人用の家が無くなったってことよね?」


「はい。ですからトレードボックスを使って、使用人用の家を購入していただきたいのです」


「トレードボックス……って、ここでも自販機が使えるの!?」


 この世界に来ていろいろ驚かされて来たけど、このミルフィーユの言葉は今まででも一番の驚きだった。


 なぜならこのトレードボックス、通称自販機は他のどんなスキルや設備よりも役に立つものだったから。



 クラン専用エリアは買うのに多額のお金がいる分、普通の住宅地には無い、そこでしか買えない家や家具とかが売られていたんだ。


 その中の一つにトレードボックスっていうものがあったんだけど、これがまたすごく便利だったんだよね。


 なにせゲーム内で店売りしているものは、全部これから買うことができるのだから。

 

 この自販機が実装されるまでは、鍛冶や裁縫などの生産活動をしようと思うと、必要なものが売っているお店を何軒か回ってその素材を手に入れないといけなかったんだよね。


 ところがこれを家に配置するだけでその手間がなくなったものだから、発表された時は生産系の金策をしていた私たちみたいなプレイヤーは、それこそ狂喜乱舞したものよ。


 そしてその自販機が、私の目の前にある訳で……。


「ほんとに使えるの?」


 とりあえず自販機に手を置いて起動。


 するとゲーム時代と全く同じ画面が、宙に浮いたタッチパネルの上に映し出されたのよ。


 そこには種類別の項目が出ていて、その中の一つを選択すると選んだ種類の品物の名があいうえお順でずらりと並んだ。


「うぉ! ホントに使えた! これで勝てる!」


 何に勝てるのかは知らないが、とりあえずこれで生活に困る心配はなくなったのよね。


 だってついさっきまでは使えないと思っていたゲーム時代のお金が、これさえあれば使えるってことだもの。


 それにこの自販機、正式名称にトレードとついている通り、いらないものを売ることもできるのよね。


 実際にやってみないと確かなことは言えないけど、この世界にいる動物や魔物を狩ってこの自販機に放り込めばそれなりのお金になるはず。


 ゲーム内通貨を入手する手段がなくなっている現状、この買取機能はとても助かるわ。


「まぁ、とりあえず数年はそんなことをしなくても大丈夫くらいのたくわえはあるけどね」


 ゲーム時代は毎日職業ギルドの納品を頑張っていたおかげで所持金はかなりあったから、無駄遣いをしてもすぐに使い切るなんてことは無いはず。


 ならばこれで私の生活はもう安泰だね。


 次回更新は来週の水曜日になります。

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